西アフリカの人骨DNAから見える、古代のアフリカ民族分布に関する研究展望

西アフリカの古い埋葬の中にあった子供の骨からDNAを採取、今そこに住んでる人たちと全然別の系統の子や、未知の系統に属する子もいた。という話。

Children’s graves reveal genetic diversity of ancient West Africa
https://cosmosmagazine.com/archaeology/children-s-graves-reveal-genetic-diversity-of-ancient-west-africa

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このニュースの何がすごいかというと、そもそもの埋葬数が少ない(古代にはきっちり墓をつくる習慣がない)上、高温のためDNA情報が傷みやすいアフリカの人骨からDNAを採取するのは今まで難しかったのが、出来るようになってること。最近インダス文明に属するインドの遺跡からの人骨でもDNA採取の試みが成功してたりするので、見えないところで凄い勢いで技術が進歩してる…。

また、今回の調査対象となっているカメルーンの遺跡Shum Lakaは、埋葬の習慣がないはずのアフリカで、約3万年前からの人類の痕跡が蓄積されているユニークな遺跡だそうで、様々な時代の人骨サンプルが手に入ったのも大きいだろう。

DNAの抽出に成功したのは、8000年前、3000年前の4人の子供。分析の結果、彼らの所属する系統は、現在そこに住んでるバンツー語族とは全然関係なく、ここ最近でバンツー語族に置き換えられていたことが判明した。

これは、現在のアフリカの人種分布と、かつての分布はかなり違っていて、農耕が始まった頃に固定されるまで人が流動的だったことを意味している。子供たちの属する系統は互いに近いものの、先祖の2/3は現在の西アフリカの人々からかなり遠い未知の系統に属し、残り1/3は中央アフリカの狩猟民に属していただろうという。

この研究の主題の一つがバンツー語族の起源地を確認することで、「カメルーンのあたりは違う可能性が高くなってきた」ということなのだが、もう一つ、DNAの2/3が未知の系統由来というのが面白いなと思った。

長い人類の歴史の中、子孫が生き残れずに全滅してしまう家系も当然あるわけで、アフリカには途絶えてしまった未知の系統もいただろうことが予想されていたが、3,000年前の骨を調べてそれが出てくるのなら、どうやらわりと最近になって途切れたようだ。


これはまだ研究の1つに過ぎず、これからの他の事例待ちとなるだろうが、アフリカの現在の人種・民族分布と古代のそれは、かなり違っていたかもしれない。


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参考までに

アフリカ内の民族の流動についてはまだ分からないことが多く、かなり大雑把な人の移動しか分かっていないため、たとえば、このへん↓のミトコンドリアやY染色体のタイプ別での人の移動に関する研究が、今後書き換わる可能性がある。

Schematic_representation_of_the_major_inferred_migrations_involving_mtDNA_haplogroup_L0.png

また、最近出ていたこのへんの研究に対するツッコミも関連する。

人類の起源はボツワナ! という研究に対し、わりと容赦ないツッコミが入る
https://55096962.at.webry.info/201911/article_8.html

現代人に繋がらずに途切れた系統や、繋がってはいるけど人数が少なく上書きされてしまった系統も、今後出てくる可能性はある。


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日本語記事
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/012400046/