そういや栽培イネの歴史にアフリカが抜けてることが多いよな、って気が付いた

アジアでよく食べられている米(作物としてはイネ)の歴史で、作物イネの単一起源説と多起源説というのがあった。
イネは一か所で栽培化されたのか、それとも複数の場所でばらばらに栽培化されたのか、という話で、「最近の研究で単一起源と判った」という記載がされているところがあって、「??」となってしまった。

多分だけど、このへんの研究を見て勘違いしてしまったんじゃなかと思うんだが…

イネの栽培化の起源がゲノムの全域における変異比較解析により判明した
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6056

これは、アジアイネのうち現在メジャーな種類の起源が単一と言う話に過ぎない。インディカ米とジャポニカ米の起源は一つだよ、と言ってるだけだからだ。実は、アジアの稲作の本ではあまり出てこないが、アフリカでも独自に在来種のイネを栽培化している。アフリカイネというやつだ。こちらはニジェール川沿いの地域で、川が氾濫するシーズンに水稲を栽培していたもので、アジアの稲作とは無関係に発達している。あまり研究が進んでいないのと、水田のような目立つ遺構が出てこないので情報も少ないのだが、四千年前には栽培化されていたはずだという。

だから、栽培イネの起源は、現時点で少なくとも二カ所は存在する。

ただしアフリカの伝統的な水稲は、最近では育てやすいジャポニカ米などアジアイネに変わりつつあるという。現代のアフリカで主流となっているのはアジアイネだ。今アフリカに行ってもアフリカイネにはなかなかお目に掛かれないと思うのだ。

なお、栽培イネの起源地としてもしもう一か所を想定するならば、インド西部が候補地になると思う。
インダス文明地域でも古くからコメを食べていた痕跡が出ていて、アジアから伝わったとするにはちょっと年代や伝播経路が読めないからだ。もしかしたら現代に残っていないか、調査が難しいかもしれないが、インドでも過去に独自に稲作を試みていた可能性はありそうな気がしている。

…というわけなので、イネの歴史を語る時はぜひ、アジアだけじゃなく、西アフリカを忘れないでもらいたい。
なお、アジアで栽培されているヤムいもも、実はアフリカに独自に栽培化された種がある。

アフリカの「肥沃な三日月地帯」、ヤムいもの起源を求めて
https://55096962.at.webry.info/201906/article_2.html

西アフリカには、古くからコメ、イモ、ミレットといった穀物を独自に栽培化していた農耕文明があった。おそらくここは、ニジェール川という大河を中心とした大河文化圏の一つとして数えていいと思うのだ。


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参考

African rice (Oryza glaberrima): History and future potential
https://www.pnas.org/content/99/25/16360

ニジェール川の位置
Map_of_River_Niger.svg.png

栽培風景
African_rice_niger.png