来年は丑年なので… 古代牛のDNA最新研究を探してみた。今や時代はここまで来ていた

最新といっても去年のものなので、もしかしたら新しい研究が出ているかもしれないけれど。
古代の牛の骨からDNAを採取して、現在のウシがどのようにして家畜化されていったのか、というのを調べている研究がある。

Ancient cattle DNA reveals a bullish tale
https://www.natureasia.com/en/nmiddleeast/article/10.1038/nmiddleeast.2019.100

DNA study suggests ‘climate event’ contributed to collapse of empires
https://www.irishtimes.com/news/science/dna-study-suggests-climate-event-contributed-to-collapse-of-empires-1.3954101

↑研究内容は同一のものだが、上が科学雑誌、下が一般向けのメディアに書かれた内容なので、下の方が読みやすい

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文中に出て来るBos taurusは家畜ウシのこと。
Bos indicusが家畜化されたコブウシ。 zebuもコブウシのこと。背中にこぶがあるので印章や像などに出てきた場合も判別がつけやすい。

現代の牛はアナトリア~レバントあたりの地域で1万年前くらいに飼育化された野生オーロックスが起源とされているが、紀元前2,200年頃にインドから連れて来られたコブウシとまとまった交配をされた形跡がある、というのがこの研究の内容。母親から受け継がれるDNAはあまり変動しないので、おそらく種牛が連れ込まれて人為的に交配されたはずだという。

この時期にインドからエジプトまで広範囲に気候変動が起きていたという別研究があるので、もしかしたら乾燥や熱に強い性質を受け継がせるためにコブ牛との交配を行ったのかもしれない。という。


これはメソポタミアとインダス文明の間でやりとりされた交易品の中に、まとまった数の「家畜」が含まれていた可能性も示している。
インドからカーネリアン・ビーズなどが入ってきていたことや、インド側でメソポタミアのものに似た印象が見つかることなどは出土している遺物から判るが、それ以外の、腐って無くなってしまうようなものは証拠が残らない。たとえばメソポタミアは交易の支払いに穀物など農作物輸出していたのではと推測されているが、証拠が残っていない。何しろ穀物なので…。
動物の場合も同じく、残るとしても食べたあとの骨くらいしか残らないだろうから、今回のようにDNAを調べるでもしないと分からない。

参考
メソポタミアとインダスの間、知られざる「湾岸文明」の話
https://55096962.at.webry.info/201602/article_16.html

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また、記事の中には出てこないが、実は同じような交配は現代にも行われている。
ブラジルをはじめ南米に導入されている牛はコブウシが多い。これは、暑い場所に適応しやすく、過酷な環境にも強い、という特徴からだそうだ。ただし成長が遅いなど生産性では劣る。
そこで、ヨーロッパ産の牛とコブ牛をかけあわせて、現地の気候に適した牛を作り出そうとしているのだ。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsta1957/28/2/28_2_125/_pdf

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なので、古代世界でもこれと同じような「掛け合わせ」が行われていたとすれば、古代人は牛の特性と交雑の利点をよく知っていたことになる。牛の飼育化の歴史にも色々歴史がありそうなのが面白い。



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参考

ミタンという牛っぽい家畜の謎。(牛ではない)
https://55096962.at.webry.info/202005/article_13.html

ちなみに家畜化されたウシやコブウシはオーロックスから飼いならされているが、近縁種で現存する野生牛のガウールは別系統。
東部チベットなどで飼育されるミタンは、オーロックスではなくガウールを飼いならしたものではないかと言われている。
また、同じくチベットの高地で飼われているヤクは、オーロックスともガウールとも別系統になる。

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ここ10年くらいはDNAの解析のよる家畜化の歴史研究が目覚ましく進んでいるので、古い資料はどんどん陳腐化している。
人間も動物も、ちょっと前の本に定説として書かれていた内容が使えなくなっている状態だ。なので資料は出来るだけ、新しいものを探そう…。(数年で「やっぱあれは違いました」みたいになってることもあるしね。)