ベーオウルフの剣 (フ)ルンティングはなぜグレンデル退治の役にたたなかったのか

ぽちぽちとベーオウルフ関連の論文を消化中。文系の学者って、本当に重箱のスミつつくような仕事だよなー、としみじみ。特にベオは原典が1種類しか残ってなくてボリューム的に限られてるからなあ…
他の場所はただ「デカい」と書かれてる怪物の描写で、一箇所だけ「このドラゴンは50フィートあった」と書かれてる、とか、そんなのよっぽどマニアじゃないと気づかないよ!! 学者すげえ。

古英語の知識は相当ナイので言語に関する部分はかなりナナメ読みで、ちょいちょい気になったところだけ。

「Why Did Hrunting Fail Beowulf?」 上智の渡部先生のやつ。
そのまんま、名剣と呼ばれていたはずの剣がなんでボス戦で使えなかったんだろう、という内容。

ベーオウルフは、怪物グレンデルとその母親の水魔を倒すため、(フ)ロースガール王の家臣ウンフェルスに(フ)ルンティングという剣を借りて水底ダンジョンに挑む。

*最初のHを発音するかしないかでカナ表記が変わる。学者/訳者によって書いたり書かなかったり。

しかし、前段階では「すごい名剣なんスよ。今まで役に立たなかったことはないよ」とさんざんもてはやされているこの剣、いざ水魔と勝負になると全然役に立たない。ベーオウルフは剣投げ捨てて素手で水魔との戦いに挑むことになる。

これって、水魔とその一族(グレンデルも含む)が、物語中で説明されているとおり「剣は効きません。ノーダメージです」っていう体質だからじゃないの? と思ってたんだけど、深読みすると理由はそれだけではないらしい。なぜかというと、最終的に水魔を殺すのは素手パワーじゃなくて「巨人づくりの剣」という、これまた剣だから。

グレンデル討伐の五十年のち、老いたベーオウルフは火竜との戦いに挑むが、ここでも名剣が役に立たず、水魔との戦いの時と同じく「頭に叩きつけたけど弾かれた」となっている。ドラゴン系の怪物も剣が効きにくかったのかもしれないが、この場合もウィーイラーフの剣とベーオウルフの短剣がトドメを刺しているので、まったく効かないわけではない。

剣が効かなかった原因は、「そういう体質だから」というよりも 剣が刺さる場所が限られていたから じゃないか…? というのが、この論文の主旨。


水魔は顎の下、ドラゴンは同じ首の下と腹に剣を刺して首をはねることでトドメを刺されているところからするに、頭頂とか心臓とか、普通の人間なら致命傷になりそうな場所は硬くて、いかな怪力ベーオウルフが名剣を振り下ろしたのでも貫通ダメージにはならないんだと。だから一撃目で失敗して剣を失ったベーオウルフは、どちらも、別の剣を使った二太刀めで勝利しているんだと。

そう言われると、思い当たることが色々と…。

「竜殺しのシグルズ」のエピソードも、竜は腹しか剣とおらんからってシグルズは穴掘って張り込みするんだったな、そういえば。別にフルンティングが巨人づくりの剣よりヤワかったからとか、そういう話じゃなかったのか。結局役に立たない剣をなんで「名剣だ」と褒めるのか疑問に思っていたけど、「それほどの名剣であっても、急所を狙わないと貫通しないほどスゴい敵だったんですよ」と、詩人がアピールしたかったんなら理解できる。
なんて奥深いんだベーオウルフ。

しかしな、ドラゴンは頭殴っても死なない、とか、ふつうの人間はわからんぞ(笑)
ウィーイラーフよく急所分かったな…。





難解だと言われるけど慣れたら面白い。
ていうか↓これの情景を脳内再生しながら楽しむと尚良い!

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ストーリーは原典とはかなり違ってますが、アイスランドでロケしただけあって風景が本格的。
衣装などの小道具も北欧ファンには垂涎もの。
「ベオウルフ 呪われし勇者」と制作時期が被ってたばかりに日本では不遇な扱いですが、片方だけ見るならこっちをお勧め!