イギリスさん、EU離脱へのカウントダウン。Brexitで争点となっている「北アイルランド問題」とは

イギリス(UK)のEU離脱が、いよいよ10/31と迫ってまいりました。
延期に延期を重ねていよいよ離脱です! でも何も決まってません!!! とりあえず離脱することだけ決まっているので、直前まで議会は閉会します。すげー!
いやまさか、こんなグダグダの状態のまま突入するとは思いませんでしたけど。
メイ前首相の苦労は…。

時事ネタはニュースサイトとかで見てもらうとして、今回のEU離脱で争点となっていた「北アイルランド問題」が気になって資料を漁っていた中で面白い本を見つけたのでメモしておこうと思う。

北アイルランドのインターフェイス
北アイルランドのインターフェイス

前提として、アイルランドのある島の北部はイギリス(UK)の一部である。
アイルランドがイギリスから独立したのは20世紀半ばなのだが、北部は17世紀にイギリスから移住してきた人の子孫が多数派で、イギリスへの帰属意識が強かった。そのため、イギリス系住民(敢えて呼ぶのであれば、だが)の多い北アイルランドは、UKの一部となって分離されたのだ。

とはいえ、北アイルランドには元から住んでいたアイルランド系住民も存在する。これまでは、イギリスもアイルランドもEUに所属していたので2国の間に国境はなく、自由に行き来出来ていたので、それほど大きな問題にはならなかった。しかしイギリスがEUを離脱すると、アイルランドとの間に国境が出来てしまう。

元はひとつの国だったものが、よそからの移民に乗っ取られるような形で分離独立すると、当然、紛争の火種になる。
1966年からの数十年は、北アイルランドをアイルランドに戻したいという統一派とイギリス派が殴り合う紛争状態で、この期間に3600名を超える死者が出たという。
紛争は1998年のベルファスト合意で政治的にはいちおうの解決を見て、過激派は武装を解除した。
しかし、民間レベルでの感情的な対立は決して消えておらず、むしろ、互いに接触を避けることによって争いが回避されているふしがある。

この本によると、ベルファストの町には90くらいの「壁」があるという。壁はイギリス派住民とアイルランド派住民を隔てるために存在し、ただのフェンスなどではなく互いが見えないように高く、丈夫に作られている。公園の中にまで作られた壁。そして家々の壁に書かれた、互いの所属する集団のイデオロギーを掲げた壁画(ミューラル)。異なる者同士が接する境界線、それがインターフェイスだ。

 …と、いうところから、この本の内容に繋がっていく。


だいぶ前置きが長くなったが、この北アイルランド成立の歴史を知らないと、なぜベルファストに「壁」が作られ続けているのか、なぜ北アイルランドとアイルランドの間に「国境」が出来るとマズいのかが分からない。


 イギリスにアイデンティティを持つ住民 = プロテスタント =移住者
 アイルランドにアイデンティティを持つ住民 = カトリック = 先住者

であることから、この問題はカトリックvsプロテスタントの宗教問題と言われたり、移住者と先住民の争いと言われたりすることも多かったが、今ではそういう単純な構造でもなくなりつつある。「自分たち」と「あいつら」という二極の問題。通りひとつ隔てただけで自分たちとは相いれないと感じる心理。サッカーの試合の観戦に行くのに、一緒に行くとケンカになるから別々の経路で出かける、とか、冗談のようなやり方をしていたり、和解したから紛争が消えたのではなく、生活の中で極力、接触を減らしていったから紛争が消えただけなのではないかという気もしてくる。

そして、イギリスのEU離脱に伴い、UKの一部を構成する北アイルランドは、アイルランドとの間を完全に切り離す新たなインターフェイとして「国境」を持つことになる。アイルランドに帰属意識を持つ住民の反発は当然予想され、北アイルランド問題が再燃する可能性もある。それを回避するために考案されていたのが「バックストップ(安全網)条項」という離脱案だが、今回、イギリスが「合意なき離脱」へと突き進んだ場合、この条項も消滅する。

悪い予感しかしないのだが、こうなったらもう、ベルファストとその周辺の「壁」が、互いを隔てるための壁ではなく、互いを守るためのものとして機能することを期待するしかない。会えばケンカする人々も、会わなければケンカにならない。もちろん分かり合って手を繋げるのが一番いいのだが、現実はそう簡単じゃないし、冷却期間を置いたほうがうまくケースもあると思うので…。