大きな水源の無い国・ヨルダンの水事情「野の花の国」

先日、世界の各遺跡の水利事情を調べている中で、ヨルダンにあるナバテア人の遺跡(ペトラ)では、限りある降水を効率的に利用するために水路が匠に張り巡らされていた、という話を読んだ。ほほう? そういやヨルダンって砂漠の国だよな? 隣のサウジは地下水使ってるけどヨルダカはどうなんだっけ…? と思って、ちょっと資料を探してみた。
そして、図書館の奥の方から掘り出した本がこれ。

ヨルダン 野の花の国で - 塩尻 和子
ヨルダン 野の花の国で - 塩尻 和子

この本の冒頭部分はヨルダンの首都アンマンの水事情の話である。
外務省職員の妻として、エジプトやスーダン、ヨルダンなど中東を移住していた人の体験記だ。本が出たのが30年ほど前で、書かれている内容は1970年代からスタートする。なので今は事情が変わっている可能性があるが、「大きな川がないヨルダンでは水の確保には苦労する」という話は実に身につまされるものだった。大きな水源がないのに人が集中して暮らしている現代の都市では、水が出る時間帯に貯水槽に水を貯めるために何時間も頑張り、無い時は節約しなければならない。それでも足りなければ給水車がくるのを我慢強く待ち、高いお金を出して買わなければならない。
現地の人は数日おきにシャワーするだけで済むが、毎日でもお風呂に入りたい日本人にとって水のない国はつらいという話は、よく分かる…。


この状況は現在も変わっていないようで、たとえばJICAの情報では以下のような記述がある。

https://www.jica.go.jp/jordan/office/about/greeting.html

"ヨルダンの面積は日本の約4分の1(北海道よりやや大きい)、天然資源は非常に限定的で、エネルギーの殆どを輸入に頼っています。水も常に不足しており、首都アンマンにおいても週50時間未満の給水しかなく、一人当たり水使用可能量は世界最低水準です。"


"産業発展には水とエネルギーの安定供給が不可欠ですが、ヨルダンにおいては、水源が非常に限られており、アンマンに供給する水も、世界で一番低い土地に位置する死海北部のヨルダン渓谷(海抜下226m)から4つのポンプで標高880mの高地に引き上げています。そのため、水供給に大きな電力が必要になります。このような地理的制約と給水システムが、水公社や電力公社に大きな財政負担を強いています。"


どうやら現代でも、アンマンは水が足りないままのようだ。

「水が足りないから産業も発展しない」というのは非常に辛い条件で、隣のサウジアラビアなどはこれを石油で補っているが、残念ながらヨルダンは資源国ではない。国民の出稼ぎなどによって得たお金で水をくみ上げている。かつて雨水をうまく貯めてペトラという都市をまかなったナバテア人のように、この国は今も、水資源の上手な扱いを求められる自然条件なのだ。


なお、ヨルダンは大きな水源がないとはいえ、実は温泉という観光地もある。
それが「マイン温泉」。これも海抜高度-264 mという低地にある。温泉というか滝じゃね? という感じのビジュアルだ。
http://jp.visitjordan.com/Wheretogo/HammamatMain.aspx

これも「野の花の国」に出てきた。観光地化される前は、地元の人たちがひそかに楽しむ場所だったようだ。滝が出来るほど水はあるんだけど、そこが海抜0メートルより下の限られた地域という…。ほぼ地下水。

当たり前のように水を手に入れられる国と、水が限られている国の環境の違いを、改めて実感したのだった。