ピラミッドがコンクリートで造られている という説の出所を探してみた。

ピラミッドがコンクリで造られてる と言ってる人を見かけて、は? なんじゃらほい? と思っていたんだけど、元ソースはもしかして、これか。

「超コンクリート」:ピラミッドの石と、米軍の最新研究
http://wired.jp/wv/2009/11/06/%e3%80%8c%e8%b6%85%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e3%80%8d%ef%bc%9a%e3%83%94%e3%83%a9%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%89%e3%81%ae%e7%9f%b3%e3%81%a8%e3%80%81%e7%b1%b3%e8%bb%8d%e3%81%ae/


…いや、まあ何ていうか。
これはこれで面白い説だと思うんだけど、ソレは無い。なぜなら、ギザの大ピラミッドの場合、

ピラミッドに使った石材の出所が分かっているからだ

ギザ台地には、ピラミッドに使われた石を切り出した石切り場の遺跡が残っているんだ。

>>過去のナショナル・ジオグラフィック番組レビューを参照


石切り場からピラミッドを見上げたところ。
距離的にすぐ近くなので、運ぶ労力はかなり軽減できる。

画像


石切り場の底から見上げたところ。
石のブロックをどのように切り取っていったかがわかるよね。

画像


石を切り取った跡があり、石を運ぶ人々の姿が壁画に描かれており、さらに石切り場の石材の材質とピラミッド本体の石の材質が合致するのであれば、特に不審点もなく、「実はあれは石ではなくコンクリだったんですよ」なんて言われてもエジプト学者がマトモに取り合うはずもなく…。


そしてもう一つ、

石を砕いてコンクリの材料を作るほうが

石を運ぶより労力がかかる



これも当たり前っちゃ当たり前の話で、古代世界に金属の粉砕機なんか無いので石を砕くのも手作業。めっちゃ時間かかるがな。(笑)

普通に考えて、石として存在するものをわざわざ粉にしてから固め直す必要がなんであるのか。近くに硬度の低い良質な石材がたっぷりあるんだから、そのまま持ってくるほうが楽じゃん。石のまま使えばいい話。
現代のコンクリだって、もともと砂として存在する川砂を使うわけだけど、エジプトにコンクリに使える砂は無いんだよ…?(※サハラは「砂漠」とはいうもののエジプト周辺は岩石だらけで、水が少ないという意味での「沙漠」のほうがイメージ的に近い)



というわけで、ピラミッドがコンクリートで造られているなどというのは、まず無い。

この説が正しければ、ピラミッド建造の多くの謎が解明される。その場でコンクリートを生成して現場で打つ方が、巨大な石の塊を動かすよりはるかに簡単だからだ。


などというのは、古代に使うことのできた道具を全く考慮しておらず、実際に作る際に何が必要になるかをシミュレート出来てないから言える話だ。このテの話に飛びつく人は、目の前のたった一つのモノしか見ていなくて、他の証拠との整合性が取れるかどうかを総合的に検証出来ていない

考古学は他の学問に比べてもパズル要素が強いんだよね。過去の情報は断片的なピースでしか見つからない。そのピースを並べて全体の絵を作っていくんだけど、ピースがすべて見つかることはないので、決して絵は完成しない。一つだけのピースから絵は作れない。既に手元にあるピースは一つもムダにしてはいけない。

今回のこのケースだと、はめこむピースの向きが間違えているとか、そもそも嵌めこむべきではないピースを採用してしまった感じ。



どうしてもこのパズルピースを使いたいなら、可能性は一つある。石と石の接合部分や、表面に近い部分の化粧石の加工に人工材質を用いたというのは、もしかしたら有り得る話かもしれない。元の英語ソースからしても、ピラミッド全体が天然石で作られていることは否定しておらず、一部だけ人工石を使ったかも? と書いてあった。

ピラミッドの芯の部分が天然の石材で作られたことは間違いないが、石切場から切り出された石の量はピラミッドを建造するのにギリギリくらいだ。よほど効率よく切り出さないと、採石量とピラミッドの体積が一致しない。なので、そこの部分に対する解になるのでは、ということだろう。

ただしこれについても、ピラミッド内部の空洞(石と石のスキマ)が場所によってはかなり大きく、ピラミッドの内部は以前思われていたほど詰まっていないのではないかという説が存在する。

私としては、わざわざコンクリなんていう面倒くさいものを利用するとは思えないので、ピラミッド内部には石を積んだ時に生じたスキマがかなり存在する、という説のほうを取りたい。隅っこからキッチリ、スキマなく石を積むことは難しい。

以前、シンキ(セインキ)にある小規模なピラミッドに残された傾斜路の痕跡を紹介した↓。

画像





この図みたいな感じで石を積んでいったんだとしたら、多方向から積んでいるぶん、どうしても石材にスキマが出来る。

中のほうはわりとテキトーに石を積んでスキマに瓦礫や砂を詰めといても、石の自重があるので崩れてくることはない。表面だけは、滑らかにして接合面もキッチリ作らないと石が滑り落ちちゃうんで接合部分で何か接着剤っぽいもの使った可能性はあると思うんだよね。

というわけで、ピラミッドがコンクリートで作られているというのは「無ぇよ(笑)」な話だが、コンクリっぽいものが部分的に使われた可能性までは否定しない、というのが私の考え。




ちなみに、古代エジプト人が石材を切り出すことに多大な労力を注いでいた証拠は多数残っている。
アスワンの切りかけのオベリスクとか、クルナの石切り場とかね。(※それぞれ、検索すれば画像や論文が出てくるよ)

古代エジプト人、ピラミッドに使用された石材よりもはるかに大きなオベリスクを切り出して実際にぶっ立ててたこともあったわけで、主要な建造材料にコンクリートを使ったという説が出てくる余地は無い。