目まぐるしく変わる恐竜学の姿「愛しのブロントサウルス」

タイトルでホイホイされて手に取ってみたわけだが…。
ブロントサウルス、とは、かつてティラノサウルスやトリケラトプスなどと同じくらい人気のあった、代表的な恐竜である。首が長くて体がでっかい。たぶん一回は見たことあるはず。

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しかし、かつてキッズをワクワクさせたこの恐竜は一度"絶滅"した。アパトサウルスという別の恐竜と実は同じ種だったと判明したからだ。再現図も昔とは大きく違っていて、思われていたほどノロマではなく、さらに頭の形も別の種から想像でくっつけていたので実際は違っていたという色々と残念な展開となった。

著者は、そんな「消えてしまった」、かつて大好きだった恐竜にノスタルジアを覚える恐竜学者である。
本の内容は、本が出た時点での最新恐竜学。ただ、このジャンルは僅か数年でもけっこう書き換わっていくので、もう既に古くなってる部分もありそうなのが何とも言えないのだが…。

愛しのブロントサウルス―最新科学で生まれ変わる恐竜たち - ブライアン・スウィーテク, 桃井緑美子
愛しのブロントサウルス―最新科学で生まれ変わる恐竜たち - ブライアン・スウィーテク, 桃井緑美子

この10年の間でも、恐竜の世界は大きく変わった。
最近だと恐竜に羽毛が生えていたことのみならず、その羽毛の色まで特定されるようになってきている。化石に残された色素の跡が分析できるというのだ。始祖鳥はカラスのような色をしていたことが判明し、アライグマのような縞々しっぽの小型恐竜も出現した。また、もし今の鳥類のように羽毛を繁殖用のディスプレイとして使っていたなら、派手派手な赤いトサカや光る羽毛の恐竜もいたかもしれない。

見えている過去の世界は変わっていく。そして研究が進むとともに、子供の頃にイメージしていた空想の世界は、ある意味で「壊れ」ていく。
これは、ある意味で宿命であり、ずっと恐竜好きでいる人たちがみな体験する試練のようなものなのかもしれない。(私はそこまで好きだったわけではなく嗜んだ程度なので、恐竜に羽毛が生えても「ふーん」という感じだったのだが…。)



この本は、「かつて恐竜が好きだった大人たちへ」みたいなサブタイをつけてもよさそうだなという気がした。最近の恐竜キッズは、当然ながら最初から最新の知識を持ってやってくるので、昔の恐竜知識にノスタルジアを感じることはないはずだからだ。恐竜に実は羽毛があった、なんて当然だと思っているし、かつて変負う動物とされていたことをばかげていると考えるだろうし、オヴィラプトルが名前に反して実は卵泥棒じゃなかったなんてことは常識として知っている。そして多分、大間違いをしでかした過去の学者たちを間抜けだと思っている。(実際は常識は変わり続けるものだということは、数十年後に自分たちの知っていた常識が覆された時に知る。)

なおオチから言うと、ブロントサウルスはその後、復活した。
この本が出た少し後に、アパトサウルスの中でも幾つかの種があることになり、アパトサウルスの下位分類としてブロントサウルスの名前が使われるようになったのだ。

ブロントサウルス、本物の恐竜として復活へ
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/040900039/

進化の道筋と同じく、道は一方通行で行ったら戻れないわけでもない。
将来何が起きて、恐竜世界がどう変化するのかは、きっと誰にも判らないのだ。