午年が到来したけど、エジプトにウマの神様はいないので

あけましておめでとうございます!

というわけで、午年なので、古代エジプトネタで馬の話をしてみたいと思う。
お正月! 初エジプトネタ! エジプトネタ初め!(笑)


古代エジプト語で、ウマは「セセム」という。
これはセム語系の外来語で、ヒエログリフ的には日本語のカタカナ表記(外来語のコンピューターを「コンピューター」と表記するようなもの)で書かれている。

入ってきたのは紀元前2000年頃、エジプトの歴史的には第二中間期。国力が弱まり、国境が曖昧になっていたところへウマを連れたアジア系の移民が多数入ってきたのがキッカケだったという。一般には、ヒクソスが戦車とともに持ち込んだと考えられている。

入ってきたのが遅く、軍馬として以外の用途がなかったため、エジプトではウマが神格化されることは無かった。が、戦争では大いに活躍したらしく、壁画への登場シーンは多い。さっそうと二頭立てのチャリオットを駆るラメセス2世の図などは、エジプト本ではおなじみだろう。

こんなんとか

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ルクソール対岸のラメセス2世葬祭殿Ver。
壁画の色があせて風化してるので斜めから撮らないと線が見えづらい。
奥のほうに戦車に乗ってるラメセス2世がいて、手前のほうに踏んづけられたり殺されたりした敵がたくさん折り重なっている。

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いずれも馬は二頭立ての戦車用に使われていて、直接乗ることはなかった。壁画などで数例、直接乗っている例外が見つかるだけだという。

なぜなのか。
一つには、エジプト人はケモノに乗るという概念がなかったという可能性が挙げられる。

雑役用にロバは、ウマが入る以前から使われていたが、荷車をひかせるのではなく、背中に直接荷物を積ませていた。車輪の使用の証拠は、戦闘用の戦車が入ってくるまで皆無だ。

これは、古代エジプト人が車輪を知らなかったというよりは、ナイル河畔の暮らしでは「荷車が非効率的」だったからではないかと考えられる。大量の重たい荷物を運ぶ場合は水路を利用したほうが早い。荷車を作る木材も不足していた。
また、人が移動する場合も、獣に乗るよりは船で移動したほうが早いし確実だったというのがある。


もう一つは、馬に騎乗してしまうと武器が扱えないということ。

古代エジプト人だって、外国遠征中に騎馬兵の姿を目にしたことくらいあっただろうが、メイン武器が弓矢である以上、武器を扱うには両手が自由でなければならず、手綱を持たねばならない騎馬は出来なかったと思われる。手綱を持たずにフリーハンドで馬を駆ったフン族のような騎馬民族は別格。

古代エジプトの時代には重装騎馬兵はいないし、金属鎧もない。せいぜいが革鎧。
片手で手綱、片手で槍もって敵陣に突っ込むだけの防具は持っていなかった。
(もっとも、金属鎧があったとしても炎天下で着て戦うことは出来ませんが…。十字軍の皆さんが中東でチェインメイル着て戦おうとしてひどい目に遭うのは、それから三千年くらい後のお話)

ヨロイ着ずに突っ込むことも出来たかもいれないけど、相当な機動力がないとムリ。
古代エジプトの時代は鐙がまだ発明されていないというのもあり、騎馬民族くらい慣れてないと足ふんばれなかった説も。


古代エジプト時代のウマについての資料はそう多くないが、サラブレットなんか居ない時代のこと、ポニーくらいの大きさの、小型の赤毛馬が使用されていたと考えられている。エジプトには野生のウマはいなかったので、すべて中東方面から持ち込まれた種族だったはずだ。

用途がほぼ軍役に限られるので、飼ってるのはファラオ様くらいだっただろうか。
毎回輸入するわけにいかないので国内で繁殖させていただろうから、王家専用の馬牧場なんかもあったのかもしれない。ほかの国だと、草のない冬場は干し草が必要だったりするけど、エジプトの場合はナイルが氾濫してる夏場のほうが草無さそうだな牧草地がぜんぶ水没しちゃうし。どうやって飼ってたのかは興味ある。(笑)

らくだのように我慢が効かないので、行軍の際は常に水場と飼い葉の心配をしなくてはいけなかったのも、エジプト近辺で戦闘する際の問題になったと思われる。まぁ巧く使えれば威力は大きいけど、運用が難しい戦力だった、多用できなかった、というのは、ありそうだ。


ちなみに、エジプトに入ってきた最古の馬の証拠は、ブヘンの砦で見つかっている。

参考エントリ: ブヘンの馬/ヌビアに消えた騎手を追って
http://55096962.at.webry.info/200809/article_21.html

ウマもラクダも、定着するのが遅かっただけで、入ってきていたことは入ってきていたのではないかと思う。なにしろ、どちらも隣のアラビア半島では紀元前2000年頃にはすでに家畜化されていた。ただ前述したように、エジプトでは荷物の運搬はロバと船があれば事足りたので、とくに必要ないものとして生活方面ではあまり重要視されなかったようだ。

大型の家畜って、飼うと世話が大変だからねえ…。
よっぽど必要性が高くないと、普及しないと思うんだよね。


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<過去の干支>


http://55096962.at.webry.info/201201/article_7.html


http://55096962.at.webry.info/201212/article_5.html


http://55096962.at.webry.info/201012/article_12.html


http://55096962.at.webry.info/200901/article_4.html


http://55096962.at.webry.info/201001/article_11.html


自分も意識してなかったけど、実は毎年やってました。(驚愕)