中国から見つかった「12万年前の現生人類の骨」、物言いがつき1万6千年前に年代修正される

中国で想定より古い人骨が見つかり、「アフリカを出た人類はヨーロッパより先にアジアに到達していたのでは」とか「定説を覆すのでは」とか言われていた件、やっぱり年代訂正入ったね。とにかく成果至上主義、手法さえ間違っていなければ妥当かどうか抜きにして人目につく論文が出せればOKな中国さんでは、こういうのよくあるので、いきなり定説のほうを書き換えようとするよりは、まずは眉に唾つけて検証しなおす気持ちで構えといたほうがいい。

Retesting of ancient teeth found in China shows they are 16,000 years old—not 120,000
https://phys.org/news/2021-02-retesting-ancient-teeth-china-years.html

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見つかった場所については地図にあるとおり。
この記事では「多くの学者は現生人類は6万5千年~4万5千年前にユーラシア大陸に拡散したと信じている」となっているが、もうちょっと古い12万年間くらい前にはアラビア半島あたりまで遠征していたはずという説もあったりする。

ただし、遡れてもそこまでだ。

見つかった骨はミトコンドリアDNAの分析から現生人類であることが判っていたのだが、アフリカを出たか出てないか、くらいの時期に、いきなり大陸の東の果てに現生人類が出現したとすれば、どうやってそこまで辿り着いたのかが分からない。というか、定説というのは今までの数多くの証拠から作られているものなので、たった一例の突出して数値の外れた結果が出て来たら、まずその突出してる例を疑う方が妥当だろう。

というわけで今回の再度の分析になったわけだが、…うんまあ。
12万年前という古い数値は歯そのものの分析ではなく、近くから出て来た砂や石の分析結果から得ていたようで、そもそも手法に問題があったのだと思う。これはポカミスというよりは、故意に年代をより古い方に盛ろうとしてたんじゃないかと個人的に思う。普通こんな偏ったサンプルの取り方はしないと思うので。中国の出土品でやたら古い年代が出て来た時は、とりあえず疑ったほうがいい、というのはこういうところ。



あと、これは意識しておきたいところなのだが、論文は、出た時点では正解かどうかわからない。
手法が正しくて体裁が整っていれば、論文としては受理されるからだ。それらを検証して同業の学者が議論するために論文を出す。分析対象が妥当かどうかや、出てきたデータを総合していの判断が正しいかは、論文が出たあとに説として揉まれてはじめて判る。

よって、検証によって誤りが訂正されるのは科学的なプロセスとして正しいし、分析の手法さえあっていれば、既存説に合わない内容で発表することは間違っていない。ただ、あまりにもブレが大きいとか、既存説からかけ離れた説が出ているのに話題性優先で論文出してしまうのは、事前の検証が足りないか、話題性重視で研究者自身が数値にバイアスをかけてしまっているのでは、と思われる。

考古学も分析の面では統計学に近いので、「たまたま」出て来た突出した値を拾えば、何か珍しい発見のように装うことは可能なのだ。
これは日本のマスコミもよく使う手法で、東日本大震災のあと「どこそこから基準値以上の放射能が!」とか、築地から豊洲市場に移転する時に「豊洲から基準値以上のベンゼンが発見!」とかやっていたアレである。他の99%の場所で問題なくても、一か所、たまたまその回におかしな数値が出さえすれば記事にする。マスコミはそんなもんでいいかもしれないが、学者がそれやって論文書くのはちょっとね。


というわけなので、このブログでは何度も言ってる話だけど、「定説を覆す!」みたいな大々的な報道が流れた時は、まずはその報道自体を疑って欲しい。
定説とは、そう簡単に覆らない、その時点の最も無難な内容のことであり、それを覆すためには前段として、長年の研究やいくつもの証拠の積み重ね、専門家同士の意見交換と合意を必要とするものなのだから。