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zoom RSS 議論物件は多数あるけれど…イスラエルにおける「遺産マネジメント」とは

<<   作成日時 : 2018/02/17 00:10   >>

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誰かまとめてくれないかなーと思ってたらもうあったよ、ヤッター! ということで早速読んでみた。イスラエルにおける「遺跡マネジメント」、簡単に言うと、どの遺跡を国立公園にするかとか、どういうふうに公開するかとか、管理団体はどこでどういう組織が動いているのかとか、何を世界遺産として申請するのかとか、そういう話のこと。

イスラエルの文化遺産マネジメント
慶應義塾大学出版会
岡田 真弓

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日本との比較があまりなかったし、個々の遺跡について細かく見てくれているわけではなく俯瞰的な内容なので少し物足りないところはあった。また最近になってイスラエルがユネスコを脱退しようとしてたりして、状況は刻々と変わってきているので、追記が必要な部分はあると思う。
が、それらを差し引いても、イスラエル建国から今までの流れを追うのには十分参考になった。全体的な視点なので、細かい部分は別途調べて補足すればいいと思う。

正直、もうちょっとツッコんで欲しかったなぁというところは多々ある。たとえば、イスラエルに住む人口比率についてとか。イスラム教徒も住んでいるから多重構造の国だ、という話が出てきたのだけれど、そのイスラム教徒の住んでいる地域と職業は、おそらく限定的なんじゃないかと…。遺産管理に関わっているのがほとんどユダヤ教徒なら、多重構造とはいえないし、少なくとも本の主題になっているマネジメント部分においては一枚岩な気がする。

*****

さて、イスラエルにおける遺跡マネジメントには、他国にはない大きな(そして独特の)問題がいくつかあり、しばしば指摘されている。
端的にいうと、それは以下のような内容だ。

・聖地エルサレムをはじめとする、帰属問題が決着していない遺跡が多数ある
・支配の正当性や、イスラエル民族のアイデンティテイを示すために遺産を利用してしまっている面がある


しかしこの図を見るに、どうもイスラエルさん、エルサレム以外で実効支配してる地域はぜんぶ自国のものとして遺跡の管理しちゃってるっぽい。まあね、"実効"支配だからね。実質ここ調査できるのイスラエルさんだけだからしょうがないね…。

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ヨルダンやパレスチナとの間でもモメているエルサレムだけは、イスラエルのものと認められておらず、もとの所有国ヨルダンが遺産申請して登録されたあとは、ユネスコの世界遺産の中で唯一、所有国の存在しない物件として宙に浮いているようだ。

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遺跡が「民族意識を高め、国家の社会的な存在理由と正当性を誇示する」ために使われた例は、なにもイスラエルに限らない。他国であっても多くがそうであり、自然な流れである。しかしイスラエルの場合は、過去長きに渡り旧約聖書を史実として扱う学派の影響を強く受け、遺跡の意味づけや研究を行ってきたという経緯がある。それが現在、「聖書考古学のありかたを見直すべき」と言われていたりする部分だ。

今もイスラエル内は決して一枚岩ではなく、国威のために遺跡を利用しようとする派閥があったり、キリスト教時代やオスマン時代の遺跡も保護して観光客誘致に力を入れている組織があったりと様々なようだが、おそらく他国に比べて遺跡=民族の歴史=国家の意義、とする流れは強いと思う。この本では、遺跡の政治利用についても章を割いて書いてくれている。ナショナリズムと文化遺産は、切ってもきれない関係にある。遺跡や古代文明に興味を持つ人には、政治的な視点も持っておくべきだと思う。



本書は分類としては専門書で、わりと淡々と書かれているので一般向けとは言いがたいのだが、文化遺産とか遺産管理とかに興味のある人には向いていると思う。

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