未知なるキノコ学の世界の魅力が分かる本「きのこの下には死体が眠る!?」

タイトルで惹かれて読みだしたらまんまと完読してしまった。たまに山でみつけたキノコをいじくってる程度の、きのこの世界をあまり知らない一般人でも楽しく読める本だった。

きのこの下には死体が眠る!? ~菌糸が織りなす不思議な世界~ (知りたい!サイエンス 57)
きのこの下には死体が眠る!? ~菌糸が織りなす不思議な世界~ (知りたい!サイエンス 57)

ちなみにタイトルは、死体が分解されたあとに発生する「アンモニア菌」と呼ばれる種類のきのこから来ている。森の中には動物や虫のたくさんの死体が常に存在する。それらを他の生物が分解し終わったあとに残るアンモニアは、殺菌作用を持つため他の微生物は殺されてしまう。すると、アンモニアに抵抗力がある菌に有利な状況となる。有利なうちに一気に生えて、胞子を飛ばす頃にはアンモニアが消えて他の微生物が戻ってくるのでアンモニア菌も店じまいしてしまう。

死体から直接生えるわけではなく、死体が分解されたあとの一瞬しか生えてこないため、発見されたのはわりと最近の話。これの発見者は日本の研究者だそうだ。きのことに下に死体は埋まっていないが、アンモニア菌があるところはかつて死体のあったところ(もしくは別の要因でアンモニアがあるところ。便所の脇とか…)である。
このように、特定の条件を満たさないと生えてこないきのこもあり、「きのこ調査は運がすべて」とまで言われている意味が良く分かる。

ちなみに日本には1万種類くらいのきのこがあるらしいが、正体が分かってるのは、なんとたったの3,000種類。つまり他の種類は、記録があっても詳しく研究されていないか、分類されていない。生えてくる条件が分からなければ遭遇も簡単ではないので、まぁそうなるだろう…。
食用きのこは100種類、毒性が判っているものはたったの40種類。他は毒があるのかないのかも分からない。
一般的な図鑑に載っているのは多くても1,000種類くらいなので、自分が遭遇したきのこが果たして図鑑に載ってるものなのかは分からない。
きのこ研究はなんとも気の長い、まだスタートして間もない分野なのだな…という感じがする。


ただし最近では、きのこのDNAを分析する手法が取り入れられているようで、きのこの分類についてはかなり進歩があったという。
東アジアと北米のきのこが似ているのは以前から知られていたが、DNAからもそれが裏付けられたという話が出ていた。

一方で、DNAを調べてみたら系統がより複雑化した例もあるようで、外見は似てるのに別種だった…といったケースや、生えて一晩で消えてしまうヒトヨタケのように、一種類しかないと思ってたら北半球と南半球でなぜか種類が違う、しかも亜種が分岐してる、といったことが分かったケースもあるようだ。


また、化石化したきのこの解析についての話も興味深かった。
きのこの祖先は植物が上陸したあたりから存在し、現在のきのこの直接祖先は、恐竜のすこしあとくらいに出現しているという。

kinoko.jpg

恐竜の時代のきのこは、植物化石として残っているわけだが、石になったきのこから構造を読み取るのは簡単ではない。というか、きのこ学に入れていいのか、古植物学なのか…。

あとマツタケについて、人が里山を切り開いて、マツが生える森を維持しないと生えてこないものだとか、外国から輸入されているマツタケのうち、メキシコあたりから来ているものは実は分類が良く分かってないとか、そんな話もあったり。

一つだけ気になったのは、きのこ好きの民族と、きのこを絶対食べない民族の話、という途中に挟まっていたコラム。
古代ギリシャ、ケルト、アングロサクソン、スカンジナビアはきのこ嫌い。ロシアはきのこ好き。という話だったが、ロシアでも民族によるんじゃないかな…。あと古代ギリシャやケルトは別にキノコ嫌いではなかったと思う。少なくとも古代ギリシャはキノコの利用例を見た覚えがある。どういう基準で好き嫌いを分類してるのかなーと思った。
ちなみに古代エジプトも砂漠に生えるキノコはおそらく利用していたと思われる。

と、ほぼ何も知らないジャンルなので、きのこについての色んな雑学を仕入れることが出来た。未知のジャンルに手を出すのもたまには面白い。