シュメール文明の発展は、まずはご飯の確保から。

文明の始まりや突出したアイデアの源を、宇宙人とか遠来の優れた文明の生き残りとかに求めるファンタジーは昔から繰り返し使われてきたし、古くはそれが神話の原型にもなっていた。しかし具体的に細かく見ていくと、そうした説はそもそもの部分を見落としていることが少なくない。
シュメールの場合、「農業の技術はどこから来たか」という話だ。

まず、農業も牧畜もメソポタミアでは開始されていない、ということを考えてほしい。

社会科の授業とかで「肥沃な三日月地帯」という言葉を習ったと思う。これは麦が自生できる気候条件があり、農耕が始まった地域と考えられている。近年では現代・古代両方の家畜のDNAの解析などから、家畜の飼育化も近い地域で始まったと考えられている。

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メソポタミアはこの地域から外れている。
何しろ降雨量が少ないので麦は自生出来ない。
そんな地域で麦を栽培するにはどうすればいいか? →人工的に水を引くしかない。

そう、メソポタミアといえば灌漑農業だけど、その技術の元はまず他所から伝来しているのだ。そして灌漑農業をやるためには人手がかかるので、自然と人が集まって集落をつくるキッカケにもなったはずなのだ。そして、農業で安定してごはんが確保できるようになると、爆発的に人も増える。これが都市の誕生に繋がる。
集団で農業を行う中から仕切り役の階級が生まれ、一年を記録して季節を読むための天文観察が生まれ、収穫量や取引量、家畜の数を記録するために文字が生まれ、という感じで連動して発達していく。


かなりザックリ書いたが、要するに、メソポタミアに文明を齎したナニカがいるとしたら、宇宙人とか神とかより、まず、肥沃な三日月地帯から来たご近所さんです…。
ウルク期に誕生する都市文明の前段が「農業技術」。これ無いと何も始まらない。ごはん確保出来ないのに人が集まって暮らせるわけがない。ごはん大事。



この件で興味深いのが、最古の農業遺跡の一つであるチャルモ遺跡の最近の発掘。
初期農耕の時点で既に水路を使っており、これが灌漑農業の元になったのではないかというのだ。まだ途中のようなのだが、日本隊がやってて日本語資料もあるやつなのでもう少し知られてもいいかも。

ジャルモ(チャルモ)遺跡と、農耕の起源 ~初期の農耕はすでに水路を利用していたかもしれない
https://55096962.at.webry.info/201902/article_21.html



というわけで、メソポタミアの文化革命は、意外と泥くさいところから始まってるよというお話。
まぁ人間は泥から生まれたって神話でも言われているし、本当に最初は泥こねくり回して水路作るとこからだったんだと思うよ。