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zoom RSS 「日本の科学論文数が減って世界6位に!」というニュースが色々おかしいのでツッコんでみる。

<<   作成日時 : 2018/01/26 00:10   >>

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なんとなく目にとまった、読売オンラインの記事。最近このテの記事が多いけど、書いてる人は何も考えてないんだろうな…。

科学論文数、日本6位に低下…米抜き中国トップ
http://www.yomiuri.co.jp/science/20180125-OYT1T50061.html

まず前提としてここが間違っている。

"中国を始めとする新興勢力が研究開発費を大幅に増やして力をつける一方、日本はインドにも抜かれ、存在感を低下させている。"


論文数と科学研究費用は必ずしも比例しない。国が出す費用を増やせば論文数が増える、というロジックの根拠が不明。
ちなみに、この記事の中でも触れられているNFS(National Science Foundation)が出しているデータでは…
https://www.nsf.gov/statistics/2016/nsb20161/uploads/1/1/overview.pdf

画像


こんなかんじ。使ってる費用と論文数が必ずしも比例してないんだな、ということは判ると思う。


そして、発表されている「論文数」は、内容のレベルについて不問で数だけカウントすると、当然ながら低いレベルでも乱発したほうが多くなる。そして、国際共著である場合は、1本の論文でも複数の国にカウントされたりする。たとえばイギリスとドイツの研究者が共著で出した論文は、それぞれの国に1カウントである。日本は単一の研究機関で研究されていることが多く、国際共著が少ないのが特徴のため、日本の研究者5人が関わった1本の論文は、日本の分1としてしかカウントされない。つまり、論文数とその研究分野の新興、技術レベルなどは、必ずしも一致しない。

また、グラフはなぜか欧州連合(EU)を一纏めにしているが、本文中では「16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位」とドイツだけ別個に扱っているのもよく意味が分からないのだが、たぶん本文との整合性をあまり考えずにNFSのグラフを加工してこうなったんだなと元データを見て思った。ついでに言うと、宇宙やバイオや科学や医療などを全部「科学論文」と一緒くたにしてしまっているのも微妙な点で、よく見ると国ごとに得意分野は異なる。どの分野を延ばしたいのか、今ある強みは何なのかも考えずに、なんとなく「科学論文」でまとめた上で「もっと数を増やすべき!」などと騒ぐのは、少々お寒い記事である。

日本の国際競争力が低下している、とみられる点は他のデータを見てみても確かにそうなのだが、新興国が伸びてきているのでシェアが下るのは当然の結果である。「相対的な低下」と「絶対的な低下」の違いである。他が上がれば相対的に順位が下るのは当然なので、大事なのは単なる数字なのか、それとも中身か、という視点から考えたほうがいい。



さて、この記事の言いたいところは「日本はもっとカネを出して科学研究をさせろ」だと思われるのだが、既に上の方に描いたとおり、カネを出したところで論文の数は増えない。それは既にデータとして見えている。また、論文の数だけ水増しすれば研究していることになるという前提からして思いっきり間違っており、粗製乱造されても意味がない。

論文の質で見るのであれば、引用数がTOP1%に入る「Top1%シェア」と言われている数値で見るのが妥当だろう。
これを見ると、日本は特に下がっているようには見えない。というか論文数のわりに中国インドのTOP数が少ないのが面白い。いっぱい書いてるけど内容が…とうやつか、現地語でしか書かれていないので外国人は利用できない…というやつだと思う。

画像



尚、ここで文句を言ったような論文のシェア状況や数から見る分析については、文部科学省などが詳細な分析を出して公開している。

各年の科学白書はここから
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/kagaku.htm

ちょっと前の平成22年の分に、「論文成果に見る我が国の状況」というものがあり、各項目の数をどのように読み取るかがとてもわかりやすく書かれている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa201001/detail/1296363.htm



"研究活動のアウトプットの一つである科学論文に着目した定量的な指標の例としては以下のものがある。

論文数[例:A国の論文数(A国の機関で産出された論文数)]
論文数シェア[論文数占有率という場合もある。例:A国の論文数シェア(A国の論文数が世界全体の論文数に占める割合)]
被引用回数(他の論文に引用された回数)
被引用数シェア(例:A国の被引用回数が世界全体の被引用回数に占める割合)
トップ10%論文数(論文の被引用回数が各分野、各年で上位10%に入る論文の数)
トップ10%論文数シェア
相対被引用度(各国の論文数当たりの被引用回数を世界全体の論文数当たりの被引用回数で除して基準化した値)

 前述の指標を解釈するに当たっては、例えば以下のような点に留意する必要がある。

一般に、研究者から注目されている論文は、他の論文に引用される回数が多くなる傾向にあると考えられている。そのため、論文数や論文数シェアのほかに、論文の被引用回数に基づく指標がしばしば用いられる。
本白書の各種指標で用いられる論文引用データベースは、少なくとも著者や抄録等が英語で記載された論文を対象としており、著者や抄録等が日本語のみで記載された論文は含まれていない。本白書で取り上げる各種指標は、論文引用データベースに収録される論文の言語の影響を受ける。
論文引用データベースの種類により収録対象とする雑誌や論文は異なるため、収録論文の分野分布や論文数シェア等は異なる。
論文数や被引用回数は分野により異なる。例えば、数学分野では、他の分野に比べ長い論文を数少なく書く傾向が強いことが指摘されているほか、物理分野等において、実験研究の方が理論研究よりも平均論文数が多い傾向が報告されている。
研究分野や組織によっては、ものづくりや本の執筆等、論文執筆以外の成果を重視する場合がある。
研究分野により論文の言語が異なる。英語が多く用いられる分野もあれば、地域研究のように現地語でしばしば書かれるケースもある。
論文にはarticle、letter、note、reviewなど様々なものがある。対象とする文献の種類で論文数や被引用回数が異なる場合がある。
論文一報一報の科学的な価値は異なると考えられ、論文数のみでの評価には限界があるとの指摘もある。"


もうこの部分で、指摘すべき内容は出揃っている。
そういうことなんですよ…。


というわけで、マスメディアの浅すぎる考察に惑わされる前に、お役人の作った妥当な分析を見たほうがいい。
最近よく論文数がどーのこーのいう記事はいい加減目障りだし、数の話しかしてない人はこのテのドキュメントをまともに読んでないので、そもそも科学論文なんて読まない系の人なんじゃないかと思う。


論文は、数だけ増やしても意味がない。大事なのは中身。


数を追い求める必要はないので、世界に通用する一流の学者を育てられる土壌を作るのが大事だろう。そして、単純な論文の総数の増減よりも、重要な分野で質の高い論文かどうか、という部分にこだわるべきではないだろうか。

また、お役所の資料にあるように、「新たな研究テーマを見出すための探索的な研究」や「新しい研究領域を生み出すような挑戦的な研究」が減り、「一時的な流行を追った研究」が増えていること研究者の専門とする分野が他国に比べて狭すぎるように見えることのほうが重視すべき問題点のように思える。
特化型の研究者が多いのは、強みにも弱みにもなりうると思う。

ともあれ、「国別」に数をカウントしてレースすることには特に意味がない。なにより大事なのはそのジャンルが発展することのはずだ。


ついでに、これも貼っておく。
新聞やテレビの浅すぎる分析とは比べ物にならないほど細かく分析されているので、参考にするといいと思う。
(仕事で作るならこのくらいやんないとダメなんだよ…仕事でコメンテーターやる人はこのくらいやんないのかな…。)

日本の科学研究力の現状と課題−抜粋−
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinkou/025/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/02/17/1382206-14.pdf


私なら、見たデータからこう結論する。

「支出は今の水準で問題ないが、保身のための研究をする研究者の首切って、挑戦的な研究者に投資を回したほうがよくね?」

あと、狭い専門に留まってる研究者の視野を広げさせるために交換留学とかで国際研究をもっと増やしたほうがいいと思う。



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