人工衛星から遺跡を探す最新技術、「宇宙考古学」についての本

「宇宙考古学」というとなんかオカルトっぽい響きもあるのだが、別名は「衛星考古学」とか「リモートセンシング」。これなら聞いたことがある人も多いかもしれない。要するに人工衛星から撮影した画像の中から遺跡を探し出す、という手法である。
かつては実際にその場所まで行って、地表を歩きまわって怪しい場所を探していくしかなかったのだが、最近では、実際に行かなくても、歩き回らなくても、「空から見て遺跡を探す」ことが出来るようになった。古代の遺跡の跡は、意外なほど空から見えるものなのだ。もちろん、それなりに見分けるための訓練は必要だが。

宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ - サラ・パーカック, 河江肖剰, 熊谷玲美
宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ - サラ・パーカック, 河江肖剰, 熊谷玲美

メインのフィールドがエジプトなので、エジプト関連のニュースで見かけることの多い名前である。というかこの本に出て来る内容はだいたい過去にこのブログでも拾っている。
宇宙考古学とは言うが、衛星に限った話ではない。ドローンやUAVによる空撮から見つかっているものも多数ある。

ライダー技術によるマヤの遺跡の発見
https://55096962.at.webry.info/201803/article_1.html
https://55096962.at.webry.info/201909/article_25.html

旱魃によって畑の作物が枯れたことによるクロップマークから見つかった新たなストーンサークル跡
https://55096962.at.webry.info/201807/article_24.html

新たなナスカの地上絵の発見
https://55096962.at.webry.info/201804/article_21.html
https://55096962.at.webry.info/202010/article_16.html

しかし、写真から見てはっきり判るものは少ない。最終的には現地に行って実際に掘ってみるとか、地表面を確かめるとかしなければ確定できない。何かありそうに見えたのに、時代が新しいものだったり、何も無かったりと、結果として空振りになることもある。100%ではないものの、今まで調査されていなかった地域や、なかなか人の行けない砂漠の奥地などを広くリサーチするという意味ではとても魅力的で効果的なやり方なのだ。


面白かったのは、かつて米ソが冷戦だった時代にアメリカが飛ばしていたスパイ衛星の映像が、今となっては貴重な昔の記録になっている、という話だ。エジプトはアスワン・ハイ・ダムが出来てから多くの河川添いの遺跡が水没してしまったが、それ以前の写真が残されているという。また、現在でもアメリカはけつこう衛星をスパイ活動に使っていて、イランやアフガニスタンで新たに遺跡が見つかっているケースもある。いわばこの宇宙考古学は、軍事技術が人文科学の世界に貢献している分野なのだ。

https://55096962.at.webry.info/201712/article_17.html

また、2011年のエジプト革命を挟んだ時代、エジプトで盗掘が増えていた証拠も、衛星画像から突き止められている。これは当時とても心の痛んだニュースだった。現地の治安が悪化して人が入れなくなっても、遺跡がどうなっているかは衛星から見れば判る。エジプトのように人目につきにくい広大な場所に遺跡が点在しているような国の場合、空の眼は遺跡保護のためにも役に立つ。

https://55096962.at.webry.info/201306/article_23.html


もちろん万能ではないのだが、上手く使えば考古学の、そして文化財保護の可能性を大きく広げることの出来る技術。ただ愚直に現地に足を運び、土の表面だけ眺めて掘る場所を決める時代では、もう、無くなろうとしているのです…。