これはタイトルでホイホイされるしかない。「悪党たちの大英帝国」

通りかかった本屋で見つけた瞬間、タイトルに一目ぼれして スッ… てレジまで持って行ったよね。これはずるい。タイトルのインパクトよ。
そして開いた瞬間に目に飛び込んでくる

 「偉大さ」は何で決まるのか

というキャッチーな言葉。
「悪党」たちが時代を動かす。偉大さとはその人の道徳的な正しさではなく業績の善悪である。

この本の"芯"ともいうべきテーマが「はじめに」部分にキッチリまとまっていて、とても分かりやすい。章立ても、人物のチョイスも一貫していて、「はじめに」から「おわりに」まで一本筋で美しくまとめられた良書になっている。

悪党たちの大英帝国(新潮選書) - 君塚直隆
悪党たちの大英帝国(新潮選書) - 君塚直隆

この本でいう「悪党」は、一見すると悪党には見えないが、実際にはアウトサイダーであり、時代を動かす力を持った悪党であった、とされている。
取り上げられている人たちは以下。

●ヘンリ8世

政治的野望のために二人の妻を処刑し、二人の妻を離縁し、さらに多くの家臣たちも殺害した血まみれの王。悪党らしい悪党。
しかし業績を見れば、近代イギリスの礎を築いた人である。

●オリヴァー・クロムウェル

君主制を崩壊させ自らが独裁者となった悪党。国王の首を刎ね、アイルランドでは虐殺を行った。
フランスでいうところのロベスピエールみたいなタイプの革命家。

●ウィリアム三世

オランダ人の王で、国民からは大いに嫌われていた。
しかし国民の人気とは裏腹に、堅実にやることはやってて立憲君主制の礎を築いた。

●ジョージ三世

私生活では清く正しい愛妻家として質素に暮らし、国民からの人気は高かった。
しかし政治面では時代にそぐわなくなっていた保守的な愛国思想によって国の運営に失敗、アメリカを独立させてしまった戦犯。

●パーマストン子爵

このあたりから、みんなに「ブリカス」の愛称で親しまれるイギリスさんになっていく。
アヘン戦争やインドの反乱鎮圧といった事件の主導者。

●ディヴィット・ロイド=ジョージ

第一次世界大戦時に権力を握り、イギリスを世界に躍進させた人物。

●チャーチル

第二次世界大戦の英雄にして、世界を今の問題多き状態にしてしまった原因の一人。
ナチスと戦った面とは別に帝国主義者という面も持っていた。



世界史の好きな人ならきっと、"大英帝国"という言葉に何か思うところはあると思う。

ブリカスという小ばかにいたような愛称や、そう呼ばれて仕方のない近代における数々の所業も幾らか知っているだろう。それらの大元、かつてヨーロッパの小国に過ぎなかったイギリスが、偉大なる「大英帝国」へと至り、やがてブリカスと呼ばれる暗黒面を成長させていくターニングポイント上にいるのが、これらの人物なのだ。彼らは皆、清廉潔白な善人ではなかったが、政治家に求められるのは結果であり、政治手腕であり、人間的な正しさや道徳は必ずしも必要ない。もちろん道徳が無くていいわけではないが、たとえば、自国を富ませ、育てる過程で、他国を貶め、破壊し、或いは虐殺を行った例は、歴史上では珍しくはない。そうした場合、自国民にとっては「英雄」であるが、客観時に見れば「大悪党」と評価できるだろう。

しかし悪党であることは必ずしも悪くはない。
「悪党たちが歴史を動かす」。歴史が動く時、そこには必ず、何がしかの意味での「悪党」が必要とされる、のかもしれない。

#ちなみにチャーチルとガンジーの対面も、この本では「悪党対決」と表現されている
#CIVシリーズの核ガンジーはジョークにしても、確かにガンジーも悪党である
#そして非暴力主義などというペテンで大人数を騙しおおせたペテン師でもあると思う