ヴァイキングの「掟」例:ヨームスヴィーキング・サガ

本棚からの資料の発掘に成功、また見失いそうな気がするので資料メモがわりに。

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ヨームスヴィーキング・サガ、または ヨームのヴァイキングのサガ と呼ばれているものがある。ヨームというのは地名で、ヨームスボルグ、現在のポーランドの「ヴォリン」という場所ではないかとされている。

” ヨムスボルグを建設したのはデンマーク出身の荒くれ者、ヴィイキングの長たるパルナ・トキ。彼らの生い立ちはあーでこーで、武勇に鳴らした彼らの武勲はこーであーで。 …で、彼らの最期は… ”

と、いう感じのサガだと思いねえ。


で、ヴァイキングの法律とか北欧の法律の歴史を語ろうとするとき、このサガはしばしば言及される。なぜかというと、パルナ・トキはデンマークにもノルウェーにも従わず独自の法律をヨームスボルグで施行し、短期間とはいえ違い封建国家みたいなものを作っていたからと、具体的な法律の条文が残っているから。アイスランド・サガは、法律に冠する言及はとても多いものの、よく見られるのは「法解釈後の判例」であって、条文そのものではないから、実際どういう法律があったのかの全体像が見えにくい。法律の有効期間が長く、次第に法律が複雑化して数が増えて言ったことも内容を分かりにくくしている一因だ。
その点、施行期間が短く、数も少なかったヨームのヴァイキングたちの法律は分かりやすい。というわけ。

ただしここに出てくる法律は、歴史をかなり脚色したサガの中での話しであり、実際にこの通りの法律が使われたかどうかは疑わしい。また、使われた期間が短く、限定的な場所でしか有効でなかったことを念頭に置いて扱うべきだと思われる(つまり「ヴァイキングの法律」の代表例ではない)。


と、いうわけでヨームスヴィーキングたちの「掟」の内容である。
(谷口幸男訳/改行は、見やすいように独自に入れた。)

その後、パルナ・トキは賢者の忠告を入れて、彼らの名誉がいや栄え、彼らの力がいや増すようにヨムスボルグに法律を施行した。

法律の第一は五十才以上及び十八才以下の者はここには入隊できない。皆その中間でなくてはならぬ。

隊員でない者がここに入隊することを欲しても、血族関係を顧慮してはならない。

同じ膂力、同じ武装した人間から何人も逃走してはならない。

各人は他人のために自分の兄弟のように復讐しなくてはならぬ。

事態が如何に望みなく思われようとも如何なる場合にも恐れの言葉を発したり、危惧したりしてはならぬ。

遠征に於いて彼らが手に入れたものはすべて金目のものは大小に係わらず軍旗の下に運ばれねばならぬ。もしそうしなかったものは追放に処する。

ここで争いを起こしてはならぬ。

もしニュースがあった時は、無闇に大声で云うべきではない。すべてのニュースはパルナ・トキが知らせることになっているから。

誰も女を都市に連れ込んではならない。

又三泊以上外泊してはならない。

すでに隊員となっている者の父、兄弟、あるいは親戚の者を殺した者が入隊し、入隊後にそのことが明らかになっても、この事及び、彼らの間に起こる一切の不和にはパルナ・トキが裁きをつけねばならない。



出展元は残念ながら一般に出回ってる書籍ではなく、何年か前の神話オフの時に参加メンバーから譲り受けた紀要のコピー。ただし、谷口氏の著書に同じ部分の抜粋が載っていることを確認。資料として使う方はそちらをどうぞ。



↑この本の「第二章 サガ」のあたりが色んなサガのあらすじ・見所紹介みたいな感じ



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…しかしあれだな、改めて読み返してみると、この「掟」って 決めてソッコーで 破 ら れ て ないか…。
十八才以下はダメだっつーてるのに十二才で入隊しとるやつがおるぞ(笑)

掟に例外を認めるのもアレだが、そのために無駄な死人が出てるのもいただけない。
法律を決めたはいいが、決めた当人(パルナ・トキ)が一人で司法もやってしまってるのがマズいような気がする。