インダス文明はバッタの大群の襲撃を受けたか。ちょうど今、その地域が酷いことになってるけど…

ニュースになっているサバクトビバッタの大発生、先週あたりの蝗害のマップがこんな感じで、相変わらずインドとパキスタンの国境地域が群れに襲われている。ずって見ていて思ったんだけど、被害マップによくインダス文明地域がよく出てくるんだよね。

インドの地名で「ラージャスターン」とか「カッチ県」とか出てくる時、そこはインダス文明の遺跡のあるところです…。

★被害マップ 7/7までの分
200708forecastE.jpg
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html

「swarm」が羽根が生えた成虫が飛び回っている状態。「adult group」は成虫だけど群れにはなっていなくて、あまり大きな被害は出ていない状態。「hopper」は幼虫(羽根がまだないのでジャンプしか出来ない)。

ネパールは高所で寒いので、風に乗っていったん上がった群れも死ぬか分散してしまい、繁殖できず、被害も大きくない。引き返す体力のある者は再びインド西部に戻ってきている状態。


★インダス文明地域の地図
Indus_Valley_Civilization,_Early_Phase_(3300-2600_BCE).png

Indus_Valley_Civilization,_Mature_Phase_(2600-1900_BCE).png

インダス文明の諸都市は平野部にある。バッタの繁殖も平野部で行われるので、場所がだいたい被っているのだ。

以下がこの種のバッタの繁殖地マップで、現代の気候においては、春繁殖のエリアも夏繁殖のエリアもばっちりインダス文明の遺跡のあったあたりと被っている。インダス文明の諸都市の多くは交易をメインに生計をたてていたのでは、という説があるが、それでも自分たちの食べるぶんくらい多少は作物を作るだろうし、輸入するにしても近場の村落の畑が全部やられたらどうしようもないわけで。

Desert-Locust-Map.jpg
http://www.geocurrents.info/place/world/mapping-locust-swarms


…果たして、インダス文明はどれくらいバッタの被害を受けたんだろう。とちょっと気になった。

バッタの繁殖地になる条件は、ある程度、乾燥していながら、繁殖に必要な適度の湿度はあることだ。そして年間を通して一定の気温が保たれること。(寒い期間が3カ月続くと卵が死ぬため) インダス文明の衰退に気候変動が関係していたという説は、最近ではあまり支持されていない。現代とあまり変わらない気候だったのなら、頻度の差はともかく、ひとたびバッタ大量発生サイクルに入ると何年も連続で作物を壊滅させられていたのではないかと思うのだ。

いや、バッタで文明が亡びるとか、そういうデカい話でもないんですけど、衰退トリガーの一つくらいにはなるんじゃないかなと…。



ちなみに、古代エジプトはバッタの被害は滅多に食らわず、食らったとしても致命的な被害にはならなかったはず、というのが自分の結論。
旧約聖書に書かれた蝗害が有名なのだが、エジプトが蝗害に沈む時は、気候特性上、すぐお隣のイスラエルとナイル下流デルタ地帯が必ずワンセットになるはず。そして冬は寒すぎ、夏は乾燥しすぎなので繁殖も出来ない。

古代エジプトで蝗害はどの程度起きたのか。現代の大発生から推測するバッタの被害状況とは
https://55096962.at.webry.info/202005/article_8.html


エジプトの場合は、ナイルの増水が起きるか起きないかが王朝崩壊トリガーとして大きいと思われる。


地学×考古学 エジプト・プトレマイオス朝はアラスカの火山噴火で衰退したか
https://55096962.at.webry.info/202006/article_20.html

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[>おまけ

大量発生したサバクトビバッタがコンテナに紛れ込んで中国に! というデマが流されるので、バッタの繁殖特性について説明する
https://55096962.at.webry.info/202005/article_30.html

このバッタは、どれだけ大量に発生しても中国に達することはなく、日本にも来ないです。
あと、「今年は世界中でバッタが大量発生してる」ってのも単に今年は注目されてて報道増えてるだけっす。毎年発生して毎年ひっそり駆除活動してます。日本も中央アジアとかだいぶ支援してます。