天空の国チベット ~富士山よりも高い場所へ行って来た。

チベットに行ってきた。



行こうと思った切っ掛けは、自分でも良く分からない。ここのところキリスト教圏ばかりだったので久しぶりにアジアの仏教寺院が見たかったとか、エチオピア正教でキリスト教の根源に触れたならチベット仏教で仏教の根源に触れてみたいよなとか、特に理由も無かった。
冬のチベットは空がとてもきれいだと聞いていたので、それもあるかもしれない。
なんにせよ、その場所に「呼ばれた」ということなのかもしれない。


冬のチベットは空が青くてきれいだ、とは、行ったことのある人の多くが言うセリフだ。
その青、紺碧に近い天空の青が見たかった。――この色を見るために、平均標高4,000mの「大陸の屋根」を目指したと言っても過言ではない。

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青い空。あまりにも青く過酷な空の色。
何しろ4,000mともなれば、高度に順応するのに最速で数日はかかる。到着した当日はほとんど動けず、呼吸して飯食って寝るので精一杯だ。
日本の冬山でもそうだが、気温は低く常に氷点下、マイナス16度という表示さえ見かけたほどの世界。日差しは強く、植生限界を越えているため山はただの岩と砂だ。

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それでも冬がオススメなのは、何よりこの、人間の生存限界に迫る「青」の世界を見られるのが冬だから。
そして中国からの観光客が少なく、チベット人巡礼者の季節だから。

チベット人の多くは、農業か放牧を営んでいる。仕事が休みの冬になると、各地の寺へ巡礼に出かける。
そのダイナミックな巡礼の渦と、熱狂的なまでの信仰心を知ることの出来る季節はやっぱり冬なのだ。旅行ガイドなどでは旅行のベストシーズンは夏と書かれていることが多いようだが、もしチベット人の暮らしやチベット仏教の信仰に興味があって、体力がある/冬用装備を揃えられるのであれば、冬季をお勧めしたい。

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ちなみに、マイナス10度に耐えるには冬山用の登山装備があれば余裕である。登山装備は軽いし汗も溜まりにくいのでオススメ。普通のコートやジーンズだと風邪ひきます。



さて、チベットに行ってみたい、という人へのアドバイスを少し書いておきたい。
チベットは、個人旅行者がホイホイ入れる場所ではない。

 ・入域許可書が必須
 ・街に入るのにガイドやホテルが決まっていないとダメ
 ・街を移動する際に必ず検問を通ってチェックされる

どうしてこうなったのかというと、ぶっちゃけ、チベットは中国さんが国際法に違反して不法占拠している場所だからだ。1950年代半ばの弾圧と1959年のダライ・ラマの亡命後を経て併合された。支配を正当化するために弾圧やら言論統制やらしている真っ最中なので、その情報が洩れるのがイヤ、かつ記者のようなメディア関係者などが入り込むことを極端に嫌っている。
この話は、日本人ならわりと広く知られていることなので、いまさら言うまでもないことだろう…。

だが、中国さんはさきの大戦での戦勝国ということになっており、国連常任理事国でロシアとも組んでいる経済大国、権力国家に敢えて逆らおうとする権力者などいないのである。批判はされども、そのままナァナァにされている。

もっとも中国さんが、元々それほど裕福ではなかったチベットに多大な投資をしてインフラをこしらえ、公務員に高い給料を払い、観光地として「発展」させようとしているのは事実である。その中国さんからすれば、外国人(特に西洋人)が入り込んでチベット独立などをあおることは、中国側からすれば「国益を損なう」「扇動している」ということになる。アヘン戦争の歴史など考えてみても、まぁ西洋人が信用できないのも一理あるのでそこはお互い様だと思うが、別に扇動の意図がなくても、チベットで政治的な話題に触れることはタブーなのである。特に、インドに亡命している14世ダライ・ラマと亡命政府は、目の上のたんこぶのようなものだ。

中国さんとしてはチベットを、「あくまで自国の」観光地として売り出したい。だが、外からやってくる旅行者はとにかく管理したい。

そんなわけで、チベットに入るには入域許可書が必要だし、これを取るには代理店を通さなければならない。チベット自治区内の観光にはガイドとドライバーが必須になる。ちなみにガイドにチベット人を雇っても、ドライバーは中国人で指定されることになる。そして車には監視カメラと盗聴器がセットでついてくる。

これらの面倒な手続きを何とか誤魔化して自由行動をしようとしても、悪くすれば観光どころではない目に遭うし、警察などの写真を撮ると即拘束されると言われている。(実際に現地に行ってみるとかなりザルではあったのだが…)
司法制度が存在しないに等しい国なのは今さらいうまでもないので、捕まったらそのまま行方不明ということもあり得る。

これらは「脅しすぎ」なのではなくマジな話である。


なので今回は、色々考えた挙句、現地集合のツアーに参加することにした。
ツアーであれば集団で動くので、一人くらい変なのが紛れていても誤魔化せると思ったからだ。ていうかマンツーマンで見張りを兼ねたガイドさんにくっつかれるよりは注意がそれるはず!!

結果的にこれは成功で、時間制限ありとはいえ、多少は自由に歩きまわることが出来た。


日本からのツアーを出している会社はいくつかあるが、チベット国内の事情に詳しいところは数社になるので、もし行く人がいるなら、地球の歩き方に乗ってるところから選ぶといいと思う。

また、このあたりは一読していった方がいいです…。
http://www.tibethouse.jp/about/travel/briefing/



●インターネットの接続について

中国国内という扱いなので、金盾(グレートファイアーウォール)は当然ながら通過する。従ってSNSやgoogle検索などは一切使えない。
そのへんのwi-fiスポットやネカフェを使った場合も中国政府の検閲に引っかかるので、VPNつきのwi-fiルータを持っていくのが無難。Global wi-fiはチベット各地の都市でも使えた。(ところどころ3Gでしか繋がらなかったけど)
なおWi-fi機器は飛行機や列車の荷物検査で引っかかるやつなので、手荷物のほうに入れて移動すること。

●トイレ事情について

街中の公衆トイレは昔懐かしニーハオトイレ。紙はない。
水洗トイレは水が凍っているとかで閉鎖されており、結果的にニーハオしか使えないところもあった。

●写真撮影

外国人にはガイドさんが必ずつく。指示には従うこと。
そのへんにいっぱいいる警察関係者の写真を撮ってしまうと、色々面倒なことになる。
ただわりとザルなので、風景に偶然入っちゃっても別に何も言われない(今回は団体で動いてたからかも?)。
自分の身より、何かやらかしてガイドさんに迷惑がかかることを心配してしまうのがチベットというところ

●ごはん

基本は中華料理。チベット料理を食べたくても、チベット人街と中国人街が分かれてて街中でひょいと食べにいくのが難しい。
屋台は揚げじゃがいもや焼き栗など軽食しかない。
スーパーは一応あるけどカップめんなど乾物などがメイン。果物屋さんの果物は寺院のお供え用が多く、普通に食べられるものはバナナとみかんくらい…
高地なので野菜などはほぼ見かけない。
パン? そんな洋風の食い物は売ってないよ!!

自販機は時々立ってるけど稼働していない。
もしくはお金を入れても商品が出てこない(故障している)
唯一動いていたのがノルブリンカの自販機。何故かモンスターエナジーが入ってた…

●時差

公的には、チベットは北京時間に合わせて動いている。つまり日本時間の-1時間。
ただし実際は北京よりはるかに西に位置するため、実際の時間は2時間くらいズレている。朝7時が日の出の時は、実際は9時にならないと日の出にならない。

●持って行くのが必須のもの

保湿クリーム、リップクリーム、目薬など。
高地のため乾燥がすさまじい。保湿クリーム塗ってても指先が割れていく…。
現地の食べ物にバター茶やバター入りスープなど油ものが多いのは、油で肌や唇を保護しないと荒れてしまうから。実に理にかなっている。

●あるといいもの

保温ボトル、サングラス。
ホテルでもらったお湯でお茶を作って飲みながら歩く。特に冬は、ペットボトルそのまま持ち歩いていると水が凍る(!)くらいの寒さなので、水筒がないと水は飲めない。
また日差しがキツいので、サングラスがないと目が痛くなると思う。



また高地のため、軽い高山病はほとんどの人がかかると思う。自分も初日はちょっと胃の調子が悪く、寝つきが悪かった。高山病予防のマニュアルは一読しておいたほうがいい。
…入域許可書を取るのも面倒だが、それがなくても人間の活動限界という意味で簡単には行けない場所なのだ。

それでも、一度は行く価値がある場所だと思う。



尚、今回は高山病に少しでもかかりにくくしようと青海省から鉄道で入ったのだが、結果的に あまり意味が無かった。
次回はそのへんの話でもしよう…。