無声映画「ニーベルンゲンの歌」(1924)

本棚の整理をしていたら、よりにもよって旧約聖書の間から出てきました。映画紹介用のパンフ。
そんなものを栞に使ってはいけない…。

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これが何かと申しますと、マツダ映画社さんが出している冊子で、けっこう前に注文して送っていただいたものです。
無声映画で作られた「ニーベルンゲンの歌」の情報が欲しくて探し回っていたら、日本で上映しているところがあるというので食いついたわけですよ。いつか見たいなあ見たいなあと思いつつ、機会もなくそのまま忘れてしまっていました。


監督はフリッツ・ラング(1890-1976)。製作は1924年。第一次世界大戦後、第二次世界大戦の前までに作られた映画、つまりドイツでは愛国主義バリバリの時代。勇壮なニーベルンゲン伝説は愛国心を煽り、ドイツ民族の誇るべき伝統扱い。なので、この時代にはお金をかけた北欧神話や伝承関連の作品がたくさん作られています。

で、この映画、原典同様に前後編。キャストはこのような感じで。
…監督以外、有名な人なんかどうかすら分かりませんが…

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後編のクリエムヒルトは怖いマジ怖い
夢に出てきそうな形相で復讐誓っとります。エッツェル(アッティラ)王よ、あんた本当にこんなの嫁に欲しかったのか。

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映画自体を見ていないので、このパンフにあるあらすじのみでの判断ですが、かなりザックリとストーリーを端折っているみたいです。以下、あらすじのザックリしたところ転載。

ネザーランドの王ジークムンドは、王子ジークフリートを誉れ高い刀鍛治ミーメの許に修行に出した。数年後、立派に業を修めた王子はバーガンディのグンター王の妹クリームヒルトの噂を聞くと。すぐに会いに行く決心をした。
ウォーデンの森の奥で火龍に遭遇したジークフリートは名剣をふるって闘い、火龍の血を口にすると、不思議にも鳥や獣の話が解るようになった。そして火龍の血を全身に浴びると不死身になれると聞き試してみるのだが、その時一枚の葉が背に舞い落ちて僅かに血のかからない所が出来てしまった。
ウォーデンの森に入ってから何ヶ月も経ち、ニーベルングの族長アルベリッヒの命と引き換えに財宝を手に入れ、更に諸国を征服して十二カ国の王を家臣とした。勇敢なヒーロー、ジークフリートの話は遠く離れた宮殿に迄伝わった。
城でクリームヒルトを見初めたジークフリートは妻にと所望するが、重臣ハーゲンから王が愛するアイスランドの強勇の女王ブリュンヒルデを王の妃に迎える手助けが出来たらと難問を突き付けられる。ジークフリートは見事にこれを果たし、二組の婚礼が開かれた。
ジークフリートを慕っていたブリュンヒルデはクリームヒルトと争い、怒ったクリームヒルトが夫から口止めされた秘密を口走った為、こりを怨むブルュンヒルデは王にジークフリートを殺せと囁く。王の命を受けたハーゲンがクリームヒルトを欺き、ジークフリートの不死身の秘密を聞き出し、殺害してしまうのだった。これを知ったブリュンヒルデは愛情と悔恨の中でジークフリートを追って自害する。卑劣な暗殺を知ったクリームヒルトは、ただ静かに呪いと復讐の誓いを立てるのだった。


ネザーランドは「ネーデルラント」、つまり「ニーベルンゲンの歌」と同じ現在のオランダ。ブリュンヒルデがアイスランドの女王になっているところなどもそのままです。実の両親が健在なのもただしミーメのもとに鍛治修行にいくところ
この筋書きだと、ジークフリートは最初からクリエムヒルト一筋に見えます。記憶を失わせる魔法も働いていない。ブリュンヒルデがジークフリートを愛するようになる経緯が不明なので、横恋慕みたいにも見えますし、自害に至る動機がわかりません。

この筋書きだと、ブリュンヒルデはただ自分の名誉を守ることだけ考えてジークフリート暗殺を命じ、ジークフリートが殺されて名誉が守られたあとは生き残る、という展開のほうが自然だと思うんですが…
どうなんですかね。


続いて後編へ。

クリームヒルトは夫ジークフリートを殺したハーゲンへの復讐を誓い、ニーベルングの宝を資金に、亡き夫を慕う旧家臣たちを集めて日夜好機の到来を待ったが、ハーゲンはラインの川底に財宝を沈めてその禍根を絶った。
その頃、フン族のアッティラ王は武将リューディガー伯を使者としてクリームヒルトの兄ギュンター王の許に、クリームヒルトとの結婚を申し出た。一族は反対したが、復讐を遂げる手段としてクリームヒルトはこれを承諾した。
間もなくアッティラ王との間に男子が誕生した。喜んだ王がクリームヒルトの望みを叶え、兄弟たちを城に招いて盛大な祝宴を開いた。クリームヒルトは必ずハーゲンも一緒に来ると信じ、フン族にハーゲンを襲わせるが、逆に幼い王子が殺されてしまう。ひたすら平和を望んでいたアッティラ王も憤怒し、壮烈な戦いを繰り広げる。
リューディガー伯はブルグントの剣の下に自ら命を捨てる。ギゼラーは姉クリームヒルトに争い中止を叫ぶのだが、ハーゲンの首を落とせとフン族を指揮するだけだった。やがてアッティラ王の命令でブルグント一族が立て籠もる王の館に火が放たれ一族は全滅した。
最後までギュンター王を護って生き残ったハーゲンは、王と一緒にクリームヒルトの前に引き出された。宝の所在を追及すると、王が生きている間は絶対白状しないと言うハーゲンの前で、クリームヒルトは兄ギュンター王を殺してしまう。それでも口外しないハーゲンの首をバルムンクの名剣で刎ね、亡き夫ジークフリートの血が染み込んだ土の塊にハーゲンの血を吸わせた。こうして復讐を果たしたクリームヒルトはジークフリートの後を追って自ら命を絶った。彼女の死骸を抱き儚い宿命を嘆くアッティラ王の姿が哀しかった。


「もう一人が生きている限りは、宝のありかは教えない」と言うのは「エッダ」ではグンテル(ギュンター)の役目。ハーゲンの心臓が持ち出され、自分が最後に残ったことを知ると、宝のありかはもう誰も知らない… と満足する。
クリームヒルトが自害するのもエッダの筋書きだけど、エッダでは入水自殺をしようとして失敗、三人目の夫のもとへ流れ着くことになっています。「ニーベルンゲンの歌」だと、ハゲネ(ハーゲン)の首を自ら刎ねて復讐を果たしたクリエムヒルト(クリームヒルト)は、その邪悪な行為のためディエトリーヒ(ディートリヒ)の部下・ヒルデブラントに切り殺されることになっています。
…ていうか、キャスト名には「ディートリヒ」という役名があるのに、この筋書きの通り物語が運ぶとするとディートリヒの活躍する場所ないですよね…。

夫の血の染み込んだ土というモチーフはポピュラーなニーベルンゲン伝説の物語の中には見当たりません。
この筋書きだと、原典よりクリエムヒルトの豹変ぶりが浮き立ちそうにも思えます。「エッダ」の猛々しいクリエムヒルト像も混じっていそうなので。



今回ご紹介したパンフは、クラシック映画ニュース のバックナンバーのところから購入できますよ。


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