聖なる獣はいかにして死んだのか。古代エジプト末期の「動物ミイラ」の研究

古代エジプト末期、紀元前700年~ローマ支配下の紀元後300年ごろにかけての時代に大量に作られた動物のミイラ。
これらのミイラの大半は、愛されたペットではなく、縁起物のミイラにするために神殿で飼育され、意図的に殺された「商品」である。イメージとしては、日本の神社でいう絵馬のようなものに近い。宗教施設で買い、最終的に宗教施設に持って行って収めることで祈願を成就させる。ミイラが大量に存在するのは、ミイラづくりが産業化されていたからなのだ。

それらのミイラについて、最近ではCTスキャンやX線で、ミイラを壊さずに調査することが出来るようになった。
そして、この産業がどんなものだったのか、聖なる獣たちがいかにして殺されていったのかが少しずつ分かり始めている。

Mummified kitten 'strangled' to death before being offered to the gods, new 3D scans reveal
https://www.livescience.com/animal-mummies-smashed-and-strangled.html

調査されているのは猫、鳥、蛇という、ミイラの中ではメジャーな三種類だ。

猫は生後五か月で首を絞められており、ヘビは頭を叩きつけられて殺されているという…なんとも…うん…あれだ。辛い殺され方をしていた。
動物に神聖さを見ていた文化圏での出来事だけに、人々の持っていた素朴な信仰というイメージと、機械的に動物を養殖して手際よく殺していく産業のイメージは重なりにくいかもしれない。しかし、これが、古代の神々の信仰が消えて行く過程にあると考えると、納得がいく。この時代、おそらく人々はもはや神々に本当の意味での神聖さや神秘は見ておらず、自らの欲望や欲求を叶えてもらうためだけに祈っていた。そして神殿は、その欲求にこたえるために聖なる供物を生産しつづけていた。動物ミイラが作られなくなるのは、キリスト教の国教化された頃である。

キリスト教の神の時代になって一番ほっとしていたのは、もしかしたら、自らを象徴する動物たちに不幸をもたらしてしまった古代の神々自身だったのかもしれない…。

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[>参考までに、これまでの記事

古代エジプトの動物ミイラは養殖? 天然? DNA分析と論争の行方
https://55096962.at.webry.info/201911/article_17.html

古代エジプトの「鷹のミイラ」、実は人間の胎児だった
https://55096962.at.webry.info/201806/article_8.html

古代エジプトの動物ミイラのケース、カワウソ・マングース・トガリネズミが同デザインであることが判明
https://55096962.at.webry.info/201611/article_1.html

古代エジプトの動物墓は想像以上のスケールで作られている
https://55096962.at.webry.info/201804/article_10.html

エジプト 紀元前600年 -聖なる動物たちの受難
https://55096962.at.webry.info/201002/article_5.html