現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS かぐや姫が要求した宝はシルクロードの彼方にあった…? 「平安貴族のシルクロード」

<<   作成日時 : 2017/12/04 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

タイトルだけ見て手に取ったといういつものアレ。
タイトルからして正倉院がらみかなーと思っていたのだが、正倉院に触れられている部分はちょっとだけ。メインは「竹取物語」「宇津保物語」の中に登場する”シルクロード”の風景や珍品の描写についてだ。

平安貴族のシルクロード (角川選書)
KADOKAWA/角川学芸出版
2006-09-01
山口 博

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 平安貴族のシルクロード (角川選書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


どちらも成立は10世紀頃と考えられている。正倉院の宝物からすでに広く知られているとおり、その頃の日本には中国を通してはるか西方の様々な品が渡来していた。そうした品と渡来の知識により、平安貴族は遠くペルシャに至るまでのシルクロードの知識を、不正確ではあっても、イメージとして持っていたという。
そのイメージが物語の中にどのように組み込まれているか、という本である。

本の前1/3くらいが竹取物語、残りが宇津保物語で、物語としてはあまりメジャーではない宇津保物語のほうに尺が割かれているが、それというのも宇津保物語のほうはヨーロッパでいうところの中世騎士物語に近い構造を持つ、日本ではちょっと珍しい異国冒険譚なのである。
物語は、遣唐使として派遣される途中で船が難破した男がペルシャと思われる場所に辿り着くところから始まっている。行った事もない遠方の国のことを書くのだから描写はおかしいし、いるはずのないものが出てくるめちゃくちゃな夢物語なのだが、その物語が示すものが「当時の貴族たちが持っていた西方の知識」の内訳なのである。

全般的に面白かったのだが、著者の考察は、言及が具体的なぶんかぐや姫のほうが鋭く、宇津保物語のほうは少々話を広げすぎていて甘いところがあると思う。日本の10世紀の物語とエジプトやアッシリアあたりと絡めようとするのは、だいぶ無理だ。なにしろ時代が違いすぎる。平安朝と唐とペルシアならそれほど時代の乖離はないしシルクロードでの繋がりやイメージの伝播は論じられるが、エジプトやアッシリアだとそれよりなんと1000年以上も前の話だ。時代も距離も離れすぎているものは比較対象として出してはならず、直接的なイメージの伝播も考えられない。

比較神話をやる学者は、どうもイメージや神話の普遍性を信用しすぎているように思われる。
そして、何故か必ず「イメージは西から東に伝わる」という一方向だけを想定する。

口伝などというものは一世代挟むだけで跡形もなく変容できる。
そして、西から東にイメージが伝わるルートがあったのなら、東から西へのルートも必ず存在する。互いの与える影響の質量に差異はあれども、「相互影響」は文化の伝播の前提である。

****

さて、かぐや姫の項で面白いと思ったものをひとつ。

火鼠の皮衣というのが、実体はアスベスト製の服ではないかという話である。要するに中国でいうところの火浣布(かかんぷ)である。
かぐや姫が要求するものは現実世界に存在しない神話的なモノばかりなのと思っていたのだが、実は現代世界なら簡単に手に入るモノだったのだ。

この品を含め、かぐや姫が要求する品々は、シルクロードを通じてもたらされる珍品が発想の根底にあるという。もしかしたら日本の古典文学が専門の人にとってはよく知られた話なのかもしれないが、その方面はあまり詳しくない自分にとっては目新しく面白い本であった。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

かぐや姫が要求した宝はシルクロードの彼方にあった…? 「平安貴族のシルクロード」 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる