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zoom RSS 今はもう行けない地域のありし日の旅日記。「サハラ砂漠 塩の道をゆく」

<<   作成日時 : 2018/01/08 00:10   >>

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アフリカで古代王国が栄えた地の一つ、マリ共和国に今も続く塩交易のルートを旅した記録である。



ただしマリは現在、外務省データでほぼ真っ赤、つまり「速やかに待機すべし」とされている危険地帯である。著者が旅した頃も外国人の誘拐事件などが相次ぎ、決して安全ではなかったようだが、今はさらに悪化している。

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この本は、著者が約10年前に塩の鉱山タウデニと中心都市トンブクトゥを結ぶ、岩塩のキャラバンに魅せられ、らくだの塩キャラバン「アザライ」とともにタウデニまでのルートを往復した際の記録である。

本の内容としては一般人が書いた旅ブログっぽい雰囲気のもので、珍しいとこ行ってるなってこと以外には特に何もない。写真も、プロ写真家のものに比べるとシーンのチョイスや構図がいまいち。が、今はもう行けない場所を日本人が旅した資料としては価値があるかもしれない。何しろ、このルートが実質もう辿れないので、探しても資料が出てこないからだ。

ヒトが生きるために塩は必須である。砂漠の国に暮らす人々は、かつて黄金と同等の価値で取引されていた塩をキャラバンから手に入れる。塩水の溜まっていた湖の底に沈殿し、岩となった塩の板が、人々の命をつなぐものとなる。

旅は決して順調では無い。部族間の確執、ラクダの扱いの難しさ、らくだの餌となる草や水の確保、盗賊や武装集団の襲撃の危険。塩辛い塩の鉱山の水を飲んでいると、大抵の労働者がすぐに死んでしまうという過酷さ。
はぐれたらくだは、水のにおいを嗅ぎつけて井戸までは辿り着けるという。が、人がいなければ井戸から水をくみ上げられない。だから井戸の周囲には、はぐれラクダの骨がたくさん転がっているという。砂漠は、命を試される場所だ。塩も大事だが、水もまた生命をつなぐために必須のものである。それが限られた場所でしか手に入らないのが、この手記の舞台である。


面白い本ではあるが少しインパクトが甘いなと思うのは、本のテーマが「自分のかつての旅の思い出」でしかないというところにある。他者に訴えかけるものは弱い。単純に、出会ったもの起きたことを整理せずに書いているだけなので、そこに個人ブログっぽさを感じる。

また、観察された内容の説得力が欠けるところもあった。たとえば、重たい岩塩を積んでキャラバンに参加したらくだは、板で背中がこすれ、ゴール近くになると背中の皮膚が裂けて血が出ていることもあるという。その写真が無い。文章の描写としても、背中のどのへんなのかとか、どのくらいの数のらくだがそうなるのかとかが良く分からない。結果的に、らくだにとって塩の鉱山との往復がどれほど過酷で命がけなのか、という部分の書き込みが弱くなっている。人間についての描写と同じくらい写真と文章で表現してもよさそうなのだが…。

文章の行間を読んで、他の本の知識とあわせると何となく全貌が掴めて大変な旅をしたことがわかるのだが、そうでないと単に準備不足で遭難しにいっただけのようにも見えてしまう。ちょっと勿体無いかな、と思った。


なお本の中で一番「えっ」と思ったのは、地元のキャラバンにとって過激派アルカイダは友達、ビンラディンは英雄という扱いになっていることだった。現在のマリが危険地帯扱いになっている理由は、アルカイダの活動拠点があり、外資企業などが頻繁に襲撃を受けているからでもある。そのアルカイダが地元民にとっていいものというのはどういうことだろう思った。

マリはかつて、フランスに植民地支配を受けていた。現在も支援と称してフランスの影響力は強い。もしかしたら、そうしたかつての支配者たちに逆らって地元民の安全を保証してくれるものがいわゆる「過激派」なのかな、とも思ってみた。

なお、マリを含むサハラで活動するアルカイダについての情報は、公安調査庁がネット上に公開してくれているので、参考までに。主に欧米系資本が標的。IS系とは同調していない。
http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/AQIM.html



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