海を渡る人類 ~ポリネシア住民と南アメリカ先住民の出会いの証拠がまた一つ。

イースター島など太平洋東部の島々に移住したポリネシア人は、西暦1200年頃には南米大陸にも到達して接触(混血)していた、という研究が発表された。この説自体は前々からあるものなので「定説が覆る!」みたいな話ではないのだが、「いつ接触したのか分からない」という段階から、先行研究から少しずつ年代が絞られてきているのが面白いなと。


・ネイチャー日本語版での記事(文中に英語版へのリンクあり)

ヒトの進化:遠く離れたポリネシアでのアメリカ先住民との接触
http://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13376

・AFP記事

米先住民とポリネシア人、800年前に交流か DNA研究
https://news.goo.ne.jp/article/afpbb/world/afpbb-3292879.html

・英語記事

Polynesians steering by the stars met Native Americans long before Europeans arrived
https://www.sciencemag.org/news/2020/07/polynesians-steering-stars-met-native-americans-long-europeans-arrived

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今回分析されたのは、現代に生きるポリネシア人とアメリカ先住民(計800人以上)。ゲノムの中で共通する部分を見つけて、混血の痕跡を探すという方法だ。この手法についてはあまり詳しく知らないのだが、遺伝子の鎖が細分化されていく速度から逆算するのなら世代交代を何年で見積もるかでも誤差が出そうだ。ほんとに800年前でいいのかどうか、精度は気になる。そしてこれ、最初から「一定割合の混血はあった」っていう前提でやろうとしてるっぽいのだが、手法は妥当なのかな…。。
そのへんは専門家のツッコミまち。


なお、今までの類似研究はこんな感じだ。

人類の旅路ー 海洋民族は南米へ渡ったか
https://55096962.at.webry.info/201401/article_11.html

イースター島住民はいつ南米先住民と出会ったか? DNA解析の注目の結果は
https://55096962.at.webry.info/201710/article_18.html

イースター島の初期住民の遺骨からは混血された形跡が見つからない、とされていたので、サンプルが少なくてたまたまかすらなかったか、島に定住しはじめてからしばらくして南米大陸に到達して接触が始まったのだろうと思われる。


また、サツマイモの遺伝子の研究についても以下のようなものがある。


サツマイモはどこから来たのか。その起源を巡る様々な研究
https://55096962.at.webry.info/201810/article_5.html


人間の混血ではなく「文化」の接触については、以下に分かりやすくまとまったPDFがあるので参考までに。

みんぱくリポジトリ ポリネシアとアメリカ大陸 : 先史時代の文化接触
https://minpaku.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=7215&file_id=18&file_no=1


このあたりの研究の集大成から最近の流れをまとめると、やはりポリネシア住民は南米大陸に「渡ってた」のだろう。それも一定数。
そして行っただけじゃなくて戻ってきてもいた。
行った先で定住した人もいただろうが、既に先住民がいる場所への部族単位での移住は難しかったか、移住はしたけど長年のうちに現地住民と平和的に融合してしまったかするのだろう。もし海岸沿いで何かポリネシア的な遺跡や遺物が出て来れば、ストーリーは明らかにされるかもしれない。

いやーそれにしても、こうやって多方面のジャンルから少しずつ歴史が明らかになっていくの面白いっすね。
考古学や遺伝学だけじゃなく、植物学者や動物学者、海洋学者とか色んな人たちが参加してるからね。これからの考古学って、こういう複合ジャンルになっていくんだろうなあ…。