グリーンランドに移住したヴァイキングたちの その後

ていうか「ヴィンランド・サガ」ってマンガがあるんだけど…。完結前にむっちゃネタバレじゃねーのかこれ。
いやまあヴァイキングマニアは皆知ってる話だけど。

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※文内で「集落が突然消滅」となっていますが、そんな事実はないです…
衰退していって最後に放棄はされましたが^^;




グリーンランドに移住したヴァイキングが、なぜ定着しなかったのか ということ。

「寒冷化によって暮らしていけなくなった」ことは定説としてすでに知られているので、特に真新しい説ではないです。なので、その確固たる証拠が出てきたという話なのかなー とも思いますが、なんとなく今更感が。とりあえずは初心者向けに資料まとめときました、ドウゾ。


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グリーンランドにたどり着くまでのヴァイキングの動きをおさらい。

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ノルウェーを出発したヴァイキングは、まずは近場で最初に見つけたアイスランドへ移住。ここは人が全く住んでいなかった真っさらな新天地だったので、人々はこぞってこの土地を目指します。しかし、ガンガン移住しまくったお陰で数十年後には、もはや新天地に空き地はなく、人口も飽和状態に陥っていました。

そんな時、さらなる新天地が発見されます。ノルウェーからアイスランドへ行くつもりでウッカリ航路を外れた船がグリーンランドを発見。今では極寒のこの大地に「グリーンランド」などと名前をつけてしまったのは、とりあえず良い名前をつけとけば移住希望者が増えるだろ的なノリでつけたんだ、とも言われていましたが、移住開始当初は気候が温暖で、グリーンランドという名前もあながち詐欺ではなかったんじゃないのか… と言われ始めていたり。

#昔の気候に戻ると可住地域が広がるので
#「地球温暖化」の恩恵を最も受ける国の一つだと言われてます^^;


ここからさらに西へ向かった人々が「ヴィンランド」、すなわちアメリカ大陸の一部を発見するわけですが、それはさておき、グリーンランド。

残されている遺跡から、入植地は三箇所あったことが分かっています。

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人口は、最初の移住者が5000人ほど。残されている集落跡の規模もその程度。
農場の数にして400、教会跡が17です。

農場跡からも分かるように、移住者たちは、ここに牛などの家畜を持ち込み、最初は牧場経営をしようと試みていたようです。しかし結果からいえば、これは失敗。気候が寒冷すぎて牧畜は出来ず、主食はアザラシにするしかありませんでした。

グリーンランドにはもともとイヌイットの人たちが住んでいたので、同じアザラシを主食にしたことによって縄張り争いが発生したことも、移住者たちがのちに住居を放棄するに至った原因の一つがあるかもしれません。

結局、気候が寒冷化したのちは食料にも困り、1500年代には集落は完全に放棄されてしまいました。
ヴァイキングの子孫たちが、全滅したのか、それとも何とか故郷に帰ることが出来たのかは分かっていません。


グリーンランド入植地の謎は、なぜ衰退したかではなく、考古学者トム・マクガヴァンが指摘するように、どうやって500年も持続したかということだ。グリーンランドでスカンジナビア人は、少なくとも当初、伝統的な牧畜経済を続けようとした形跡があるが、この土地はそういう暮らしに不向きだった。14世紀にグリーンランドの気候が劇的に寒冷化したとき、そういう生活様式は危うくなったというに留まらず、とても維持できなくなった。人骨を調べると、スカンジナビア人は以前のように農作物ばかり食べていられなくなり、海産物へと食物が大きく変化したことが分かる。化学分析の結果は、1300年代に魚と海生哺乳類が彼らの食物の中で急に大きな割合を占めるようになったことを示している。

―幻想の古代史(上)


* 太字の部分は引用時に加工


もとから魚やアザラシを食べていたイヌイットは気候が変化しても困りませんでしたが、牧畜をやっていたヴァイキングの子孫たちは苦労したようです。アイスランドから遠く、補給もままならなかったこともあるんでしょう。

ちなみに、アメリカに移住したヴァイキングのほうは… もっと悲惨な道を辿るわけですが…。
まあ、まあ、もう皆シッテルヨとかそんな話は抜きに、真剣にマンガ読んでる人のためにここでは黙っときます。はい。


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参考:
アイスランドやグリーンランドへの移住は、「サガ」と呼ばれる物語の形式で記憶され、その後、キリスト教とともに文字で記録するという文化が到来することによって現在残る紙媒体の記録となって残りました。


アイスランドへの移住は、このあたり

アイスランド人の書(原題:Íslendingabók)
著者:アリ・ソルギルスソン(1067-1148辺り)
成立:1120年頃
邦訳:サガ選集(東海大学出版会)


グリーンランドへの移住は、このあたり

グリーンランド人のサガ(原題:Gr(oe)nlendinga saga)
登場人物が生きた時代:カルルセヴニのヴィーンランド行きは1004-8年頃とされる
サガの書かれた時代:1375年
邦訳:サガ選集(東海大学出版会)


サガの成立から書き記されるまでに数百年経っていたり、そもそもが口伝えの「ウワサ」から物語として成立していたりするので、これらに残された昔物語がすべて史実というわけではありません。(サガは歴史ではない。ここ超重要)

ただし、実際に移住が行われ、ある程度はサガに言われているとおりの暮らしが行われていたことは、考古学資料から裏付け済みです。