開国まもない時代の日本人パイオニアたち/南の島を開拓した人々

なにやら古めかしい文体の本を見つけたのでちょっと読んでみた。元々の本は1967年に刊行されていて、その再刊行らしい。著者の略歴を見ると1907年となっていて、今から100年以上前! 「お、おう…」と思ってしまった。そりゃ古いわ。

南の島を開拓した人々
河出書房新社
宮本 常一

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この本は、開国間もない明治・大正の頃に、貧しかった日本をどうにか豊かにしようと南方の開拓に奮闘した人々の話を集めたものだ。

日本からお金を持って外に出ても普通の人はすぐに破産してしまう、なぜなら物価が全然違うからだ。とか、香港に出稼ぎに行ってお金を稼いで戻ってくるのを夢見て外に出て行く女性たちが多かった、とか、西洋人は日本を世間知らずの田舎者と見なしていた、とか、フィリピンなども西洋の植民地なので商売を始めるためのむ交渉相手が西洋人だった、とか、ほんの150年くらい前の話なのに、今となっては忘れられているような話がたくさん出てくる。

この中では、うちの実家の近く出身の、台湾でさとうきびからの精糖事業を起こした人だけは知っていたが、他の人は名前も知らなかった。(どこかで見たかもしれないが記憶に残っていない)

しかし、彼ら挑戦者たちがいたからこそ、その後の日本は豊かになり、戦争がいいか悪いかは別として、太平洋戦争で列強国と渡り合えるまでの力をつけたわけだ。日本が開国したときは支配されたままだった東南アジアの国々が、まだ支配された状態にあり、中国も自力ではなんともならない状態にある中で、いち早く大国への道を駆け上がった先人たちのエネルギーには素直に感心する。それとともに、これらの活動が政府に命じられてのことではなく、民間人が政府を動かしてやったことだという点にも注目する。
世の中を変えようとした人々とは、特に優れていたとか、血筋や家柄が良かったとかではない。
ただの一般人がいちばん強い。
これは、今の日本でも同じだろうと思う。民間にこそ底力があるという。


単なる日本スゲーとかの話ではなく、彼らのほんの少しの成功とたくさんの失敗を古めかしい語り口でふんわり書いた本なので、するする読めるし、何よりもとの本自体が50年以上前に出た本なので、50年前に見えていた世界観なども味わえる。

参考までに、取り上げられている人物の略歴を羅列しておく。
江戸時代の生まれの人とかもいるんだよね。


◆藤井冨伝(1828-1904)

噴火で無人となっていた諏訪瀬島の開拓

◆中川虎之助(1859-1926)

沖縄八重山の開拓、台湾でのさとうきび栽培

◆村岡伊平治(1867-1943)

上海、廈門などでの出稼ぎ日本人女性たちの支援、雇用
ニューギニアへの進出
(本ではわりと言い感じに書かれているが、Web資料だと女性たちを売り飛ばしたとも書かれている)

◆菅沼貞風(1865-1889)

経済学者。日本が南洋ら進出すべきとの説を説く。

◆太田恭三郎(1876-1917)

フィリピン(ダバオ)で開拓事業を行った。

◆原耕(1876-1933)

医者だが、家業のカツオ漁業に関わり、南洋の漁場の調査を行い、アンボイナに漁業基地を築く。

◆原捨思(1891-?)

原耕の弟。兄の死後、その事業を引き継ぐ。