「鬼滅の刃」の主人公、炭治郎の実家が雲取山だという情報が出回っているけど、雲取山に登っても(おそらく)意味はない

映画の無限列車編は猗窩座どのが煉獄さん狙いのヤンホモみたいになってましたが、彼が強さを求めるようになった理由とかバックボーンが判るとめちゃくちゃ切ないんですよ…鬼になった時に人間だった時の記憶が消えちゃってるんですけど、それでも術式展開の模様は非業の死を遂げた婚約者の髪飾りから来てるとか、鬼になっても女性は食べないとかすごい一途で純粋な人なんだよ…それだけに悲しい…全ては無惨様が悪い(ここ重要)

はい、というわけで本題に入ります。

大人気で映画もヒット中のマンガ/アニメ作品「鬼滅の刃」。
その主人公の炭治郎の故郷は、東京都の奥多摩と設定されている。そして、どうやらアニメでのロケ地が雲取山だったらしく、聖地認定されて登ってる人もいるようなのだが…
言ってしまうと、雲取山に登っても意味が無い。

何故なら、炭焼き小屋とは集落の近くの山に作るもので、雲取山の山頂だと集落から遠すぎるからだ。

聖地巡礼サイトなどに「雲取山は日帰りが難しいので一泊二日を考えよう」「健脚向けなので初心者にはたどり着くのが難しい」などと書かれているが、その時点で気づくべきだ…村や町から遠すぎて、日帰りで炭を売りに行くことなど不可能。というか、そんな奥地にわざわざ住む必要がない。
聖地巡礼をしたいのなら、山のてっぺんを目指すのではなく、ふもとの、実際に炭焼き集落があったであろう場所を周るのが正解なのだ…。
おそらく、雲取山の本体ではなく、雲取山山系という意味での「雲取山」が正解なのだ…。


というわけで、もう少し詳しく書いておきたいと思う。



●雲取山に行く途中にある「炭焼平」は埼玉県側

雲取山の山頂は、東京都、埼玉県、山梨県の県境になっている。
主人公の住んでいるところは公式で奥多摩と設定されているので、もし作品ゆかりの地を目指すのであれば、東京都側に行かないと意味がない。
しかし、炭焼き窯などの跡のある炭焼平は、三峯神社から登る埼玉県側のコース。アニメスタッフが取材したのってこの辺じゃないだろうか…。かつての炭焼き集落の雰囲気は味わえるが、奥多摩ではないので注意してほしい。ちなみに、炭焼平はコースの中では序盤、かなりふもとに近い部分にある。

三峯神社~雲取山の観光ガイド
http://www.chichibuji.gr.jp/experience/hiking-syousai05/



●奥多摩側で炭焼き集落の跡が隠れているのは奥多摩~三ノ木戸山のあたり

「鬼滅の刃」の一話で、主人公は炭を売るために日帰りのつもりで町に降りている。また、雪が降っていない時には大八車を引いて町まで降りていたという会話が出てくる。ということは、ある程度、道が整備された町に近い場所に住んでいた。この条件に当てはまり、かつ炭焼きを行っていた場所は、超マイナーだが三ノ木戸山(さぬきどやま)のあたりではないかと思う。現在では登山道や林道が整備されていて、よく見ていると道端に炭焼き窯の跡の石積みらしきものが埋もれている。

雲取山はあまりにも奥地すぎるが、この辺りなら町に近く、かつ木材も豊富なので炭焼きに支障がない。

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●奥多摩で炭焼き体験が出来るのは御前山

もう一つのお勧めが、炭焼き体験の出来る御前山である。今はコロナで中止になっているが、山の麓にある「都民の森」では以前、体験学習が開催されていた。

http://www.town.okutama.tokyo.jp/sangyo/kanko/tominnomori.html

oma.PNG

実はここの近くには「奥多摩むかし道」という、自動車道が引かれる前に使われていた昔の道の跡があって、ハイキングで歩くことが出来る。
作中で主人公のご先祖様のもとに旅の途中の縁壱さんがやって来る描写があるが、旅人が立ち寄りやすい、かつての道に近い場所という意味でも御前山周辺は作中の雰囲気を味わえるスポットだと思う。中でもオススメは、かつて炭焼き人が通っていたと言われる「羽黒坂」。最初に候補に挙げた三ノ木戸山は、この羽黒坂の奥にある。

奥多摩むかし道(PDF)
https://www.okutama.gr.jp/site/map/pdf/mukashi.pdf

コースに沿って絶景スポットも沢山あるので、もし山に登るのが大変であれば、この道に沿って山の間を歩いて奥多摩湖を目指すのもいいと思う。



●奥多摩で昔の集落の雰囲気が味わえる場所は他にもある

奥多摩周辺には、廃村となった昔の集落の跡が埋もれているなかなか味のあるスポットがいくつかある。
廃墟マニアにお勧めなのが、「峰集落跡」だ。1972年に廃村となり、今でも集落の跡が遺されている。ここも奥多摩の一部。ここには電気もガスもあったようで、最後の住民のインタビュー記事などもあったりする。奥多摩の山奥での暮らしを知ることのできる場所だ。また、実際にこの村の生業の一つが炭焼きだったらしいので、探せば炭焼き竈も見つかるかもしれない。

https://bunshun.jp/articles/-/14997

作品の時代は大正時代なので少し時代は違うが、作中には既に電気も引かれていたという描写もあるので、あんまり違和感なく楽しめると思う。



●もしも雲取山に登るなら

と、いうわけで、「作中の雰囲気を味わいたい」のなら雲取山に登ってはいけない。そこに炭焼き小屋はないので…
しかし「聖地巡礼として名前の挙がっている場所に行きたい」という意味で雲取山にどうしても行きたい人もいるかもしれないので、注意事項を書いておく。

・奥多摩から雲取山に往復する場合には、初心者は「鴨沢」からのルート一択。往復は歩き慣れている人で標準10時間。

初心者がわりとよくやる失敗にブナ坂まで出たところで「ここまで来れば山頂はもうすぐだな!!」と侮ることだが、実はブナ坂のあとに小雲取山という絶壁が控えており、山頂まで普通に歩くと1時間半はかかる。ブナ坂到着が13時を回った時点で日帰り不能になるので大人しく引き返そう。

・山自体が高いため、谷間は日没が早い。冬期は3時くらいからもう暗い。早朝出発+ヘッドランプ必須。

・雲取山の山頂直下にある雲取山荘は要予約。予約せずに宿泊の場合は夕食が出ない。また、現在はコロナ対策のため宿泊人数や、インナーシュラフの持ち込み必須などの制限もある。「降りられなかったら泊ればいい」という安易な考えはNG。

・雲取山周辺では、防災ヘリコプターでの救助は有料

残念ながら無償で助けてくれる藤の家紋の家はありません。

・標高が2000m以上あるため、11月で山頂付近は既に最低気温が氷点下。

防寒着がないと昼間でも寒い。装備なしでビバークになった時点で凍死確定。なお、奥多摩小屋は老朽化のため廃止され、ルート上で宿泊できる場所は七ツ石小屋しかなくなった。こちらもコロナ対策で小屋に宿泊できる人数をかなり絞り込んでいるので、飛び込みで泊めてもらえるわけではない。雲取山は、茶屋や山小屋が一杯ある観光地みたいな山とは違うんである…。

・クマが出る。めっちゃ出る。

冗談抜きで熊が出るので、熊鈴はつけよう。日の呼吸とか使えない一般人はムリ、勝てない。

・毎年何人かが神隠しに会う

登山者やトレランの人が帰って来ない。見つからない。マジであそこは緑の魔境。東京都だからって安心してはいけない。高尾山が手鬼さんレベルなら雲取山系は下弦の鬼レベル、雲取が累くんあたりだと思う。

どのルートでも山の難易度的には下弦の鬼くらいはあるので、新米の鬼殺隊員はまずレベル上げしてから挑んで欲しい。パーティー編成推奨、頼れる先輩がいると尚良し。



流石に何も調べずに雲取山に突入する聖地巡礼勢はいないと思うけど一応、念のための情報ね。
ていうか、もう一回言うけど、奥多摩で炭焼きの雰囲気を味わいたいのなら、雲取山に登ってはいけない。そこは人の住まないガチな山奥。そしてヘタするとしぬ。
山に登るのなら、埼玉側の炭焼平に行くか、奥多摩側で三ノ木戸山あたりをブラつくかするのをお勧めしたい。


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★ある程度慣れると山の標高や道の長さで難易度が分かりますが、初心者は、「やまクエ」というサイトで目安をつけるといいかも。
★重要なのは時間より「標高差」という部分です。標高差が登り1000mであれば1000m分登る必要がある、ということ。一般的に建物の2Fの高さが3mなので、1000m=334階分の階段を上る、ということです。

http://www.yamaquest.com/list/search.php?keyw=%E9%9B%B2%E5%8F%96%E5%B1%B1
ya.PNG

(中の人ふくめ一部の山バカは鴨沢から雲取までの往復7時間くらいで日帰りしてますが、装備とか慣れとか色々あった上での話だしアホすぎるペースなので、参考にならないです…ていうか、真似しないでね…)