いつの間にか終わってた…! 西夏文字を守ろうとする人々の物語「シュトヘル」

なんか連載が途切れ途切れになって途中で忘れてた「シュトヘル」、いつの間にか完結してた!

歴史モノの漫画で、時代は西夏滅亡の頃。モンゴルがブイブイ言わせてた時代で、チンギス・ハンや彼の息子たちも出てきますね。ジャンル的にはタイムスリップ・転生モノに入るのかな。現代日本に生きる主人公が、おそらく前世か何かと思われる(作中に明記はない)女戦士・シュトヘルの中に意識が飛んで、彼女の生きた時代を追体験していくというもの。シュトヘル一行は、モンゴル軍によってこの世から消し去られようとしていた西夏文字をなんとか未来に繋ぐべく、玉に刻まれた西夏文字一覧「玉音同」を南宋に運ぼうとしています。



舞台がモンゴルなので、現代に転生してる、もしくは過去の世界に生きた人の子孫と思われる人が「日本人」なのが説得力あるんですよね。だって俺ら尻青いしな!w 漢字文化の日本人だからこそ転生したあと西夏文字がスムーズに書けるのも違和感ない。あと実際に西夏文字の解読に日本人学者がだいぶ貢献してるのとかも知ってるとアツいです。

戦いのシーン多いのと各人の生き様がいずれも波乱万事用なのでストーリーはとにかくアツい。文字をどうしても後世に残したい。書かれたものによって自分の生きた証としたい。という主人公たちの思いだけでなく、刻まれた文字によって消せない過去を文字通り烙印とされてしまった人々の文字に対する憎しみや、政治の道具とされる文字など、色んな視点が入り混じる群像劇。

タイムスリップものなので主人公は最後に現代に戻るしかなく、そもそも800年前の話なので登場人物はみんな故人。西夏の滅亡も、文字の系譜として途絶えてしまい解読されるのが近代になってからなのも、歴史としては確定しているので最初っからだいぶ辛い展開が続きますが、最後は予想以上のハッピーエンド。ハッピーエンドなんですよはいここ重要、ハラバル兄さんありがとう、ありがとうやで…!(※ただしヒロインを3回殺した男である)



史実ネタの濃ゆいマンガが好きな人にはオススメなのです。
ちなみにシュトヘルとユルールで序盤は若干おねショタっぽさがあります。乙嫁とか好きな人もハマりそう。



なおこの本読んどいてなおアレですが、ぼくはあること無いこと文字で書き記されたせいで後世に風評被害を伝えられた人や民族や国をたくさん知ってるクチなので、心のどこかで「でもどこかで文字は滅ぼしておくべきだよな…(小声)」みたいな気持ちもあったりする。結局、文字で書かれたものはすべて書き手の主観でしかなく、書かれた文字に触れて判るのは読み手の主観を通した解釈でしかない、というのも真実だと思う。

カルタゴに対するローマのプロパガンダのように敗者の歴史を勝者の文字記録が塗り替えていくこともあったし、常に敗者であったヘブル文字の記録が聖書を通じて世界に拡散し長く生き残ったことで、ヒエログリフや楔形文字の記録より真実と見なされるようになってしまうこともあった。
文字が無ければ残らなかったこともあれば、文字があったために文字の威力に押しつぶされて消えてしまったこともあった…

この物語の世界に生きていたとしたら、自分は文字を「守る」「伝える」側にはいなかったかもしれない。