イスタンブール:国立考古学博物館 はざまの時代を見る

古代東方博物館に続き、本体の考古学博物館。

まぁここが広いは広いは… 休憩場所がほとんどないのに何という広さかと。各階のホールに自販機おいてくれよ。
おまけに電気もクーラーもかけてなくて薄暗い・蒸し暑いというスゴイところである。お宝は沢山あるのに長時間見て回るのがキツい、って意味では改装前のカイロの考古学博物館と同様か。

ただ見やすいのは見やすい。エリアごとに出土品がまとめられているので、シリア・レバノンあたり(エジプトの影響強め)、アナトリア(ヒッタイト時代のもの多め・遊牧民族のものもあり)、イスタンブール周辺(ギリシャの影響強め)…みたいな感じで、いちおう理解しやすくはなっている。それでもよーわからんものは結構あったけど…。


トルコは広い、そして今のトルコの領域に積み重ねられてきた、様々な文化圏の歴史もそれぞれに長い。
イスタンブールだけとってみても、東ローマの時代から現在まで、支配者を何度も変えての千年を越える歴史があるわけで。
文化が入れ替わる、「はざまの時代」の遺物が面白かった。


◆見た目はエジプト! 中身はギリシャ! その名は…

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見た目は完全にエジプトのピラミディオンですが、文字の部分がもうエジプト語ではないんだな。
亡くなった人の墓にでも置いてあったのか。

↓エジプトのピラミディオンはこんなん

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用途的には同じだと思うんだけど、ヒエログリフ部分これギリシャ語…だよね? 被葬者はギリシャ人か、もはや古代エジプト文字と縁の切れたエジプト系の外国在住者か。出土地書いてなかったりするのでアレだけど、レバノンやキプロスあたりのエジプト人コロニーならこういうのもあったかもしれない…。


◆なぜ混ぜたし

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これもエジプトチックなのに完全にギリシャ化(ローマ化?)してます。
偽扉+供物台を2で割った感じのステラ…

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見慣れたエジプトのシンボルも、こんなふうに使われるとものすごい違和感(笑
食べ物の絵を描いてあるあたりは供物台なんだけど、これ壁面に刻んであるみたいだから用途としては偽扉(墓にもうけられる魂の出入りする扉)なのかな…?

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左下にあるサンダルの絵がほんとにサンダルなのが笑える。いや、意味は分かるんだけど。
エジプトの供物台にはサンダルは無かったよ…。食べ物だけじゃなく生活用品も描いてみようっていう、その発想は認める。



◆変貌する神々の姿

もはや原型がほとんどないホルス神、たぶん…。
いや頭が鷹って…ホルス神だよね、信じたくないけど…。

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破損の激しい棺の一部なので全体像は見えないけど、おそらくホルスの背後にイシス? がいて、死者の書の位置場面をギリシャ風に再現しているんじゃないかと…思う…んだが。うーんもう別物。持ってる杖もなんか違ぇし!


筆記用具持ってるっぽいこっちは、トト神…か?
うーん。うーん。

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と、こんな感じで、典型的な「エジプト」「ギリシャ」とかではなく、変化していく過程で色々まじった感じなのが面白いのです。今の「トルコ」の国境線の中には、かつて別々の国だった領域が組み合わさっていて、文化圏もいくつも重なっている。

最果ての地に住む日本人は、この感覚を意識することが少ないと思う。

日本から東はもう太平洋、しかも島国なので、いったん入ってきた人々がごっそり別の場所に移住するなんてこともなく、大規模な移民で人口比率が入れ替わるなんてこともなく。「日本人の祖先? 俺ら縄文の時代から土偶でおなごのヌード造るのに必死でしたけどwwww」とか冗談まじりでも言えるのは実は最果ての島国ならではなんだよね。(祖先から今の"日本"の領域に住んでいたことを疑う必要がない、先祖が遺伝子的に特定できる 等)

なんていうか、今の"トルコ人"と呼ばれていて、自分たちもそうだと思っている人たちにとって、このへんの「直接自分たちにつながらない」文化の系譜ってどう思われているんだろう、と不思議な気分になりました。