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zoom RSS 楔形文字からアルファベットへ ―文字の持つ意味

<<   作成日時 : 2012/02/13 00:10   >>

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初期のアルファベットは、ヒエログリフや楔形文字をヒントにして作られたと言われている。というより正確には楔形文字を簡略化したものが初期アルファベットというべきか。

人類史上、最初に「文字」を考案したのはメソポタミアの人々である。
当初はエジプト同様の絵文字だったが、エジプトと違い書くものが粘土板だったため、絵文字は書きにくい→葦を粘土板に押し付けて絵文字っぽい模様を書き始める→簡略化して楔形文字に という流れで一連の楔形文字が確立していく。この文字はメソポタミアを中心に、広く西アジアで使われるようになる。


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一方でエジプトは、初期の楔形文字の発想だけは受け継いだものの、その後一時期的に交流が途絶えるにあたり自国独自の方向へ文字を進化させていく。のちにエジプトも、外交文書としては国際共通語の楔形文字を使用するようになるが(例:アマルナ文書)、国内では独自のヒエログリフや、崩し文字のヒエラティックを使い続けることになる。


さて、国際文書にも使われた文字… というと、いかにも書きやすく覚えやすく、文字体系も優れていたのかというと、そうでもない。我々シロウトが見て思う「なんか小難しそう…っていうか文字複雑すぎだろJK」というのは、たぶん古代人の感覚とそう遠くはない。

文字数は数千、頻繁に使われるのはそのうち数百だったとは言われるものの、果たして慣れない書記に決まり文句を覚える以上のことが出来ていたか。完全な表音文字ではないため、異なる言語圏の国は外交文書の解読と返答だけでも一苦労だったのではないかと推測する。

王族ですら、この文字を自在に使いこなすことは出来なかったようで、こんな資料もある。


東アジアでは中国の皇帝にしろ、日本の天皇であれ、文字の読み書きが出来ることは自明の理であって、そのうえで当該の帝王が能書か、詩才があるかなどといったことが云々された。
一方、メソポタミアのみならず、古代オリエント世界では文字の読み書きができるか否かは帝王の必須条件というわけではなく、文字の読み書きは書記(役人)の仕事であった。
ウル第三王朝の王たちで文字の読み書きができたことがわかっているのはシュルギ王だけである。古代メソポタミアの帝王たちの識字率がどのくらいであったかはわからないが、高くはなかっただろう。まれに文字の読み書きが出来ると、王はそのことを自慢した記録を残していることがある。

シュメル 人類最古の文明/中公新書



この時点での「文字」は、使いやすさや覚えやすさを重視したものではなく、「読み書きできることがステータス」、つまり選ばれし者の技術という意味のほうが大きかったのだと思う。限られた人間しか読めないものだが、それでよい。むしろ、だからこそ意味がある…という位置づけだ。

しかし、商売の覚書きや契約文書を作りたい市井の人々にとってはたまったものではない。
使いやすく、覚えやすく、より多くの人が読み書き出来る簡易な文字のほうがよい。

だからこそ、アルファベットは生まれたのだと思う。アルファベットの原型は、楔形文字とヒエログリフの両方から派生した。そのうち現代使われているものは、ヒエログリフから派生した前11世紀ごろに使われていたフェニキア文字と言われる。それ以前の状態は定かではないが、原シナイ文字、または原カナアン文字と呼ばれる簡略化された絵文字からより簡略化し使いやすく改良されていったというのが現在の主要な説となっている。

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こうして必要に迫られて作られた実用的な文字は、確かにヒエログリフや楔形文字に比べると、威厳に欠け、のっぺりとして見える。しかし覚えやすく、数も少なくて済むので覚えるには遥かに楽なはずである。識字率が飛躍的に上がったわけではないだろうが、学習に要する労力も、書くのに要する手間も、格段に下がったと言える。


ちなみに、現在、世界中で広く使われているアルファベットの誕生を最初から段階的にまとめると以下のようになる。

・メソポタミア、エジプトで「文字」というものが使われはじめる。
 人類はまず、筆記による記憶という手段を発明する。

・限られた人間しか扱えない難しい文字を、大衆が簡略化して用いるようになる。
 発明された概念の下方展開。

・ローマ人がエトルリア人を征服した際にエトルリア文字を取り込み、独自にローカライズしてローマ字を創りだす。

・ローマ帝国の拡大に伴い、ヨーロッパ各地にローマ字が伝えられ、各地方の言語に対応した文字が作り出される。(ルーン文字やキリル文字もこの流れを汲む)

・現在、ヨーロッパの言語の大半がローマ字をベースにした記号で記載されている。


ヨーロッパの文明の多くがオリエント世界と結びついている中の、これもそのひとつ、というお話。



*画像はこのへんから*

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