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zoom RSS NHKスペシャル「人類誕生」1-2集、現状としては無難な作り

<<   作成日時 : 2018/06/08 00:10   >>

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NHKスペシャルの「人類誕生」1-2集を見てきた。思っていたより頑張っていて無難なつくり。現時点では、こういうかんじでいいと思う。ちょっと話作りすぎだなぁというところもあったが、演出としてならしょうがないかなというレベルだし、無理に盛り上げようとしたり頭の悪そうなコメントを出してくるゲストもいなかったし、胃が痛くならずに見られたのでとても良かったです。

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ただ300万年くらい前の人類がヒョウやハイエナと戦ってるのは「??」という感じではあった。似たような動物はいたんだろうけど、ビジュアルが現在生きている動物すぎた…w

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公式
http://www.nhk.or.jp/special/jinrui/


と、無難な内容ではあったのだが、今回の番組の内容は十年後には変わっているだろう。

というのも、番組内で流されていた内容は、ここ十年ちょいくらいの間に猛烈な勢いで書き変わってきた部分で、今もリアルタイムで書き変わりつつあるからである。新たな発見により、旧来の説の矛盾も見え始めている。そのうちの自分が追いかけられている幾つかの要素を挙げる。


●人類は約20万年前にアフリカ東部で生まれた

主流の説だが、最近になって「現生人類の最古の化石」と見られるものがアフリカ北部のモロッコで発見されている。年代は30万年前である。なんと一気に10万年も遡る可能性が出てきたのだ。しかも、アフリカ東部ではなくジブラルタルを渡ればすぐヨーロッパに入れるモロッコで見つかっているあたり、人類の起源地か、進化の筋書きか、どちらかを見直さなければ辻褄が合わなくなってしまう。

この発見の妥当性も含め、議論されている内容である。


●並存していた人類はネアンデルタールだけではない

現生人類の遺伝子解析の結果から、交配していた確実な別種の人類としてデニソワ人がいる。さらに別の人類の痕跡もあることから、ホモ・サピエンスと並存していた他種の人類は何種類もいたことが判ってきている。
さらに、交配していないものの最近まで共存していた可能性が高いものとしてホモ・フローレンシスなどもいる。


●ネアンデルタールとの交配は「出アフリカ」の後の出来事ではない

ネアンデルタールとの交配は出アフリカの直後、とされているが、これは言い方が微妙。

人類がアフリカを出たコースには二種類が考えられる。エチオピアあたりから航海を渡って海をはさんだアラビア半島に渡るのは、確かに「出アフリカ」なのだが、エジプトあたりからシナイ半島を経て近東にいたる道は陸続きなので、「出アフリカ」ではない。そもそも大昔に国境はなく、アフリカとアフリカの外という区別もないの。ホモ・サピエンスは特に意識もせず陸路で勢力を広げ、いつの間にか近東にも分布するようになっていたはずだ。
その時期に交配が行われていた、というのなら、「出アフリカの直後」ではなく「勢力圏が近東に広がった頃」という言い方が妥当。

「出アフリカ」という言い方自体、紅海経由でアラビア半島に渡ったのが最初だったと考えられていた頃の用語なので、今の陸続きルートもある説だと、使わないほうが無難だろう。


●ネアンデルタールが素朴な旧石器しか作れなかったかどうかは不明

脳のおおきさは変わらないとか、アクセサリーを身につけていて意外と賢かったとかいう内容を放送しておきながら、同じ番組の中でネアンデルタールの石器作り能力の低さを語るのは矛盾しているが、そこに現在の学説のゆらぎが見えると思った。単純な道具しかなかったら、複雑なアクセサリーを作ることは出来ないんですよ。なのでネアンデルタールのアクセサリーを認めるのなら、旧来の、作りが雑な石器は全部ネアンデルタールのだろ! という見方が怪しかったことを認めないといけない。

石器に作り手の名前や種族は書かれていない。現在までに発見されている石器の分類は、ネアンデルタールが粗暴なおばか種族だったという過去の思い込みに基づいて行われているので、実は間違ってる可能性もある。

また、ネアンデルタールが少数で行動していたから文化や技術の伝播が出来なかったという考え方も、会話能力があった説をとるのなら「会話で伝えろや」という話になるのでちょっと微妙だ。

この部分は、おそらくこれから書き変わっていくはずだが、どう書き換えたらいいかまだよく分からない部分。




…という感じなので、今回の番組の内容は 現時点の暫定的な答えとしては無難 と考えておいたほうがいい。

多くの書き換えが発生している、勢いのあるジャンルならでは、というところだ。

(あと細かい話だと、人類の系統樹もあれ諸説あるはずだから、人によっては納得いかないやつだろうなと)


*****

というわけで、1集、2集はなかなかよかった。
ここまでは良番組だが、3集は内容的に、作り方を間違えると1集、2集のクオリティから大きく下る可能性がある。

一番の難点は、日本に最初に人が移住してきた時期がはっきりしないこと。日本の考古学者は、旧石器の鑑定が不得意なのである。約20年前、前期旧石器捏造事件、いわゆるゴッドハンド事件の余波を受けて多くの発見が撤回され、それ以降そのジャンルの発展がとどこおっているように受けられる。

また、現生人類が日本に渡ってきた年代の推測も、4万年以前まで遡りつつあり、どこまで盛り込むかによって全体の構成が変わると思う。

それから、予告に船をこいでいる人がいたが、あれはエンドクレジットにも入っている科博のやっているプロジェクトで、日本に南から移住してきた最初の人々が海路をとったはず、という仮説に基づいて行われている「航海の再現実験」と称するモノである。

しかし当時は陸続きもしくは浅い海だった可能性もあり、そもそも航海が必要だったのかどうかも分からない。何も物証がないので、仮に船を作っていたとしてもその船の規模や構造の再現すら出来ない。少なくとも確実に言えるのは、現代の海を航海しても数万年以上前の海路の証明は何一つ出来ないということである。いまやっている「実験」と称されるものは、たんなる物好きのパフォーマンスであり、科学的なものではない。

しかも、最初の移住者はその後いったん絶滅して、現在の住人には繋がっていない可能性が高いので、あの映像は「人類誕生」のテーマの中に入れてはいけない。入れるとしても、尺をとればとるほど全体のクオリティは下るだろう。そういう、眉唾としか言いようが無いシロモノである。

ある意味、3集では科博の良心が試されるような気がしている…。

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