ソロモン諸島の文化史と「貝貨」の世界

古本屋の奥の方で発掘してきた本。オセアニアの海洋に浮かぶ島々の研究史は、ロケーションが近いからか日本ではけっこう冊数が出ている。そして多分、視点が欧米とは違うので、読み比べると面白いんじゃないかと思う。



ソロモン諸島のマライタ島、ランガランガ・ラグーンという場所が中心になっているが、別の地域も「環太平洋」という括りで触れられている部分がある。釣り具の比較や漁の仕方などについてはほかの地域の話と一緒に書かれている。

が、一番興味深かったのはやはりランガランガ特有の話で、特に貝貨のことだった。

貝貨とは、文字通り貝を削って作った貨幣がわりの品で、見た目はネックレスかアクセサリーのようだ。実際にお金として使うことも出来、「婚資」の役割も持つのだが、単なる「お金の代用品」ではないのだという。
何といっても、作るのには時間がかかる。貝を集め、削り、磨いて、皆で協力しあわないと作れない。協力して作ることによって絆を確かめあうこと、手間暇をかけた貝貨を送ることによって示す感謝の気持ち。単なるモノではなく、お金に換算できる以上の価値と意味を持つ習慣、のようなのだ。

これは人類が共同でモニュメントを作り始めた理由ともつながっていると思う。

古代の人々は、生活に直接役に立つわけでもないオブジェを、なぜ時間をかけて作ったのか。宗教とか儀礼とかいう意味だけでなく、作ることそのものに意味があったのではないか。貝貨づくりの理由は、それと良く似ている。

ちなみに貝貨は主に女性たちが作るので、男は、母や姉妹など女家族に作ってもらって嫁とりをするそうだ。

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あと面白いなと思ったのは、ランガランガ語ではママが「父」、テイテーが「母」で、ママと父ちゃんが逆になってることとか。

最近よくハリケーンがやってくるようになったのが、異常気象のせいではなく、島民がキリスト教に改宗してしまったので風よけをしてくれるシャーマンがいなくなってしまったからと解釈しているとか。

また、ハワイでは祖先の骨に霊力が宿ると信じられていて、偉大な首長の骨でつくった釣り針はよく魚が釣れると信じられていたが、こうした信仰は海洋民族に広く存在していて、彼らの神話では海の底=異界であり、釣り針は異界とこの世をつなぐ霊的なアイテムとみなされていた、というのもなるほどとと思った。

日本は海に囲まれた国であり、我々もいちおう海洋民族だったような気がするのだが、海洋の神話も概念も忘れて久しい…というか私はどっちかというと山の民なので完全に山の神話しか身に覚えがない。もしかしたらうちの祖先は、南方から海を越えてきた人たちじゃなく北からマンモス食いながら陸伝いにやってきた人たちだったのかもしれない。

海の神話は、楽しいけど、ほんのちょっとだけ遠く感じる。