何か色々濃いネタが山盛りだ?!「アフリカ昆虫学への正体」

本にあるICIPEというのは、「国際昆虫生理生態センター」の略だ。
かつてそこで研究していた人たちが書いている、アフリカの昆虫の話である。実際に現地で研究した内容なのもあり、やたらと濃い。どこで役に立つのか全く分からないが、昆虫が好きな人はきっと楽しく読めるはず。今話題のサバクトビバッタや他のバッタ類をはじめ、フンコロガシ、ネムリユスリカ、マラリアの話など話題は実に様々。ちなみにここで言う「アフリカ」はサヘル地帯より南なので、エジプトなどは入っていない。

アフリカ昆虫学への招待 - 敏隆, 日高, 日本ICIPE協会
アフリカ昆虫学への招待 - 敏隆, 日高, 日本ICIPE協会

目次一覧は出版社のページにある。
http://www.kyoto-up.or.jp/books/9784876987160.html

どの研究も面白いのだが、個人的に一番面白かったマラリアの話を書いておく。

マラリアは、世界三大感染症の一つとされ、蚊が媒介する病気である。感染した人から血を吸うときに血から生殖母胎を吸い取り、それが蚊の中で成長して、次の吸血の際に次の人間に送り込まれる。血の中に直接送り込まれる病原体なので、蚊の発生を防ぐか、蚊に噛まれることを防ぐしかない。ウィルスなどと違い、病原体がマラリア原虫という虫なので、ワクチンを打って防ぐことも出来ない。実に恐ろしい病気なのである。

今、世間はコロナウィルスで大騒ぎをしているが、言ってみればヨーロッパなど先進国で流行したからこの騒ぎなのである。マラリアはアフリカを中心に毎年多くの死者を出している。2015年には約44万人が死亡していて、その多くは子供たちだ。
https://atm.eisai.co.jp/ntd/malaria.html

そのマラリアを媒介する蚊について、「実は蚊自身もマラリアに感染して病気になっている」という研究が出ていたのだ。昆虫にとっての病気とは何なのか、という定義の問題もあるが、これはなかなか新しい見え方だった。蚊って、何も気にせずマラリア媒介してるんじゃなかったんだ…。

蚊はある意味でマラリアに寄生されて媒介の役目を担わされているようなもので、マラリアに感染すると吸血行動をいつもより多く行ったり、マラリアを次の宿主に送り込むために長く吸血行動を行ったりするという。また寿命が短くなったり、飛翔能力が低下したりといった現象も発生するようだ。
しかし、何も得が無いならおそらく共生関係は持続出来ない。蚊とマラリア原虫の関係については、これからの研究で明らかれされていくことだろう。

マラリアが増えた原因としては、人為的なものもあるという。森を切り開いて畑を作ったことにより、蚊が繁殖できる水たまりが出来てしまったこと。また、経済的な理由から病院が機能しなくなり、初期に適切な治療をすれば助かったはずの人々が助からかったこと。マラリアの脅威をなくすには、科学や医療だけでなく政治や経済の問題も解決しなくてはならない、という意見はもっともだと思う。ただ支援すればいい、という単純な考え方では意味が無い。その地域や、その国自身がどうにかしないといけない問題も沢山あるのだから。




*****
この本の「まえがき」部分に、日本学術振興会とケニヤのICIPEとの関係が最近絶たれてしまった、と書かれている部分がある。
本が出たのが2007年。日本が他国に援助する際の基準からして国際関係に起因しそうだと思って調べてみたところ、ちょうど2007年の総選挙で内乱が起きていた。

"2007年12月の大統領選挙の結果,与党国家統一党(PNU: Party of National Unity)から出馬したキバキ大統領がオレンジ民主運動(ODM: Orange Democratic Movement)のオディンガ党首に競り勝ち,再選を果たしたが,選挙結果を巡る与野党の対立は1963年のケニア独立後も根強く残る国内部族間の対立を表面化させ,死者1,200人,国内避難民50万人を超える未曾有の大規模な混乱に発展した。"


https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kenya/data.html

おそらくこれが原因ではないかと思う。日本の場合、自国民の救出のためではあっても、国民および一部政党などの強烈な反対に束縛されて自衛隊を他国に派遣することがなかなか難しいので、危険になりそうなところに国が国民を率先して送り込めない。


また、日本からの出資の記録などは農林水産省に残っていたが、確かにヨーロッパ勢の出資が強いんである。ケニアは旧イギリス植民地なのにイギリスではなくオランダが一位に来ているのは謎だが、現在の貿易関係国ではオランダが上位に来ているので、そのせいかもしれない。
ここに日本からの出資を入れるのはまあ…難しいだろうなと。アフリカは元々ヨーッパの植民地だった国が多く、今も元の宗主国との関係が強い。金銭面での支援は元々、望み薄だったと思う。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/sonota/k_kikan_16/pdfs/186.pdf