ツタンカーメンの衣装と藍染の服 ~インドから続く藍の道は存在するのか
こないだ行ってきた、「ツタンカーメンの衣装展」で、ツタンカーメンの墓から出てきた服は藍で着色されていたこと、それもアフリカ産の藍ではなくインド藍が成分的に近いと考えられ、インド藍で再現されたことを知った。
アフリカに藍染めがあるということも知らなかったし、インド藍がどうして古代の王朝時代のエジプトで使われたのかというのも不思議な気がしたので、とりあえず幾つか調べ物をしてきた。
まず基本事項として、「藍染め」の藍というのは、ひとつの植物の名称ではないようだ。
日本で言う「藍」はタデ科の植物を指している。しかし「藍染め」は植物に含まれるインディゴという成分を使って染める製法のことで、この成分を含む植物はタデ科以外にも存在する。つまり日本の「藍染め」とインドの「藍染め」とアフリカの「藍染め」は、製法のロジックは同じだが、使っている植物が異なる。
たとえば、ナイジェリアのヨルバ族が作っている伝統の藍染め「アディレ」に使用されるのは「アイフジ」という植物のようだ。絞り染めにはキャッサバの澱粉のりを使うらしい。ナイジェリアの藍染を見ると、模様こそアフリカンだが、色合いは確かに日本のものによく似た青い色。
藍染めに使われる植物を列挙すると、こんなカンジになる。
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・中国、日本 ー 藍(タデ科)
・中米、インドネシア、アフリカ中部 ー コマツナギ(マメ科)
・西アフリカ ー ヨルバ・インディゴことアイフジ(マメ科)
・タイ、ミャンマー、中国雲南、ベトナム ー 琉球藍(キツネノマゴ科)
・インド ー インド藍(マメ科)
・ヨーロッパ ー ウォード(アブラナ科)
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これらはインディゴ成分は含むものの、染めに使われる植物が違うので、色合いが微妙に異なる。
つまり、衣装の再現にインド藍が使われたというのは、エジプトは北アフリカだが、古代エジプト時代の藍染は、アフリカ中部のコマツナギや西アフリカのアイフジを使用した色よりインド藍の色に近かった、ということ。
ただし、「インディゴ成分を含有する植物は、現在、確認されているだけでも100数種以上」とのことなので、実際に使われた植物がインド藍だったのかどうかは特定できない。インド藍が古代エジプトに入っていたかどうかまでは分からない。
あくまで、今回のツタンカーメンの衣装再現において、アフリカ産の藍よりはインド藍を使ったほうがより近い再現が出来るから使われた、というだけなのだ。納得した。
ちなみに、インド藍は現在は西アフリカでも使用されており、BC1世紀には中東やギリシアへの輸出が認められるそうだ。
今回の「ツタンカーメンの衣装展」では、ボロボロになった古代の衣装を現代技術で再現する試みが行われていたが、いくつかは製法が謎だったり、現代の技術では再現困難(熟練技術者の手作業が必要)だったりして、暫定的に、再現できるレベルで似た雰囲気のものが作られていた。藍染めも厳密にはその一つで、古代エジプトの「藍染め」は、使われた植物が何だったのかや、当時の「藍染め」の製法は謎なままなのだと思う。
何千年も昔の話だから藍染めに使われた植物が既にエジプト近辺では絶滅してるという可能性も無きにしもあらずだし。
焼き物だと、エジプトのファイアンスなんかが製法に諸説あって厳密には再現出来ないのと同じかな。
しかし古代の衣装も、知ってるつもりでも意外と奥が深い。
うちの実家のある徳島ではかつては藍染めが一大産業だったので、郷土文化として習ってたんだけど…。アフリカにも藍があるとか知りませんでしたよ。
*ネットで利用できる資料
藍植物による染料加工―「製藍」技術の民族誌的比較研究
http://www.osaka-geidai.ac.jp/geidai/laboratory/kiyou/pdf/kiyou23/kiyou23_05.pdf
*アフリカの藍染め布が見られる資料とか。
アフリカに藍染めがあるということも知らなかったし、インド藍がどうして古代の王朝時代のエジプトで使われたのかというのも不思議な気がしたので、とりあえず幾つか調べ物をしてきた。
まず基本事項として、「藍染め」の藍というのは、ひとつの植物の名称ではないようだ。
日本で言う「藍」はタデ科の植物を指している。しかし「藍染め」は植物に含まれるインディゴという成分を使って染める製法のことで、この成分を含む植物はタデ科以外にも存在する。つまり日本の「藍染め」とインドの「藍染め」とアフリカの「藍染め」は、製法のロジックは同じだが、使っている植物が異なる。
たとえば、ナイジェリアのヨルバ族が作っている伝統の藍染め「アディレ」に使用されるのは「アイフジ」という植物のようだ。絞り染めにはキャッサバの澱粉のりを使うらしい。ナイジェリアの藍染を見ると、模様こそアフリカンだが、色合いは確かに日本のものによく似た青い色。
藍染めに使われる植物を列挙すると、こんなカンジになる。
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・中国、日本 ー 藍(タデ科)
・中米、インドネシア、アフリカ中部 ー コマツナギ(マメ科)
・西アフリカ ー ヨルバ・インディゴことアイフジ(マメ科)
・タイ、ミャンマー、中国雲南、ベトナム ー 琉球藍(キツネノマゴ科)
・インド ー インド藍(マメ科)
・ヨーロッパ ー ウォード(アブラナ科)
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これらはインディゴ成分は含むものの、染めに使われる植物が違うので、色合いが微妙に異なる。
つまり、衣装の再現にインド藍が使われたというのは、エジプトは北アフリカだが、古代エジプト時代の藍染は、アフリカ中部のコマツナギや西アフリカのアイフジを使用した色よりインド藍の色に近かった、ということ。
ただし、「インディゴ成分を含有する植物は、現在、確認されているだけでも100数種以上」とのことなので、実際に使われた植物がインド藍だったのかどうかは特定できない。インド藍が古代エジプトに入っていたかどうかまでは分からない。
あくまで、今回のツタンカーメンの衣装再現において、アフリカ産の藍よりはインド藍を使ったほうがより近い再現が出来るから使われた、というだけなのだ。納得した。
ちなみに、インド藍は現在は西アフリカでも使用されており、BC1世紀には中東やギリシアへの輸出が認められるそうだ。
今回の「ツタンカーメンの衣装展」では、ボロボロになった古代の衣装を現代技術で再現する試みが行われていたが、いくつかは製法が謎だったり、現代の技術では再現困難(熟練技術者の手作業が必要)だったりして、暫定的に、再現できるレベルで似た雰囲気のものが作られていた。藍染めも厳密にはその一つで、古代エジプトの「藍染め」は、使われた植物が何だったのかや、当時の「藍染め」の製法は謎なままなのだと思う。
何千年も昔の話だから藍染めに使われた植物が既にエジプト近辺では絶滅してるという可能性も無きにしもあらずだし。
焼き物だと、エジプトのファイアンスなんかが製法に諸説あって厳密には再現出来ないのと同じかな。
しかし古代の衣装も、知ってるつもりでも意外と奥が深い。
うちの実家のある徳島ではかつては藍染めが一大産業だったので、郷土文化として習ってたんだけど…。アフリカにも藍があるとか知りませんでしたよ。
*ネットで利用できる資料
藍植物による染料加工―「製藍」技術の民族誌的比較研究
http://www.osaka-geidai.ac.jp/geidai/laboratory/kiyou/pdf/kiyou23/kiyou23_05.pdf
*アフリカの藍染め布が見られる資料とか。