古代エジプト・古王国時代の壁画の鳥、絶滅種かもしれないという説が出される

まず前段として、以下の5年前の話を思い出してもらいたい。

メイドゥムのガチョウ(雁)は贋作? 巻き起こった議論の行方は
https://55096962.at.webry.info/201508/article_19.html

古王国時代の墓の壁画に描かれた「メイドゥム・グース」として有名なカモの絵について、現在のエジプトには棲息しない種であるため、近代の贋作では無いかと言い出した人がいたのだ。
ただ、この種はアナトリアには棲息しており、クレタ島あたりにも類似する種が過去に生きていた可能性がある。それならエジプト人が知っていてもおかしくないのでは? と思っていたのだが、今回の説では、「この種は現在生きている種ではなく、既に絶滅した近縁種ではないか」となっている。古王国時代末の気候変動で絶滅した可能性が示唆されているのだ。

Ancient art reveals extinct goose
https://www.uq.edu.au/news/article/2021/02/ancient-art-reveals-extinct-goose

cap.PNG

壁画に描かれた鳥の姿を、現代にいるアオガン(Branta ruficollis)と比較したものがこれ。
胸の辺りの赤い模様の大きさが明らかに違うし、顔の部分の模様も全然違う。なるほど…

Science geese 2 LoRes_Romilio cropp.jpg

動物園やwikipediaの画像を検索してみても、確かにビミョウに模様が違っている。
このカモの絵は類似するものが古王国時代の他の墓にも見られるため、もし絶滅した種だったとすれば、古王国時代末までは生きていたはずだ。その後の壁画に見られないことが確認できれば、絶滅の時代は特定できるかもしれない。

aka2.jpg

ただ、現時点ではあくまで壁画からの推測に留まっているため、証拠がないと定説化出来ないと思う。古代エジプト人が動物の絵をかなりリアルに描いていたのは事実だが、模様まで正確に描いているかどうかは証明が難しいからだ。個人的にはアリだなと思うけれど、これで確定とは言い難い。


気になるのは、最近見かけた、イギリスの「絶滅したカミキリムシ」の話。
今から4000年ほど前、ブリテン島には暖かいところにしか住まないカミキリムシが生きていた、という発見だ。

ロンドンの自然史博物館に保存されていた「謎のカミキリムシ」、古代に絶滅した種と判明する
https://55096962.at.webry.info/202102/article_2.html

時代的には、問題のカモの絵と数百年の違いになる。この時代のイギリスが現在より暖かかく、その後の気候変動によっていくつかの生物が消えてしまったのだとしたら、同じことはエジプトのあたりでも起きていたかもしれない。(というか気候変動は地球規模で起きるものなので、日本などほかの地域でも絶滅種がいた可能性は考慮しなければならない)

周辺の気候情報が手に入るのであれば、それと絡めて論じれば、このカモが現在は消えてしまった理由をそれなりの説得力をもって論じられるのかもしれない。