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zoom RSS ホモ・フロレシエンシス発見を巡る人間模様 〜視点を少し変えてみれば

<<   作成日時 : 2018/03/21 00:10   >>

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いつものアレで何となく手にとってみた本がこちら、今から約15年前に発見された新種の人類、「ホモ・フロレシエンシス」、通称「ホビット」の、発見に至る経緯と、その後の騒動について、当事者が出した本である。

ホモ・フロレシエンシス〈上〉―1万2000年前に消えた人類 (NHKブックス)
日本放送出版協会
マイク モーウッド

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ホモ・フロレシエンシス〈下〉―1万2000年前に消えた人類 (NHKブックス)
日本放送出版協会
マイク モーウッド

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「ホビット」は、インドネシアで発見された。たった1万年ちょっと前までホモ・サピエンス、つまり我々現生人類と同居していたとということから、発表当時、大きな論争を呼んだ。何しろこの人類はその綽名の示すとおり体格が小さく、大人でも現生人類の半分くらいしかない上に、脳のサイズもとても小さいからだ。今でさえ脳の大きさこそ賢さであると考える風潮が強いが、当時はもっと極端で、「脳が小さいのだからホモ族に入れるべきではない、もっと原始的な類人猿のはず」という意見もあったという。また、現生人類と全く別の人類がつい最近まで同時並行で存在していたという事実も、当時の常識からは大きく外れていた。

ここまで「当時」という言葉を沢山使ったが、現在では、この本から多少、説が変わっているところがある。また、今も年代や系統樹上の位置づけには異論がないわけではない。たとえば、最近の研究では、ホモ・フロレシエンシスが姿を消したのはもっと前で、5万年位前ではないかという説も出てきている。決め手に欠ける理由のひとつは、彼らが現生人類と出会ったかどうか分からないことにある。数万年前まで生きていたなら現生人類との「共生」期間が存在するが、5万年以上前であれば存在しなくなる可能性が出てくるわけだ。

と、いうわけなので、純粋にホモ・フロレシエンシスに関する情報が欲しい場合は最新研究を探しにいったほうがよく、この本の内容は古過ぎてあまり役に立たない。この本を読んで観るべきところは、常識から外れる発見があった場合のほかの学者たちの許容の仕方、また表に出てくる報道の裏にあった駆け引きや人間関係の軋轢の部分である。

まず、発見したのはオーストラリアの学者、発見地がインドネシアであったことがポイントになってくる。
そして、この本を書いたのが発見したオーストラリアの学者で、翻訳して出版したのがオーストラリア・インドネシア双方の学者と関係のある日本人学者だったことを考慮しよう。

オーストラリア人の学者は、なんもわかってない現地の権威がしゃしゃり出てくるのがジャマだと書いている。
しかし日本人の学者は、あとがきで裏話として、悪役扱いされた現地の権威の学者は、植民地時代のようによそ者の白人が自国の遺物を持っていくのがイヤだったと語ったと書いている。

立場と視点を変えると全然違う話になるのだ。


…この、「全然違う」部分を本文で見てみよう。

オーストラリアの学者視点

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日本の学者視点

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まぁなんていうか、どこを切り取るかだけで全然違う印象になるもんだなぁ、というのが判ると思う。実に面白い。

オーストラリア人学者はどうも、自分でも意識しないままそれとなくインドネシアの学者をばかにしている部分があるように思う。それは日本の学者の訳を通してさえうっすらと感じられるくらいに。結果的に、学説としてはオーストラリアの学者の行ったことのほうが正しかったわけだが、そうだとしても、現地の学者からすれば「なんでウチの国で発見されたものをよその学者に発表されて手柄ももってかれなきゃならんのだ」と思うところだろう。気持ちは判る。
これと同じ構図の対立は、インドやエジプトの発掘でもしばしば起きている。


最後に起きた世界大戦で日本は負けた。そのため戦争責任だのなんだのと悪者にされることはよくあるが、ぶっちゃけ、それ以前の時代のヨーロッパ列強による植民地支配の非道さも大して変わらんのである。
というか考古学などの場合だと、このインドネシアのケースなんかでもそうだが、何でもかんでも根こそぎ奪っていったヨーロッパの植民地支配への憎悪と警戒のほうが強いことはよくある。(何しろ日本はすぐ負けてしまったので、長年に渡る支配と略奪を繰り返したほうが悪い記憶が強いのは当然なのだ…)

これも政治、および近代の歴史が現代まで尾を引いたケースになるんかなぁ、と思いながら読んだ。
前にも書いたけど、考古学は人文学の中では政治の影響を受けやすいジャンルなんですよ。

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