デニソワ人の顔を復元したよ! というニュース→ちょっと危ないやつだと思うよ…

まだ骨の破片しか見つかっていないデニソワ人の顔をDNAから復元した、というニュースが流れていた。
断片しかない状態でどうやって顔を予想しているのかと思ったが、どうやら現代人(ホモサピエンス)と、ネアンデルタールのDNAとを比べて、その「差分」から特徴を掴んで予測しているらしい。なのでこれ、かなりあてずっぽうに近いと思う。

Extinct Denisovan Woman Gets Her First Portrait Thanks to DNA from Her Pinky Bone

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別の記事

Scientists use fossilised finger bone DNA to rebuild ancient human
https://www.theguardian.com/science/2019/sep/19/scientists-use-fossilised-finger-bone-dna-to-rebuild-ancient-denisovan-human

DNAは、髪の毛から取得しようが、顔の骨から取得しようが、小指の先から取得しようが、一人の人間であれば全部一緒である。
その意味では、顔の骨が見つかっていなくてもDNAの採取自体は問題ない。

が、そのDNAから、「額が広い」「頬骨がやや横にはっている」などの特徴を拾うのには不確定要素が含まれる。なぜなら、ヒトのゲノム情報の実に97%は利用されていない、いわゆる「ジャンク」で、しかもDNAに含まれる遺伝子がどう有効化されていたかどうか完全に分からないからだ。(遺伝子は、全てが有効ではなく、眠っている可能性もあれば、別の遺伝子領域と相互に作用するものもある)

記事中に「a methyl map」メチル化マップ という言葉が出てるが、調べてみるとメチル化というのは遺伝子発現を抑制する、または活性化する現象のことで、要するにメチル化されている部分の塩基配列が有効か無効かは場合によるという話だった。これを「多分ここが有効だったはず」と予測して顔を再現しているのだ。大雑把な傾向については、確かにこれで分かるかもしれないが…「人の顔」という個体差の大きな部分で、果たしてこの手法は有効なのかどうか。

遺伝子を持っていても有効か無効かは場合による、というのを、もうちょっと分かりやすく言ってみる。
たとえば、くせ毛の人がストレート毛の人と結婚して、子供はストレート毛でも孫がくせ毛の可能性がある。これは子供の中にあるくせ毛の遺伝子が、子供の代では無効化されていて、孫の代で有効化されたため。

こうした積み重ねが顔の個性を生み出しているわけだが、DNAを分析したところでこんなん分からないですよ。
それが出来るなら、遺体の損壊が激しい死者でも生前の顔が一発で復元出来て、身元不明者なんて生まれないですよ…。

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というわけで、この研究は着眼点としては面白いし試みとしてはアリだと思うけど、あまり信じすぎるのは危ないと感じた。
正しいかどうかも分からない「デニソワ人の顔」というイメージを固定してしまうと、それにそぐわない証拠を故意に無視するか、見落としてしまう可能性がある。(かつて人間は脳から発達したはず、と信じ込んで、類人猿の分類を誤ったりフェイク化石に引っかかったりした人類学者たちが居たように。)

また、この研究は、デニソワ人という新種の人類について知りたい、という好奇心から発生している。知りたいと思う要求に対して、安易に回答を出しているようにも思えるのだ。答えがあったほうが人は安心するものだが、その答えが十分に科学的な慎重さを払ったうえで出されたものかは用心したほうがいいと思うんだよね。