世界をかけるトウモロコシと、その代償/トウモロコシにつく害虫グローバル問題

トウモロコシといえば中米原産の作物である。アンデスのジャガイモと並んで、世界を変えた作物として知られている。
その高い収益性、ヨーロッパではメジャーな小麦では進出出来ない場所でも栽培できること。何より調理もしやすい。トウモロコシは、いまや世界中に広がっている。

意外な場所で見かけたのは、チベットに行った時のことだった。現地のチベット族が作っている民族料理で、ヤク肉の煮込みの中にトウモロコシがナチュラルに入っていたのだった。トウモロコシが広まったのは新大陸の開拓が始まってからだから、料理に使われるようになったのはここ数百年来のことに間違いない。

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ちなみにチベットではジャガイモ料理もたくさん見かけた。仏教寺の前でカレー味の揚げジャガイモが軽食として売られているのである。なぜカレー味かというと、国境の山脈を越えれば隣がネパールやインドだからだ。日本でいうカレーライスのカレー味ではなく、インドカレーのスープのようなスパイスの効いた味だった。アンデス高地で栽培できるならチベット高原でも比較的低い場所ならいけるはず…とは頭で理解出来ても、バター茶とともにジャガイモを並べられると謎の違和感のようなものを覚えたものだ。


前置きが長くなったが、要するに新大陸産の栽培植物は、今や世界中に広がっているということである。
そして作物が広がっているということは、その作物につく特定の害虫や病気も広がっているということを意味する。トウモロコシの場合はガの幼虫だ。ズイムシと総称されていて、日本の場合はアワノメイガが有名。トウモロコシの茎の中に棲み、茎を食べるし実も虫食いにしてしまう。こうした害虫がトウモロコシとともに広がった場合、原産地より被害が大きくなる。なぜかというと、天敵は一緒に広がらないからだ。

東アフリカでも、トウモコシはさかんに食べられている。エチオピアではコーヒーのつけあわせはポップコーンだ。
これも現地で見たときは謎の違和感があったが、現地の人はあまり違和感なくトウモコシとコーヒー豆を同じように鍋で炒っていた。

東アフリカでは、ガの幼虫の天敵として幼虫に寄生する寄生蜂を人工的に導入しているという。しかもトウモロコシ畑に蜂を呼び寄せるため、畑の周辺に蜂が好む植物を植えるなどしているというから工夫も大変だ。

 いかに畑にガを寄せ付けないか。(作物に卵をうみつけられる可能性をへらす)
 いかに畑にハチを呼び寄せるか。(作物に寄生しているガの幼虫を退治させる)

これを「プッシュ・プル法」と呼ぶらしい。都合のいい植物がそう簡単にあるわけでもないので、できる地域は限られると思うし、被害を完全になくすことは出来ないのだが、高価な農薬を使わずに収益を上げられるので、アフリカでは優秀な農法なんだとか。
科研費DBに当時の研究成果が残っていた。こんな研究もやってたのだ。

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https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-18405024/18405024seika.pdf

いちばん新しいものだと2011年の研究実績が出て来た。

アフリカの環境保全型農法における害虫管理機能の解明と活用
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21405018/

農業では虫が敵になりやすいのだが、敵の敵は味方ということで、うまく虫を利用して低コストに抑えてやっていこうという農法は面白い。
アメリカでやっているような大規模農園やプランテーション方式ではこのような混作は難しそうだが、小作農が多く畑の面積もそう広くないアフリカならではのやり方だと思う。