アフリカの「肥沃な三日月地帯」、ヤムいもの起源を求めて

タイトルが印象的な研究。

元論文
Plant genomics unearths Africa's ‘fertile crescent’
https://science.sciencemag.org/content/364/6439/422

記事
Plant studies show where Africa’s early farmers tamed some of the continent’s key crops
https://www.sciencemag.org/news/2019/05/plant-studies-show-where-africas-early-farmers-tamed-some-continents-key-crops

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「肥沃な三日月地帯」といえばシリア~パレスチナ付近を中心とした、小麦栽培をはじめとした農耕の起源地と呼ばれる場所を指す言葉。この研究では、アフリカのニジュール川の流域が「肥沃な三日月地帯」になぞらえられている。意味するところは「アフリカで栽培化された食用植物の起源地」だ。

西アフリカはアフリカン・ライスやミレットが栽培化された地域の一つと考えられていたが、どうやらヤムいももその一つに加えられそうだというのが今回の話。

ちなみに、米もミレットも、ヤムいもも、アジアでは主要な作物となっている。そのため混同されることが多いのだが、それぞれアフリカにも固有種がある。そのため、アフリカで栽培化されたものがアジアに伝わったわけではないし、アジアから近年持ち込まれたものと、元々アフリカにあったものは別ものであることに留意する必要がある。

ニジェール川流域で栽培化されたと考えられている米はアフリカン・ライス (Oryza glaberrima) 、ミレットはパールミレット(Cenchrus americanus)と呼ばれる種類、今回の話に出てくるヤムいもはアフリカン・ヤム(Dioscorea rotundata)と呼ばれている種類だ。



研究では、ガーナ、ベニン、ナイジェリア、カメルーンから集めた、野生種と栽培種のヤムいものゲノム配列から、起源となる種類を探している。その結果、サバンナの野生種よりは熱帯雨林の野生種が近く、栽培種の起源地はおそらく西アフリカのニジェール川流域だろうと推定されたという。
栽培化された時期はいまのところ不明だが、ミレットは6,000年前くらいからだと考えられており、最近になって農耕が始まったわけではなさそうだ。


記事内にも出てくるが、アフリカでは植物の栽培化がどのように進んだかの研究が非常に遅れている。遺物が残る可能性が低く、研究者もそう多くは無いからだ。しかし、アフリカだって大昔から農耕は行っている。(べつにサバンナで狩猟ばっかりしてる民族ばかりというわけではない…)

パールミレットやアフリカン・ヤムなどはアフリカで栽培化された固有種で、それらがいつ、どのように栽培化されたかは今まで明らかにされてこなかった。現在の研究では、ニジェール川流域が気候変動で乾燥化されたことが栽培種誕生のきっかけになつたかもしれない、という仮説になっているようだが、もしそれが正しければ、他の農耕を開始した地域と似たような理由になる。「人はなぜ農耕を始めたか」という大きな疑問に対する答えのヒントになる可能性もある。

今後の研究に期待したい。