フランス中世史と黒い聖母 ―黒くぬられたマリア像の秘密

【2017/5/28追加分】

最近の研究をまとめてみたところ、巨石文化がケルト人関係ないことはもちろん、そもそも島のケルトは存在しなかったと(ケルトじゃない別のなにか)いう結論になりました…。

「島のケルト」は「大陸のケルト」とは別モノだった。というかケルトじゃなかったという話
http://55096962.at.webry.info/201705/article_21.html

ブルターニュもケルト人の移住の痕跡が薄いようで、ちょっと微妙な扱いになってます。(いまケルトと言われているものは、後世にブリテン島から移住してきた人たちが持ち込んだ文化の可能性もある) ご留意ください…。


*****************

フランス中世史夜話、という本を読んでいる。

フランス中世史夜話 (白水Uブックス)
白水社
渡邊 昌美

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by フランス中世史夜話 (白水Uブックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


「夜話」の名のとおり、フランス中世史における よしなしごとを、あれこれと、一話完結型で次々と語る形式になっている。一話5ページくらいなので、電車の中などで読むのにちょうどよい。フランス中世史、そこにあるのは勇敢だが無謀で粗野な中世騎士、伝説に彩られた諸王たち、神と学問に仕えながらついぞ古代の叡智を取り戻すに至らなかった聖職者たち、或いは狡猾で調子のいい町人の世界。

ドイツ中世と似たような雰囲気だが、違うのは北欧はヴァイキングの香りのするドイツに比べ、フランスにはそこはかとないケルトの残り香が漂っているところか。フランスの地、ことにブルターニュには古代ケルト人の残した神話と伝説が、中世にもしっかりと残っていたようなのである。

そのひとつが「黒い聖母」だろうか。


「夜話」のひとつとして取り上げられている「黒い聖母」の話、短い一話完結ゆえに簡単なあらましのほか詳しい追求はないのだが、別の本で「黒い聖母」についての考察を読んだことがある。



タイトルはそのまんま、「黒い聖母と悪魔の謎」。

黒い聖母と悪魔の謎 (講談社学術文庫)
講談社
馬杉 宗夫

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 黒い聖母と悪魔の謎 (講談社学術文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



かいつまんで言えば、正体はケルトの大地母神、豊穣の象徴であった女神が聖母マリアのイメージと融合してできたものが「黒い聖母」の像なのだという。

フランスの中でも黒い聖母の信仰されてきた地域は、特にケルト人の足趾の残る場所に多いという。
中央高地はロカマドール、ル・ピュイ、シャルトル、ムーサジュ、ボーモンなどなど。

伝統的なカトリックの世界において、処女懐胎した聖母マリアのイメージは「白」だという。しかしケルトの大地母神は、大地の暗闇を表す「黒」をイメージとする。栄養分に富む大地は黒い。キリスト教的には悪魔の色でもある黒だが、それ以外の多くの信仰においては、よき作物を育てる大地、豊穣の象徴といえば「黒」なのだ。(ナイルが運ぶ豊かな土、エジプトの豊穣の大地も「黒」だった)

ケルト人の残した思い出の中、信仰され続けていた黒き大地の象徴であった大地母神の姿が、いつしか「聖母」マリアと融合し、黒き聖母になったことは大いに有り得る。だから、黒い聖母の信仰された土地では、子イエスよりも母マリアへの信仰のほうが強い。

余談だが、アイリッシュ・ケルトでは、聖母マリアの母アンナが特に信仰されたというが、その理由というのがケルトの伝統的な大地母神「ダーナ」(ダーナ神族の太母)の別名が「アナ」(ダナ→アナ)で、アンナに似ていたためだという話をどこかで読んだことがある。イエス・キリストもダーナ神族の一員に迎えてしまって、光の神ルーグ的な位置づけにしてしまえば地元民の抵抗なく布教が出来る。なるほどなぁと思ったものだ。



ちなみにロカマドールの「黒い聖母」だが、見た目がけっこうグロテスクである。
きっと、見た人は、どこがマリア様やねん。と言いたくなるだろう。

もともと現地にあった黒い女神像を、とりあえず体裁とりつくろってマリア様っぽくしただけじゃないのかな…とか、思ってみたりみなかったり。エジプトのイシス像だって、頭の上のアレ(かんむり)むしったら、マリア様と区別つかないもんね(笑