歴史漫画「ヒストリエ」が面白い。

だいぶ前にアフタヌーンで読んで、そのまま忘れていた「ヒストリエ」。
寄生獣の人の漫画です。


ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
講談社
岩明 均

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時は紀元前4世紀。主人公は、アレクサンドロス大王の書記官をつとめたエウメネス。舞台はギリシャからペルシア。序盤でアリストテレスが出てくるものの、それ以降はあまり有名どころではない「歴史上の人物」たちが活躍する回想シーン。第二部からいきなりマケドニアの有名どころが夢の競演。

 素晴らしくニッチなところを突いてきた歴史ネタの漫画です。

絵はめちゃめちゃ巧いわけではない、が、マンガとして見やすくキャラの書き分けもよく出来ている。
絵だけきれいでストーリーないマンガはやっぱマンガとしてはダメですな…。

歴史考証が正しいのかどうかは微妙。専門家からすると甘いところもあるのではないかと思う。が、そんなことはどうでもよく、やはり物語として面白いかどうかが第一。考証にこだわってみたはいいものの、説明文が鬱陶しくてストーリーにぜんぜん入り込めない「アトンの娘」という(自分から見れば)失敗作なマンガも世の中にはあることだし。説明が鬱陶しすぎない、が、随所に入るセリフや情景描写で世界観にリアリティが醸し出せる。このバランスが秀逸。

たとえば、マケドニアの重装兵がカルディアの町を封鎖して「アッララララーイ!」と叫んでいる。主人公と別のキャラクターの間で、"これは「軍神アレスの加護を」という鬨の声なんだ"という会話が交わされる。さらっと流してはいるが、これで、以降戦場で同じ叫びを聞いたらマケドニア軍のものだということが分かるし、ギリシャ神話に出てくる軍神アレスの名を叫ぶということで、アテネもマケドニアも敵対はしているが同じ神を信仰していることが表現できている。これを、キャラ同士の一言の会話ではなく、わざわざコマの中に枠を作って説明文としてべったり書いたら、それだけで物語のテンポが落ちるしウンザリしてしまうだろう。

知識は沢山もっていても、メインストーリーの流れをとめてまで説明されては困るわけ。
このマンガがさらっと読めて面白いのは、そのへんが分かっているからだと思う。



で、このマンガは歴史の表舞台に登場するまでの経緯がほとんど分かっていないエウメネスという人物を主人公にしているのだが、そのエウメネスの出自をスキタイ人にしているところが、かなり大胆。騎馬民族ですよ奥さん。ゴート族などと同じく、どこから来たのかわからない、今もって民族系統について議論のある謎の民族の1つ。安易にギリシャ人にしなかったとこが想像力の賜物。

自分的に、人の暮らしに詳しくない時代なのだが、掘っ立て小屋に住んだり、馬で転々と移住する部族がいる一方、城壁に守られた市街に住む人々もいる… という書き分けや、衣服、小物の感じなどは頑張っている感じがした。黒海沿岸の人がネコを知らない、というのも時代的にはリアル。



ただ、ひとつだけ「ちょっとなー」と思ったのは

 アレクサンドロスがイケメンすぎるやろ

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なんだこの色白イケメン美青年は。RPGで出てきたら中盤で絶対裏切る顔じゃねーか。(笑)キャラがすごく立ってるのはいいんだが…。
主人公が寄生獣の主人公とかぶってるのと、アレクサンドロスがイケメン王子すぎるのは、きっと気にしちゃいけないところなんだ。あと帆船の書き込みが甘く感じるというのも。きっと大航海病



ところで、随所でよく見る↓コレ。ヒストリエの1コマだったんすね。

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緊迫した一幕でいきなり裏切った重臣にコレやられたら、どんな王様もその瞬間に負けを確信するね!!
そして、友人たちがドンびきしてるのに平然と串焼き食ってる主人公。このシーンは不覚にも吹いた。

この1コマだけが有名になりすぎたせいでギャグマンガだと思われてそうだけど、実際中身はなかなかハードだ。ハードなんだけど主人公が飄々としてるお陰で重すぎることもないのが良い。