【牛まみれ】古代マヤの「失われた王国」Sak Tz'i' の首都と思しき遺跡、メキシコで確定される

発音出来ねぇぞSak Tz'i' …! というわけで日本語の資料を辿ってみたら「サク・ツィ」というカタカナが充てられていた。意味は「白い犬」。マヤの都市国家の一つで、ピエドラス・ネグラスの勢力圏にあり、かねてより近隣他国の碑文で存在は知られていた。しかし首都の位置が分かっていなかった。

それが今回、流行りのLiDAR技術によって遺跡の全貌が明らかとなり、実際に発掘してそこに王宮などの遺構があることが確認された、という話である。

Ancient Maya Kingdom Unearthed In A Backyard In Mexico
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2020/03/ancient-maya-kingdom-unearthed-in.html

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遺跡の名前は便宜上、Lacanja Tzeltalと名付けられている。紀元前750年前くらいから定住が開始され、およそ1000年に渡って居住されたと考えられている。この王国は古典期マヤの衰退後もしばらく存続し、最後の消息は864年だという。

規模としてはそれほど大きくなく、四方を強力な国家に取り囲まれており、都市には防御のための壁も作られているという。しかし最終的に生き残っていることから、交渉術に長けているなど、近隣国との関係づくりは巧くいっていたのだろう。


LiDAR技術が変えたここ最近のマヤ考古学については、以前何度か記事にしたことがあるので一応。元々は自動運転にも使われる、障害物の位置や距離をレーザーで計測する技術だ。
ユカタン半島のあたりはジャングルに覆われていて遺跡が埋もれていて発見しづらいのだが、この技術を使うと木々を透過して、隠れている遺跡を見つけ出すことが出来るのだ。


BSプレミアム「知られざる古代文明」マヤ編
https://55096962.at.webry.info/201612/article_21.html

ライダー技術で見る知られざるマヤの世界。新発見が一杯だ!
https://55096962.at.webry.info/201803/article_1.html

マヤ文明の要塞発見~ライダー技術で見つかったマヤ遺跡が語る歴史とは。
https://55096962.at.webry.info/201909/article_25.html

で、今回はこの技術で遺跡の全容を掴んでアタリをつけた上で、土地の持ち主と交渉し、最小限の発掘で指標となる遺跡を発掘し、「確かにここが首都っぽいね」と判断したという。

しかし…そこはなんと、牧草地のど真ん中…。

遺跡の全体が個人所有地の中にあり、発掘の交渉に5年を要したという。さらに発掘している周囲で牛が放牧されているので、穴に落ちたり遺跡に糞したりしないようにするのが大変だったとか。牛の中で発掘する現場もそうそう無いと思うけど。

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"nosyな牛を近づけないためのフェンス"というキャプションに涙


この遺跡については、今後もLiDAR技術を使ってのマッピングなどが継続して行われるという。私有地であることや、かつての国の規模としてそう大きいものでもなく観光の目玉になりそうにないことから、それで十分なのかもしれない。観光地になると決まると国に土地を接収されてしまうので、現地の人は嫌がるそうだ。

サク・ツィについてのこれまでの調査内容や遺跡の位置づけなどはここが詳しい。自分メモも兼ねて。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00934690.2019.1684748

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ついでだが、この「サク・ツィ」について調べていたら、マヤの都市国家の中には名前だけは知られているけれどまだ場所が特定されていないものが他にもある、という情報に行き当たった。つまり失われた王国が一杯あって、年表にも地図にも空白が一杯あるというフロンティア…!
これからも何か発見されるだろうからwktk。

あとマヤの年表や分かっている王名についてはこの本がオススメ。というかこれしか持ってない。
サク・ツィと他都市の関係についてもある程度載っている分かりやすい邦語資料になるかと思う。

古代マヤ王歴代誌 - マーティン,サイモン, グルーベ,ニコライ, 誠一, 中村, 悦夫, 長谷川, 雅樹, 野口, 佐和子, 徳江
古代マヤ王歴代誌 - マーティン,サイモン, グルーベ,ニコライ, 誠一, 中村, 悦夫, 長谷川, 雅樹, 野口, 佐和子, 徳江

この本に載ってるユカタン半島の地図の下の方、点線の「ラカンドン川」のほとりにあるのが今回の遺跡。関係が深いとされるピエドラス・ネグラスをマーキングしてみた。

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また、資料サイトに載っている周辺国家の勢力圏の推定図がこれ。
ピエドラス・ネグラスの勢力圏とは隣同士。他にも近隣に小国の勢力圏がひしめいている状況になっている。
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