イネの「分けつ」という言葉 ~分"げつ"と分"けつ"のどちらが正しいのか、という話。

分けつ、とは、イネ科の植物が横に横に葉っぱを増やしていくことを指す。
農水省のページでも「分けつ」と「分げつ」を使ってるところがあって、どっちが正しいんだ論争みたいなのがあるらしいことに気づいたんだけど、結論から言うと

 元の漢字の読み方は分「げつ」
 だけど今の農家の人は実際には分「けつ」と言っている

元の漢字は「分蘖」と書くが、そもそもこんな漢字使わないよね最近は。って話である。
そして、分「げつ」だと言いにくいので、よっぽどこだわりがあるとか、お年よりとかじゃなければ、現役農家の人は口語として分「けつ」を使う。つまりはどちらも正しいが、農業の口語としては「分けつ」を使うことが一般的であり、学術用語や歴史用語では「分げつ」が使われることが多いという結論になるのではないだろうか。

言葉は変化していくものだ。
JAカレンダーに分けつって書いてあって農家の人も分けつって言ってるから、現代用語としては「けつ」でいいと思うんだ。「分げつが正しいだろ!」とか目くじらたてるのは、ウィキペディアあたりを鵜呑みにした人か、なんかこだわりのある人か、郷土歴史家あたりじゃないかな…。

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と、いう話をしつつ、この、分けつという現象についてちょっと説明しておきたい。
多くの植物は、新しい葉っぱを出す時は、上へ上へと延びていく。なので新しい柔らかい葉っぱは一番上/先にある。しかし芝やイネなどは、成長点と呼ばれる「延びる場所」が根本に設定されている。つまり下から延びていくのだ。

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ただ、これだと葉っぱが一枚しかない状態でひたすら伸び続けることになり、それはそれでリスクが高い。
そこである程度延びたところで葉っぱを横に増やす。これが「分けつ」。横/外に増えた新芽も、根本に成長点があり、先端部分は固い。イネ科植物の場合は、葉っぱにトゲトゲまで装備している。これは、新たに延びる柔らかい場所が根本にあるから出来る装備だ。

つまり、分けつという現象は、イネ科植物の生存戦略と連動した現象だと言える。


なので芝やイネは上のほうだけ刈っても成長は止まらない。
逆に根本の成長点を刈られてしまうと再生出来なくなる。
芝生の刈りこみは根本まで勢いよくやっちゃダメだとか、イネ科雑草は根本まで刈り込まないとしぶとく生き残るとか言われるのは、こういうこと。

知っておくと何となくイネや芝の手入れの仕方が判るようになる雑学であった。