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zoom RSS 良く出来た番組だったが一箇所だけ違う…「絶海!謎と神秘の巨石文明 モアイとイースター島」

<<   作成日時 : 2018/01/09 00:10   >>

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NHKの新春特番を見逃しで見てた。

絶海!謎と神秘の巨石文明 モアイとイースター島
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017084231SC000/?np_banID=top_sp0012_084231

導入部分でだいたいやる内容は分かったけど、確かに「ガイドブックには載ってない」内容をやってたし、とてもよく出来てる番組だと思った。話聞きにいった人が正解だし、最近の研究が盛り込まれてるし、あまりに的確なので「あれ? これBBCから買ったやつだっけ?」とか思ってしまった。

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ただ、一箇所だけとんでもない間違い方をしているので、そこについて訂正と注釈を入れたいと思う。
この部分、「イースター島(ラパ・ヌイ)住民の祖先が台湾の先住民タオ族である」「その根拠がミトコンドリアDNAのハプログループBである」というもの。

ちゃいます。

ラパ・ヌイ住民と直接関係のある出身地はポリネシアが正解。

台湾は、のちにポリネシアに広がるオーストロネシア語族の出発した場所とされている。
根拠となるのはミトコンドリアDNAではなく言語学研究の成果による。つまり、台湾先住民の使っている言葉と、ポリネシア人の言葉との間に構造的なつながりが見られるということだ。タオ族との接点を語るならそこしかない。

しかし、のちにポリネシアに移住する人たちが台湾近辺を出発するのは紀元前5,000年から、説によっては3,000年ごろである。イースター島への移住は紀元後1,000年ごろ。これだけ時代が離れると、当然、言葉は変化しすぎて全く通じない。同じ語族でも決して近い関係ではない。このあたりの話は一般向け本なら「海の人類史(雄山閣)」あたりでも読める。

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図の出典元はこれ

Genetic Evidence for a Contribution of Native Americans to the Early Settlement of Rapa Nui (Easter Island)
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fevo.2016.00118/full

ミトコンドリアDNAのハプログループで言うならば、そもそもBグループは約4万年前に中国南部で発生したグループなので、日本を含む周辺国に広がっている。ベーリング海を渡って新大陸へ移住した人々も持っていた。日本周辺のハプログループBの分散比率は以下のとおりとなる。

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(出典元: 日本人になった祖先たち/NHKブックス)

見てのとおり、ポリネシアでは100%がBグループなので、台湾のタオ族で50%しか持っていないのならどう見てもラパ・ヌイの出身地はポリネシアとなる。

移住経路としては 中国南部→台湾→南方の島々へ拡散→イースター島 で正解なのだが、タオ族と直接繋がりがあるかのような描き方と、根拠として挙げたミトコンドリアDNAの話は全然違う。

ていうかアフリカを出発して陸伝いに歩いてきた人々が海へ出るなら、必ずどっかを出発点にしないといけないわけで、その出発点を「語族」で見るなら台湾になる、というだけの話なんである。「ミトコンドリアDNAのハプログループ」として出発点を語るなら中国南部になる。イースター島に移住する人々が独自の文化を発展させるのが台湾を出発したあとの時代だったことを考えると、どちらも起源地とは呼べない。


で、番組の中で言われていた「16世紀のラパヌイ人の骨のDNAを解析したところ〜」というのは、これのことじゃないかと思う。DNAの解析で見えてきたのは台湾との繋がりなんかではなく、南米大陸との繋がりである。

http://www.sciencemag.org/news/2017/10/did-early-easter-islanders-sail-south-america-europeans

かつては、イースター島の住民は南米までは到達していなかったのでは?と言われていたのだが、どうも行ったことがあるっぽい、人の交流もあったっぽい、というのが近年言われ始めている。で、それがヨーロッパ到来前なのか到来後なのかが分からないので、ヨーロッパの船がやってくる以前の16世紀の骨の研究がいま進められているところなのだ。
これは以前、メモを起こしてある。

イースター島住民はいつ南米先住民と出会ったか? DNA解析の注目の結果は
http://55096962.at.webry.info/201710/article_18.html

それから、ミトコンドリアDNAの話でもイースター島の人骨の話でもないが、バヌアツで出土したラピタ人の骨から採取されたゲノムが台湾先住民のものと近かった、という研究は存在する。(これも「海の人類史(雄山閣)」に載っている) ラピタ人は台湾あたりから出発してメラネシア、ポリネシアへと広く拡散していった人々で、その後イースター島へ移住するポリネシア人の祖となったことは間違いないのだが、イコールではない点に注意が必要だ。ラピタ土器が見られなくなるのは紀元前2,500年ごろなので、イースター島への移住よりはるか以前にラピタ期は終了している。

…と、たぶん、このへんの情報が混じってしまったために、番組におかしな部分が出来てしまったのだろうと思われる。おそらく番組スタッフが情報をきちんと整理出来ないまま作っちゃったんだろうなと。最新の研究を取り込もうとしたのは良かったのだが。



というわけで、島の住民の起源に関する部分は明らかにおかしいのだが、それ以外はとっても無難で、今まであまり取り上げられなかった内容も放送されていたので全般的にはいい番組だった。モアイの向いている方角とすばるの関連とか、モアイを形作っている石はとても柔らかいので堀りやすいとか、イースター島には野生動物がほとんどいないとか。

どうでもいい追加情報なのだが、イースター島で動物を探してみる試みは中の人が実際に現地でやってみたりしたので補足として入れておく。
http://www.moonover.jp/2goukan/chile/index.htm

イギリス人が植民地にしてた時代に放牧していたヤギとヒツジは、イギリス人がいなくなったあと島民がぜんぶ食っちゃったので今は一頭も残ってないらしい。あのね、彼ら、「家畜を管理して増やす」とかいう概念ぜんぜんないからね…? 野良馬に野良ニワトリに、農業ももんのすっごい適当にやってるからね…。 番組はきれいに描きすぎた。ニワトリ飼ってるのに卵はチリ本土から船で輸入されてる理由を考えよう。


モアイ像を歩かせる実験については、以下に動画などがある。
この方法だと運搬に木材を使わないので、モアイ像を作りすぎたから森林がなくなった、という従来の説がどうも違うんじゃないか、ということが浮上してきている。実際にやってみる実験は偉大。

https://archaeologynewsnetwork.blogspot.jp/2012/06/easter-islands-giant-statues-walked-to.html#8dd9S6qsy0kYyQhm.97

NHKさんはたまにいい番組作ってくれるから、まぁお金払ってもいいかな…ってなる。こういう、最新情報を判り易く一般人に説明する系のがいいんですよ。こういうのが見たい。



****
おまけ
イースター島のにわとり(放し飼い)

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ニワトリのDNAから見る島々への移民の経路の研究

Chicken bones tell true story of Pacific migration
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.jp/2014/03/chicken-bones-tell-true-story-of.html#oiDSXdZv8G2gLIm6.97

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