大英博物館収蔵品エルギン・マーブルは、EU離脱後の政治の駆け引きの道具になるかどうか

エルギン・マーブルとは、かつてギリシャのパルテノン神殿の外壁を飾っていたレリーフのこと。
19世紀にイギリスのエルギン伯爵というえらい人がこそっとイギリスに持ち帰り、現在は大英博物館に収蔵されている。この持ち出しは現在では不法なものだったと認識されている場合が多く、ギリシャも何十年にも渡ってイギリスに返還を求めてきた。かつては、「大英博物館という最高の環境で保管されているのだから、貧しい国に置いておくより安全」といったロジックでの援護もあったのだが、現在ではギリシャに最新の博物館が建っており、ぶっちゃけ展示環境は大英より良くなっているので、この言い訳は通用しなくなってきている。

そのエルギン・マーブル、イギリスのEU離脱(いわゆるBrexit)に絡む政治の道具として扱われるのでは、というニュースが流れていた。
ただしこれは、はっきりと言及されているのではなく推測である。

EU Brings Greek Demand For Elgin Marbles Into Brexit Talks
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2020/02/eu-brings-greek-demand-for-elgin.html

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ニュースなどでも流れていたとおり、イギリスは1月末にEUを正式に、ついに離脱した。
そしてこれからEUと、離脱後の関税や人の行き来など様々な条件について交渉を行うことになる。その中で、EU側は「U.K. will need to “address issues relating to the return or restitution of unlawfully removed cultural objects to their countries of origin.”」という文言を練り込もうとしているらしい、というのが今回の話の発端だ。
要約すると「イギリスは不法に持ち出したものを元の国に返しなさい」という内容。
EUが言っているのだから、EU内の国から持ち出したものを返せという話で、該当しそうなものの筆頭にあるのがエルギン・マーブルだったため、もしかして政治の駒として使うのでは。という憶測を呼んだ。

しかし、そうであるかどうかはまだ分からない。クリスティーズ・オークションのようなイギリスのオークションで扱われる、出自の怪しい遺物についての言及ではないかとする話もある。
ちなみに昨年ニュースをにぎわした出品物といえば、ツタンカーメン像の頭部がある。

クリスティーズのオークションにツタンカーメン像の頭部出品、エジプトさんが物言い
https://55096962.at.webry.info/201906/article_12.html

EUを離脱するということは、EUからすれば「身内」ではなくなるということだ。
身内の輪を乱さないようにと働いていた力が無くなり、パワーバランスが崩れることになる。イギリス領ジブラルタルの返還を要求しているスペインの動きなどもその一つ。

「遺物の返還」が国家間の友好を演出するための政治的な判断のもとに行われることもある昨今、EUがイギリスにゆさぶりをかけるために、あるいはイギリスがEUとの交渉を有利に運ぶために、エルギン・マーブルを交渉のテーブルに乗せることは、有り得なくはないと思う。本当は文化財はそんなことに使うものじゃないと思うのだが…。