トバ火山大噴火のその後の議論 インド亜大陸の人類は滅びたか、生き残ったか

トバ火山とは、インドネシアのスマトラ島にある火山。7万4千年前あたりに大噴火を起こし、当時そのあたりに進出してきていた人類をいったん全滅させたと考えられてきた。(これを「トバ・カタストロフ」と呼ぶ)

しかし、最近の発見から、定説と化していたこの考え方に疑問符が付き始めている。噴火直後の地層から、石器が見つかりはじめているからだ。


Humans in India may have survived supereruption 74,000 years ago
https://www.sciencemag.org/news/2020/02/humans-india-may-have-survived-supereruption-74000-years-ago

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発端は、2007年に南インドで噴火の前後に石器が見つかったことだ。噴火の灰の層を挟んで石器が見つかるのなら、近辺の人類は噴火にもかかわらず継続してそこに住み続けたと言えてしまう。実は以前言われていたほどトバの噴火は壊滅的じゃないんじゃない? という疑いが出た。

この石器の年代鑑定は疑われてはいなかった。しかし、ホモ・サピエンスが作ったものかどうかの証拠は出ていない。従って、デニソワ人やネアンデルタール人の手によるものだという可能性もあると指摘されてきた。
見つかっているのが石器だけで、人の骨が見つかっていないことも議論になってきた。

今回追加された同じ年代の石器からして、どうやら噴火によって人類が全滅したというのは怪しくなってきたのだが、相変わらず、その石器が「どの人類」によるものなのかが分からない。下層から出てくる石器はいわゆる「ルヴァロワ技法」で、これは中世石器時代にホモ・サピエンスとネアンデルタールの両方が作っていた石器に一致する。

ただし一部の学者たちは、上部の層から出てくる石器はより洗練され、新石器時代にホモ・サピエンスが作っていたものに近くなっているから、住んでいたのはホモ・サピエンスだったはずだ、と主張しているようだ。



果たして火山の大噴火は、近隣の人類を全滅させたのか。
それとも、しぶとく生き残った人類が、分厚い火山灰の降り積もった大地を踏みしめていたのか。

とはいえ、トバ火山の噴火から石器の出てくる地層は完全に連続しているわけでもなさそうだ。もし100年でも誤差があるとしたら、100年もあれば他の地域から人が移動してくる可能性はあるだろうし、火山灰の大地にも草木は芽生えるだろう。火山の噴火によって人類が激減したことが、現在生き残っている人類の遺伝的な多様性の少なさに関係している、という説もあるが、その説と噴火による人口の減少は両立出来なくはないと思うのだ。

結局、人間の骨が出てこないことには結論は出ない。
今のところ何とも言えないが、定説とされた考え方も書き換わる可能性がある、というのは心に留めておいていいかも。人類史●●年! みたいな本に書かれている内容は、あくまで、その本が出た時の定説でしかないというのもね…。