エジプト、ファラフラ・オアシス ~「牛の土地」と呼ばれた場所

エジプトの西部砂漠にあるファラフラ・オアシス(Farafra Oasis)は、現代でも秘境扱いされるヘンピなところにあるオアシスだ。面積はけっこう広いのに、住んでる人は少ない。現代では、奇岩の光景で有名な「白砂漠」への観光拠点として有名。古代エジプトは第五王朝の時代に早くも知られていた場所でもある。

Farafra Oasis and its hidden gems
https://www.egypttoday.com/Article/9/39810/Farafra-Oasis-and-its-hidden-gems

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この場所は、古代エジプトの時代にはタ・イヘフ(牛の土地)と呼ばれていた。名前の由来にはいくつかの説がある。
ここはナイル渓谷から見て西の方角にあり、西には死後の世界があるとされていたことから、「西方の女神」であるハトホルと結びつけられた説。
また、単純に遊牧民がこの近辺で牛を飼っていて、水場として利用したからではないかという説もある。もしかしたら両方正しいのかもしれない。少なくとも大きな町が築かれたことは近代も含め無く、今も人口は今も少ない。エジプトで二番目に大きいオアシスにも関わらず、だ。さすがに交通の便が悪すぎるのはどうにもならないらしい。住んでいるのは、ほぼベドウィンだという。

オアシスといえば、沙漠を横断する場合の拠点として使われたんだろうというイメージはすぐに沸くだろう。実際、古代から現代にいたるまで、ナイル渓谷とリビア砂漠の交易の中継地点だったことは確かなようだ。しかしそれだけではなく、実は先史時代から農業をやっていた痕跡があるという。現代のファラフラ・オアシスの写真を見ても、確かに緑が多い。そして近くに火山帯が通っているので温泉がある。
農業の痕跡は紀元前7,000年まで遡る。新石器時代だ。ここに住んだ人々は、気候変動でサハラが乾燥しても移動しなかったかもしれない。

というか、ファラフラといえば白砂漠、のイメージだったので、畑と温泉の写真が意外だった。ちゃんと調べてみるものだな…。
https://www.alamy.com/stock-photo/farafra-oasis.html

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このあたりのオアシスの水は、かつて多雨だった時代に地下に染み込んだ地下水が湧き出しているものだという。
「ヌビア砂岩帯水層」というそうで、以下に少し資料があった。農業でくみ上げまくっているため、将来的に枯渇も心配されている。(ちなみに隣のサウジアラビアでは実際に枯渇の危機に瀕したため、灌漑農業は中止された/されようとしている。)
http://www.jkeng.co.jp/file/column026.pdf

エジプトの場合、今のところ地下水の利用をやめる流れは無い。
地下水の規模に説によるばらつきがあるが、今後増えないものを使い続けていれば、いつかは無くなってしまうだろう。今はとうとうと流れているオアシスの水も枯れる日がくるかもしれない。

どんな風景も永遠ではない。
人間の短い一生の間にはほとんど変化しないかもしれないが、数千年の単位で見れば、過去も未来も大きく違う。条件次第で緑の大地にも、赤い荒野にも、白い岩の林立する異界にもなりうる砂漠こそ、時間の流れによる変化が大きい場所なのかもしれない。