心理学やってる奴ちょっとこい、今なら首都圏買い占めネタで集団心理の論文書けるぞ!

おーいうちの出身大学の在学生ー。
大学のマスコットキャラでAA作ってる場合じゃないから。ちょっと来いよー! 今なら論文ネタと標本拾えるぞ! っと。



物流が滞っているわけでも、道路や電気といった生活インフラが致命的にやられたわけでもなく、もともとの物資は十分であるに関わらず首都圏で買い占めに走ってる人が多いという現状。
これって、教科書通りのパニック心理なんだよね。
実例として標本取っとけば、来年度卒論書く人は今から楽勝だと思うよ!

と、いうわけでちゃちゃっと筋立てとか。



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「流言」

という言葉がある。これも実は心理学用語として使われていて、以下のような定義がされている。


流言 (Rumor)

事実かどうかの確認がされないままに情報が人々のあいだを伝達されていくこと。
特に知合い関係にある人々の間を個人的な情報が伝達される場合を「うわさ」として流言と区別する場合もある。

(キーワードセレクション「心理学」より)



社会心理学の学生なら一回生の時に必ずやるであろう有名な事例として、「豊川信用金庫 取り付け騒ぎ事件」がある。

個人の推測に過ぎなかった話が、人から人へ伝わっていくうちに尾ひれがつき、いつのまにか断定的になり、本来は起こるはずのなかった出来事が実現されてしまうという現象は、この事例の他にも多数ある。たとえば、オイルショックの時に、本来不足するはずのなかったトイレットペーパーと洗剤が買い占めによって不足してしまった事象などは、今回の首都圏での買い占め事例に近い。

他にも、関東大震災など大規模な災害が発生した際には、このたぐいの「流言」が大きな威力を持ってしまった事例が過去に多々あるが、そもそもなぜ流言がこれほどまでに大きな社会現象となってしまうのか。再び引用すると、こういうことだ。


シブタニ(Shibutani.T,1966)によると、曖昧な状況を生み出す一つの要因は情報の需要と供給のアンバランスにある。人は、日常の生活の中で、様々な情報にもとづいて自分が関わる状況を定義し、それにもとづいて適切な行動を組み立ててゆく。ところが、たとえば災害時には、急激な環境変化によってテレビ・ラジオ・新聞などマス・メディアを通じて情報を得ることが困難になり、また、人々の情報に対する要求がことさら強くなることから、状況を定義するのに必要なレベルまで供給が追いつかないのである。この場合、人々は相互にコミュニケーションを行う中で自分たちの置かれた状況を定義づけしようとする。この試みが流言となって現れる。


(太字は私が強調した部分。)


…というわけで、現在はまさに上記の通りの状況となっており、より情報を欲する人々の不安が流言を発生させ、品切れ(=日常生活の破綻)が発生するという不安を増幅させて買い占めに走らせているということが推測できる。

前例として上げた豊川信用金庫の事例になぞらえると、

(1)誰かが「地震で品切れする”かも”」と発言する
(2)それを聞いた誰かが、「品切れする”だろう”」と変更し伝達する
(3)さらにそれを聞いた誰かが、「品切れする(断定)。オイルショックが再びくる」と変更しさらに伝達する

  ↓ ↓

パニック発生

と、いう感じだ。ちなみに豊川の事例では最初の「うわさ」発生から取り付け騒ぎに発展するまで数日。
今回も、自分の周囲を見ている限り地震発生から数日でスーパー前に長蛇の列ができる現象が確認出来ており、過去の事例と同様の流言メカニズムが働いていたことを思わせる。



基本的に、「流言」は社会に不安がある時に起きやすい。
中でも、インターネット接続環境がない、行動範囲が狭いなど、手に入れられる情報が少ない人ほど不安が高まりやすく、流言の増幅装置となりやすい条件が整っていると言える。



ここでもう一つポイントになってくるのが、「準拠集団」という言葉。


準拠集団(Reference Group)

人が自分自身と関連づけることによって、自己の判断や評価の形成と変容が影響を受ける集団を準拠集団という。多くの場合、家族・職場・学校・サークルなど、人が実際に所属している集団すなわち所属集団が準拠集団となっており、その集団と自己を関連づけ、そこに属する人々の規範や価値観から自らの準拠枠を形成して態度を決定する。



要するに、主婦なら主婦同士のご近所の繋がり、会社員なら同僚との繋がりが最も強く、その集団内で考え方や判断基準がある程度統一されていることが多い…ということ。

ことに、日本ふくむアジア人は、欧米に比べ所属集団への帰属意識が強い傾向にあるという研究結果がある。準拠集団は当人の意思決定をある程度左右するものだが、特に日本人の場合は集団意識が個人に及ぼす影響が大きいと言える。

と、いうことは…いったん準拠集団の中で発生した不安は、その集団を構成する各個人に伝播しやすく、集団内部で発生した「流言」も増幅されやすい、というわけで。
買い占めに走っている客層を分析すれば、買い占め心理の発生源が その客層の所属する集団である、と、ほぼ特定可能なんだ。今ならリアルタイムで観測可能ですよ!



ちなみに、所属する集団と意思決定の差を調べた研究は多数あるが、ほとんどはアメリカのもの。所得額や教育レベルと流言に惑わされる確立の研究などもアメリカでは行われているが、日本ではあまり行われていない。(もともと社会格差が小さく、そういう研究がやりづらいというのもあるだろうが…)

ちょうどいいサンプルが街中をウロウロしているので、ここは是非とも社会心理学専攻の皆に観察・分析をお願いしてみたい。


(ちなみにアメリカで社会心理学が発達してるのは、ひとつには第二次世界大戦中に心理学を応用して自国民をうまいこと操作できないかと政府が考えたからで、今ではタブー視されている人体実験に近いような心理学実験も行われていた。
ただ、それだけが理由ではなく、EUの戦火から逃れるため、またナチスドイツの迫害から逃れるため、優秀な研究者が大量に亡命したからでもある…。)



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人が行動を起こすとき、その裏には必ず何がしかの欲求が存在する。その欲求が何であるかを予測できれば、行動を停止または変更させることは難しくない。欲求である以上は、満たしてやるのがこの場合は一番簡単だろう。

今回の買い占め騒動の発端が流言にあり、その原因となっているのが情報不足から引き起こされる不安、と仮定するならば、その行動をやめさせるには不足している情報の供給というのが最も有効な手段になる。

具体的には、現在の首都圏の流通状況、物資の在庫状況などを、言葉だけでなく映像でも交えて具体的に示してやればいい。倉庫に山積みになってる出荷前のトイレットペーパーの映像流すとか、製紙工場の稼働してる映像でも流すとか。

ただ「買い占めやめて」とか言うだけじゃ無駄。
大戦中のアメリカみたいなことをしろとは言わんが、何十年も前から研究されてる大衆心理のメカニズムくらいは応用して使ってくれてもいいんじゃないかとか思ったり…。



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以下参考文献。


キーワードコレクション 心理学
新曜社
安藤 清志

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学生のころ手垢がつくほど捲ってた教科書的な本。
今の学部生が使ってるかどーかはわからんけど良本。基礎的なところは網羅されてる。
これから心理学目指してみよっかな的な人も試しにどんなことやるか読んでみるといいよー。(ただし、哲学系の心理学はこの本とは全然違ってることやってたりする…指導教授による。)





これも学生の頃はひたすら捲った本。
とりあえず、心理学系の専門書といったら「有斐閣」。



代表的な研究論文書いてくれてるから、ここからたどれば学部の卒論くらいならイケるはず。