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zoom RSS サブタイがしっくりくる内容だった、「アナトリアの風−考古学と国際貢献−」

<<   作成日時 : 2018/04/10 00:10   >>

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サブタイがぴったり内容と当てはまる本だった。考古学って結局、何をどうしたい学問なの? とか、別になんも役に立ってないよね? みたいな話に、一定の答えを出していると思う。

アナトリアの風―考古学と国際貢献
リトン
大村 幸弘

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著者は長年ヒッタイトの鉄を追い求めてきた研究者で、1985年以来ずっと発掘調査が続けられているトルコのカマン・カレホユツク遺跡を舞台にした、発掘の日々の中で起きたことなどを書いた随筆風の本。研究内容の発表の本ではなく、発掘現場を取り仕切る困難や、現地で博物館や研究拠点をつくる際の苦労の話になっている。

苦労の話と言いながら、あまりグチは書かれていない。ただ、本当に苦労したんだなぁということが判る。そして、そのたびに色んな人に助けられている。なるほど発掘プロジェクトはこういうものなのかと思いながら読んでいた。

中にはトルコならではの事情も多く出てくる。
現場のある村には仕事が少なく、発掘現場の手伝いが貴重な現金収入になっていること。学業優秀な女子もいるがお金が無くて退学せざるを得ないこともあるので現場の手伝いを学資にあてたいと校長に相談された話。発掘現場で長年働いていた若者が、結婚資金を稼ぐために異国に出稼ぎに行かざるを得なかったこと。徴兵されてシリア国境で働いていた仲間の帰還。などなど。これらは、現場で長年仕事をしてないと出てこない話だろうと思う。

そして、たびたび出てくる「欧米式の発掘に従う必要はない」という話も、何となく判るような気がした。成果主義で、現地の人々を無意識に見下し、あまり地元との関係を重要視しないというやり方。植民地支配が当たり前だった頃の列強国のやり方は、わりと近代でもそこかしこに見ることが出来る。それじゃダメだということである。

トルコでの、地元に根ざした遺跡との付き合い方は、アンデスのクントゥル・ワシ遺跡での日本隊の発掘と似ていると思う。地元民にまず遺跡の価値を説明し、地元民を雇うことで、地元の人たちに遺跡保護の意識を持ってもらおうとするやり方だ。クントゥル・ワシと同じように、カマン・カレホユックにも多くの日本の人たちの支援で博物館が建った。この博物館が長く地元に愛されるものであって欲しい。


で、研究内容の話はあんまり出てこなかったのだが、「ヒッタイトの暗黒時代」について少し触れられている部分は面白かった。今まで暗黒時代と切り捨てていた時代も、丁寧に掘ってみたら別に暗黒じゃないというか、よそから来たらしい文化が、破壊されたヒッタイト帝国時代の層の載っているという。また、著者が長年追い求めてきたヒッタイトの「鉄」について、当初の仮説を書き直さなければならないかもしれない、と書いていたのが興味深い。

当初は、発掘しているカマン・カレホユックの遺跡をヒッタイトの秘密の鉄製品工場で、厳重に管理されていたのだろうという説だった。しかし調査が進むにつれ、どうもここは地方都市に過ぎなくて、それほど厳重管理されていた場所ではなさそうだということになった。しかも鉄製品は、ヒッタイト帝国に組み込まれる以前の層からも出てくる。

ヒッタイト人が来る前から製鉄はアナトリアに技術としては存在したのではないかということ。
ヒッタイトの鉄は、限られた場所で生産されていたのではなく、もう少し広い範囲で作られていたのではないかということ。

これは近年の、西アジアの鉄器時代の始まりに関する新しい議論とも一致する。以前出た本の内容も、いずれ大きく書き変わるのだろう。著者の新しい研究書が出るのが楽しみである。


****

以前出た本がこれら。
ここから書き変わってくるわけですね…。

鉄を生みだした帝国―ヒッタイト発掘 (NHKブックス 391)
NHK出版
大村 幸弘

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あとこの先生の本ではこちらもめっさ面白いのでオススメ

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