タナ湖の教会めぐりに行ってみた

ブルーナイルとタナ湖のクルーズのセットは、バハルダールではわりと定番の観光ルートらしい。

タナ湖といえば、その奥の島にある教会に、十戒の石板を収めたという聖櫃<アーク>がかつて安置されていたとか、幼いキリストを連れたマリアがエジプトからここまでナイル川を遡って来ていたという聖家族の逃避行伝説があったりとかする場所。また、エジプトでいうところの砂漠の中の修道院と同じく、この湖に点在する島々には世俗から隔離された修道院が多数、立ち並んでいる。

島にある教会を訪れるには、クルーズツアーに申し込まなければならない。
女人禁制のところもあるため、観光船が訪れるのは基本的にゼキ半島というバハルダールの町に近い大きな半島の先っぽのところ。もっと奥の方にある教会まで行くツアーもあるかもしれないが、かなり距離があるため、朝早くから夕方まで一日ツアーになってしまうと思う。

船着き場はこんなかんじで、めっちゃパピルス生えてる。
植生は下流のナイル川と似ている…。

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タナ湖はめちゃめちゃ広いので、町から近いはずのゼキ半島にたどり着くまで一時間くらいかかる。
ほぼ琵琶湖。というか雰囲気がマジ琵琶湖。たまにカバがいたりペリカン? がいたりする以外は。

ていうか船頭さんが「カバが泳いでるから速度落とすわ」とか言い出した時は「??!」ってなったけどな!

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ちなみにお船のエンジンは安定のヤマハ船外機。

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ツアーによってはガイドさんが案内してくれるが、場合によっては時間区切られて「●時までに船着き場戻ってきてね」という感じでフリータイムになる。半島にはいくつか教会があるのだが、とりあえず14世紀に造られたメインの教会「ウラ・キダネミフレット」に行っておけばいいと思う。というか逆に、それ以外の教会は違いが良く分からない…。
(ちなみに混雑するのは午前中で、午後発のツアーだとちょっと空いてたりするらしい)

教会は、お土産屋さんの立ち並ぶ参道を30分くらい歩いた先にある。結構な上り坂で、敷石がされているため雨の日はちょっと滑りそう。道沿いに鳥や猿がいるし、参道を横切って付近の村のヤギが出てくるし、なかなかにカオス。

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看板が出てくるまでだいぶ歩くので、「大丈夫かこれ」みたいになってくる。

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教会は、一見して教会とは分からないような独特の作りになっている。
何の予習もなくやってきた人はどれが教会か分からないと思う。。この国の教会の多くは、ヨーロッパでおなじみのハコ型のものではなく、丸い形をしている。 なぜなら、伝統的なエチオピアの古民家の作り方が丸いから。地上の人の家が丸いから、神の家も丸いのだ。
丸い中に同心円状の回廊があり、いちばん真ん中が至聖所。外側の回廊が一般信者用。

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アジアンな雰囲気のある風通しのよい回廊。
石の上に絨毯を敷いてあり、教会に入る時は靴を脱がねばならない。絨毯にたまにダニがいるとかで気にする人はダニよけスプレーをして私は面倒くさいので裸足でぺたぺたしていたが、別に何ともなかった。雨季とかで湿気てなければ気にしなくていいのかも。

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壁は土にワラくず混ぜたものを塗り込んであり、日本の昔の家屋と同じ作り方だ。ただし土は火山灰のような手触り。タナ湖自体、火山活動によって出来たものなので、ここの土壌も火山由来だ。

この教会に限らず、バハルダール周辺の教会の美術はビザンツ様式の影響が色濃く出ているのだが、現地の人は何故か「我が国独自の」という表現を使う。確かに独特の部分もあるんだけど、左側の聖母子像は正教系の伝統に沿ったイコンに見えるし、中央のマリア様の青い衣はヨーロッパ・カトリックの流行からじゃないのかい…?

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教会の庭には、お祈り時間を知らせる石の鐘。
叩いてみると、サヌカイトに似た金属っぽい音がした。というかコレ、サヌカイトの仲間?

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壁にはびっしりと色鮮やかな宗教画。ラグマットや色合いと相まって、なんだかアジアンな雰囲気を醸し出している。下の方の色がきれいな部分は17世紀くらいの修復らしい。
その時に銃が付け足されたそうで。

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回廊の奥に司祭しか入れない至聖所がある。
ちなみに壁の上の方にいるアフロな天使は、現地の人の外見に合わせてアフリカナイズされた結果らしい。アフロ天使には、この後もあちこちで出会うことになる。

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扉の裏側にひっそり隠れている描きかけの部分。いつから描きかけなのか分からないが、何人もの人が何かを描こうとしてやめた感じになっていて、いろんな意味で味わい深い。ここの壁画類も、漆喰の上に描くとかではなく板に直接絵具を塗り付けている感じになっていた。

どうも雨季の湿気が多すぎて漆喰では剥がれてしまうらしいのだが…。

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あと、見た中で一番インパクトがあったのがこのシーン。
司祭さんの説明によるとこれはモーセの出エジプトシーンで、左下は海に飲まれようとしているファラオとエジプトの軍勢らしいのだが、…ファラオってこんなだっけ?

アジアンな雰囲気とかペルシアな雰囲気とか色々混じってて、どこからどうツッコめばいいのか分からない。とにかく色々混じっているのが、この国の宗教画の面白いところ。また逆に言えば、今までに関わってきた国、文化圏、それらの全てを飲み込んでないまぜにして、"影響は受けつつも"、借り物ではない独自の様式を作り上げているところが、エチオピア宗教美術の特徴だと思うんだよね。

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というか、エチオピア正教会は近年までエジプトのコプト正教会の配下にあったはずなのに、こんなにも違うんだ…と思ってしまった。

エチオピア正教では、儀式の際に太鼓をたたいて歌い踊る。これは他のキリスト教の宗派に見られない特徴で、土着宗教か、キリスト教伝来以前の文化が継承されていると考えられている。この教会にも大きな太鼓が置かれていて、教会のガイドさんが実演してくれた。
独特の節回しのあるお経のような歌とリズムは、単体で聞くと、今までに聞いたことのあるキリスト教のどんな宗派の祈りの歌とも似ていなかった。

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帰りはお土産を物色。
実は、この島のお土産屋さんで手に入るものが、エチオピアの主要なお土産屋さんで手に入るほぼ全てのラインナップとなっている。。。 (要するに他の観光地もお土産の種類は大差ない)

ただ、ご当地十字架だけは、ここでしか手に入らないらしい。
十字架は各町ごとに形が決まっているらしく、タナ湖の十字架は渦を4つ合わせたような形のもの。なぜかエジプトのコプト十字やアンクまで売ってる店があったりする。

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あと像とか。

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宗教画とか。

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他には焙煎前の生コーヒー豆やじゅうたんや民族衣装、キーホルダーに帽子に…と色々。
民族衣装とかの布モノは、ダニがついていることもあるので空港など安全そうな場所で買ったほうがいいらしい。ちなみにここで手に入らないのはラスタファリアン・グッズ。エチオピア国旗の描かれたダs…よくあるご当地マグカップとかは、町のお土産屋さんで探そう。


おまけ
船着き場に帰る途中で見つけたサル。

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半島まで往復二時間、半島内の教会見学にもそのくらいかかるので、町に戻ると、けっこういい時間になる。なんだかんだの長丁場。

ちなみに、この半島には自販機はもちろん飲食店なども全くない。水と軽食くらいは持って行こう。
あとトイレも見かけなかったな…。あるにはあるのかもしれないけど、おそらくかなり汚いやつだと思うので、NOGUSOのほうがマシかもしれない。あとペーパーなど期待も出来ないので持っていったほうがいいと思う。


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エチオピア正教についての予習は、このへんで。

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